鈴木おさむ

妻である森三中・大島美幸さんの仕事復帰を応援しながら、育児に奮闘した記録を一冊の本にまとめた人気放送作家・鈴木おさむさんのインタビュー。後編では、まだまだ世の中的にはマイノリティと言わざるを得ない「育休をとったパパ」である鈴木さんだからこそ感じた、育児にまつわる社会の意識や、時代の変化の様子について。放送作家というメディアの発信者としてのご意見を伺ってみました。

 

世の中が、「残業するのはカッコ悪い」という雰囲気になりつつある


子育てに割ける時間は増えてきている 

 

──鈴木さんが育休をとった2015年を含め、この数年で男性の育児も随分と社会に浸透してきた気がしますが、そうした変化は感じられますか?

 

「働き方改革」という言葉に関して言えば、ものすごく感じます。それは僕がテレビの世界にいるからとくに感じること。テレビ局って、本当に夜に会議をする業界だったんですけど、近年はそれがとにかくなくなった。こんなことを言うと怒られちゃうけど、テレビ局ってこういう時代の変化への対応が一番遅れている業界だと思うんです。だけど、今では会議も以前よりは早く終わるし、みんなが早く家に帰る。テレビ局でさえこうなんだから、多くの企業はもっともっと時間を作る流れになっていますよね。その要因には、恐らく過労死の問題なども含まれているんでしょうけれど、世のお父さんがやりたがっているかどうかは別として、世の中が子育てに割く時間は必然的に増えている潮流を感じます。

 

──それこそ、肌で感じる。

 

はい。あと、僕は育休をとった翌年に慶応大学でワークライフバランスについての講演をやったんですけど、今の大学生は男子でもハッキリと、「仕事だけではなく自分の人生をどう充実させるかが重要」と断言するんです。それを聞くと「マジで変わってきてる!」と思いますね。そういう若い世代の子たちが結婚をして子どもを持つようになったときには、いかにプライベートを大切にするかという考え方が浸透しているんでしょう。 そして、そういうことに国全体が取り組むようになってきた気もします。先日も講演会に呼ばれたんですが、それはとある自治体が男女共同参画のためのフォーラムを、予算を割いて開催しているわけです。もはや時代は、「仕事だけやっていればOKという価値観自体がカッコ悪い」という雰囲気になってますよね。残業も、カッコ悪い。
鈴木おさむ

 

子育てをしていることで別の世界が見えた

 

──そういう意味でも、鈴木さんはまさに時代の最先端を行っていたことになりますが、ご自身がご子育て世代を応援する空気を後押しした手応えはありますか?

 

まあ、男の人には嫌われたでしょうね()。実際に「迷惑なことしやがって」とか「鈴木さんだから出来ただけ」という人もいますよ。でも、空気を作ったという意味では、僕よりも妻が妊活休業をしたことのほうが影響はあった気がします。当時は、「妊活」と表立って言う人も、それで休業を世間に発表することもありえなかった。こんな発表をして「もし子どもが出来なかったらどうするんだ」と叩かれるのもわかってましたよ。だけどそれでも世に向けて言うことで、不妊治療という言葉に替わって妊活という言葉が流行ったり、企業によっては妊活休業を制度に取り入れてくれたおかげで安心して会社を休めた人もいたと聞きました。そういう期間を経験してきて、僕自身も夫として、個人として、世の中に何かお返ししなくちゃいけないなというのが、育休をとった一番の理由なんです。

 

──そして、育休をとったことでいろんな世界が見えた。

 

自分の時間の使い方は確実に変わりました。人生ってたぶん、階段の上り下りの連続。極端な話、育休をとったことで減った仕事や降りた階段もありますよ。だけど降りたことで見えた別の階段や景色だってある。手放したものも多いけれど、年齢的にも同じ階段に居続けるのも辛かっただろうし、子どものおかげで、そういう切なさみたいなものから離れる理由にもなったんですよね。そこは素直にありがたいです。
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だけど、自分がもし20代だったら、たぶんこんな気持ちにはなれなかった。僕にとって、仕事の酸いも甘いもある程度わかった40代で子どもを授かれたのは本当に良かったんです。たとえ叩かれても、応援してくれる人がたくさんいることも知ることが出来ました。もちろん、40代で親になったからこその不安もありますよ。息子が二十歳になったら、自分は60代か…とかね。だけどそんな回り道も、まあいいじゃんとも思えます。