心に余裕がないときこそ、「ふっ」と深呼吸することが大切。そう教えてくれた横山だいすけさん。
前編に引き続き、壁にぶち当たったときの気持ちの切り替えかたを、この1年の経験もふまえて語っていただきました。
人生はちょっとした気持ちの変化で
見えてくる世界の色ですら変わるんです
だいすけおにいさんも息をするのも忘れるくらい、余裕がなくなるときもありますか?
横山さん:
ありますよ。周りの人からは“夢をもって、夢をかなえた人”って思われがちですが、どっちかといえば、不器用な性格なので、失敗ばかりです。人が10回でできることも、ぼくには150回必要なんです。本当に。だから、“うたのおにいさん”になる夢のために、なんでも完璧にこなしてきたというより、壁にぶつかりながらも目の前のことをひとつずつですね。大学生のときも、劇団四季のときもそうです。 『おかあさんといっしょ』を卒業し、新しいスタートをきったこの1年間はとくに、その繰り返しで落ちこむことばかり。あれもダメだった、これもダメだった。大人としゃべるのって大変だなーっとか(笑)。だから、もし新生活に不安を抱いているお母さん、大変な日々に煮つまっているお母さんがいたら、近い気持ちはわかります。 ぼくは子育ての経験はなく、あくまでエンターテイナーとして子どもと接する人間です。でも、立場は違ってもお話しすることの多いお母さん方に、何か言葉をかけるとしたらそれは「あきらめてもいいんだよ」かもしれません。
だいすけおにいさんといえば、いつもポジティブな発言をされるので「あきらめてもいい」というメッセージはちょっと意外ですね
横山さん:
『ポコポッテイト』の主人公・ムテキのムテ吉は「めげない、へこまない、あきらめない」をモットーにしていて、ぼくもそれが大好きなんですが、本当に追いつめられたらこんな言葉、出てきませんよ。ネガティブな感情になってしまったときは、何かをしなきゃという、マストの気持ちが強くなったり、周りと比較ばかりして、とめどなくダメな自分が見えてきてしまうので。 だから、そんなときぼくは1回あきらめます。緑茶を飲んで、お風呂に入って寝てしまい、気持ちの目盛りがマイナスからプラスに振れるのを待つんです。でも人生って、ほんのちょっと、ちょっとだけふり幅が変わることで、悩んでいたことが意外とたいしたことないやって思えるようになったりするんです。見えてくる世界の、色でさえ変わるというか。「ふっ」と深呼吸してひと息つくのも同じですね。
あきらめることで、前に進めるようになる?
横山さん:
そうですね。そうした働くお母さんの姿を、子どもも本能的に感じとるものです。 うちは普通のサラリーマンの家庭だったので、ぼくが音楽大学にすすむときに、母が学費を稼ぐために初めて働きに出てくれて。慣れないことを一生懸命やってくれている姿が心に響きましたから、小さい子どもだったら、それ以上のものを受け止めているはずです。 その気持ちを信じて、お子さんと少しずつ進んでいくお母さんたちを、ぼくはいつも応援しています! (おわり)
横山だいすけさんインタビュー「悩んだときは、1回あきらめたっていい」
Profile
横山だいすけ
NHK『おかあさんといっしょ』の11代目うたのおにいさん。在任期間9年は歴代最長。同番組で大人気のキャラクター「かぞえてんぐ」とは大の親友。2017年4月に卒業してからは、テレビ、ラジオなど各方面で活躍。趣味はお風呂に入ること。