今回は駅弁を紹介します。駅弁は文字どおり「駅にあるお弁当」ですが、コンビニ弁当ではありません。昭和の時代は鉄道旅行に不可欠であった駅弁も、最近は影が薄くなってしまいました。今回は駅弁の基本情報とその魅力に迫ってみたいと思います。
そもそも、駅弁とはなんぞや?
そもそも駅弁とはなんでしょうか。辞書的な意味になると、駅弁は「鉄道の駅や車内で売っている弁当」となります。確かにその通りですが、これですと駅構内のコンビニで販売されているコンビニ弁当も「駅弁」となってしまいます。もしかすると読者の中にはコンビニ弁当を駅弁と考えている人もいるかもしれませんが、コンビニ弁当は駅弁ではありません!
駅弁を名乗るための3つのポイント
そのように考えると、辞書的な意味からもう少し絞り込む必要があります。ここで、少し過去を振り返ってみましょう。
時は1946年(昭和21年)、JRの前身である国鉄から「駅構内で弁当を売ってもいいよ」と言われた飲食業者が団体「国鉄構内営業中央会」を立ち上げました。つまり「国鉄構内営業中央会」の加盟店が販売したお弁当は「駅弁」と名乗ることができました。現在、「国鉄構内営業中央会」は「日本鉄道構内営業中央会」と改称し、活動を続けています。
ところが、「日本鉄道構内営業中央会」に加盟しない駅弁販売業者も出てきています。そのため、3つのポイント(鉄道の駅で販売されている、オリジナルの包装、容器がある、弁当と駅が何らかの形でリンクしている)が揃えば「駅弁」と名乗ってOKでしょう。
どのような駅弁があるの?
もしかすると、読者の中にも「駅弁=幕の内弁当」という図式があるかもしれません。確かに、幕の内弁当は駅弁のひとつですが、それだけではありません! 日本には実にいろいろな駅弁が存在します。
駅弁は「美味しい」社会科の教科書
たとえば、北海道に位置する森駅では「いかめし」という駅弁があります。「いかめし」はイカに生米(うるち米ともち米を混ぜたもの)を入れ、イカをボイルしたもの。大きな二つのイカがデーンと弁当箱の中に入っています。 かたや冬の山陰地方にいくと、ご飯の上にカニが敷き詰めてある「かにめし」を楽しむことができます。旅館での豪華なカニ料理もいいですが、駅で食べる「かにめし」もなかなかのものですよ。
駅弁のいろいろな楽しみ方
駅弁の楽しみ方の王道は食べること。特に車内や駅構内で食べる駅弁の味は格別なものです。なお、車内ではロングシート(座席が線路と平行に並んでいる)ではなく、クロスシート(座席が線路と直角に並んでいる)で駅弁を食べるようにしましょう。 また、車内で駅弁を食べる際はなるべくゴミや包装紙をコンパクトにまとめるのがコツ。広げながら食べると、意外と隣の人に迷惑をかけるものです。
しかし、「いかめし」が欲しいからと言って、北海道に行く人はいないはず。そこで、活用したいのがデパートで行われている駅弁に関するイベントです。そのようなイベントに行くと、有名な駅弁に出会うことができます。ぜひ、見たこともない車窓を想像しながら、ご自宅で有名駅弁を楽しんでみましょう。
また、ターミナル駅にある駅弁専門店でも全国各地の駅弁が販売されています。発車時刻までに余裕がある場合はチェックすることをおすすめします。
包装紙も駅弁の楽しみ方のひとつ
駅弁は「食べる」以外にも楽しみがあります。それは駅弁の包装紙を集めること。駅弁の包装紙はそれぞれの風土を活かし、オリジナリティーあふれる素晴らしいデザインになっています。包装紙を丁寧に収集すると、それだけで立派なコレクションになりますよ。ただし、包装紙をノートに貼り付ける際は表面を軽く拭くことを忘れずに!駅弁の包装紙は意外と匂いがあり、虫がつくと面倒ですから。
時刻表の駅弁コーナーをチェックしよう
ところで、全国各地にある駅弁をどのように見つければいいでしょうか。インターネットで調べてもいいですが、それはあまりにも味気ない!できれば、時刻表にある駅弁コーナーをチェックしましょう。
時刻表の端には駅ごとに販売されている駅弁が紹介されています。文字だけの紹介となっていますが、逆に興味をそそられるのは私だけでしょうか。あれこれ中身を想像しながら、駅弁を購入するのも楽しいものですよ。時刻表と駅弁は意外に? いいコンビです。
取材・文・撮影/新田浩之