親の居場所に子どもが来て楽しむというのも、どんどんやったらいい


パパにも育児に興味を持ってほしい

 

──お話を伺っていると、男性の育休はいいことづくめの気がしてきますが、それでも世の中の多くのパパには、そうした声がなかなか届きません…。

 

でも、以前は100人に1人くらいの割合だった男性育休も、100人に3人くらいにはなってきてるんじゃないですか。世の中の変化って、それくらい少しずつだと思うんです。だからこそ、男性目線の育児本が僕は心底ヒットして欲しいんですよ。だって、ものすごくヒットすることで時代って変わることがあるじゃないですか。僕がモノ作りをするうえで常々考えているのは、そのときの価値観を大ヒットによって変えたいということ。例えば最近だと、「3040代の大人が観に行くラブコメが日本映画界にあってもいいじゃないか」という思いから『ラブ×ドッグ』という映画を製作しました。興行的には正直あまり成功したとは言えないけれど、そうやって「世の中を少し変化させる入り口に立ちれば…」と思うんですよね。

鈴木おさむ

だから、この本がヒットすれば、育児するパパの話をあまり聞きたくないお父さんの耳にも自然に入るかもしれないですよね。僕の仕事の経験上、全く興味がない人に興味を持たせることは難しくても、少し興味がある人にものすごく興味を持つようにさせることは、意外とできるものだと思ってるんですよ。で、この本が少しでもその力になれれば、子どもをとりまく笑顔も増えて、そういう人を見て周囲も変わっていくかもしれないですよね。

 

──ぜひとも、世のパパたちにも、この本をきっかけに育児の喜びを知って欲しいですね。

 

そう思います。そういえば先ほどの映画を撮った際、僕が唯一後悔したことがあるんです。それは、現場に関わる誰もが我が子を連れて来られる日を設けなかったこと。予算やスケジュールを考えたら、僕にはどうしてもその決断が出来なかった。そんな話を本広(克行)監督にしたら、「僕は毎回やってますよ」と言われ、「うわーっ、やる人はちゃんとやってるんだ!」と悔しくなったし、同時にこういう人が同じ業界にいるんだと嬉しくもなった。普段、あまり子どもと関わる時間を持てないお父さんも、本当は自分の職場に我が子を連れてきたいだろうし、仕事ぶりを見せたいと思っているはずだと思うんです。だからこそ、権限のある立場の人間がいろんな軋轢や確執をぶっ飛ばしてでも、他のお父さんの意識を変えるきっかけ作りをやるべきだったなって。なので、次の機会があったら、絶対に「子どもOKデー」は作るつもり。この日だけは役者もスタッフの垣根もなし! お互いの撮影もOK! 

鈴木おさむ

 

──子どもの会社見学が行われている企業も世の中にはありますよね。

 

そういうの、すごくいいですよね。保育園に夏祭りがあって、そこに親子で行くのと同じように、親の居場所に子どもが来て楽しむというのも、どんどんやったらいいと思うんです。こういうことを言うと、今度は「子どもが出来ない人にも配慮を」などと言われたりするけれど、時代を良くしていくためにも、そこは開かれていく方向でいいじゃないですか。

 

 

profile

鈴木おさむ

鈴木おさむ

1972年生まれ、千葉県出身。高校時代に放送作家を志し、19歳で放送作家デビュー。 バラエティーを中心に多くのヒット番組の構成を担当するとともに、映画・ドラマの脚本や舞台の作演出、小説の執筆等さまざまなジャンルで活躍。200210月には、交際期間0日で森三中 大島美幸さんと結婚。「『いい夫婦の日』パートナー・オブ・ザ・イヤー 2009」「第9回ペアレンティングアワード カップル部門」を受賞。『ママにはなれないパパたちへ』(マガジンハウス刊)が好評発売中。

 

取材・文/井上佳子 撮影/藤沢大祐

 

鈴木おさむさんのインタビュー記事前編はコチラをcheck