傷だらけの顔に絆創膏、眼帯と、少女漫画的モテ要素もしっかり抑えてはいるものの、このモテ要素も普通の少女漫画とは一線を隠しています。ケンカに勝った名誉の負傷とは程遠いのです。山田の眼帯は“欠落している何か”の象徴ともいえるでしょう。
この眼帯姿を含めた吉沢亮の“瞳の演技”は絶品です。すべてを諦めたかのようなうつろな瞳、大好きな猫を撫でる時の優しい瞳(ここは、唯一と言っていいキラキラなシーンかもしれません!)、想いを寄せる男の子を愛おしく見る瞳(切ないです)。眼帯が外れて両目になったときの威力ある瞳の演技に吸い込まれます。
キラキラと現実逃避できる青春映画もいいけれど、時には複雑な感情が入り混じるこんな作品もいいかもしれません。原作にはないインタビューシーンもちょっと不思議な仕上がりなので、ぜひチェックしてみてください。
文/タナカシノブ