かつて路面電車はあらゆる都市で走っていましたが、交通渋滞の影響により、多くの都市では消滅しました。それでも、地方都市を中心に路面電車が活躍しています。きっと、子供と路面電車に乗りに行くといい思い出になるでしょう。今回は路面電車の基本情報をお伝えします。

そもそも路面電車はどこにあるの?

路面電車

そもそも路面電車はどこにあるのでしょうか。2018年7月現在、以下の都市で路面電車が走っています。

 

札幌、函館、東京、富山、高岡、豊橋、福井、滋賀、京都、大阪、岡山、広島、高知、松山、長崎、熊本、鹿児島

 

いかがでしょうか。都道府県でいえば、1都1道2府12県に及びます。実は東京や大阪などの大都市でも路面電車は残っているんです。東京では都電荒川線(三ノ輪橋~早稲田)、東急世田谷線(三軒茶屋~下高井戸)、大阪では阪堺電気軌道(えびす町・天王寺駅前~浜寺駅前)で走っています。東京も大阪もかつては縦横無尽に走っていましたが、現在は上記の路線しか走っていません。

タイプの違う2種類の路面電車

また「路面電車」といっても、大きくわけて2つのタイプ「専用軌道」「併用軌道」に分けられます。「専用軌道」や「併用軌道」と聞いても「?」と思うでしょう。ここで、専用軌道と併用軌道の違いを説明します。

 

専用軌道:路面電車タイプの車両が専用の敷地内を走る。一般の鉄道路線に近い。 併用軌道:路面電車タイプの車両が道路を走る。路面電車のイメージはこちら。

 

そして、路面電車であっても、専用軌道メインの路線と併用軌道メインの路線に分かれます。ここで、カテゴライズしてみましょう。

 

専用軌道メイン:東京、富山(富山ライトレール)、福井、滋賀、京都、 併用軌道メイン:札幌、函館、富山(富山地方鉄道)、高岡、豊橋、大阪、岡山、広島、高知、松山、長崎、熊本、鹿児島

 

道路を堂々と走る路面電車を見たければ併用軌道メインの都市がおすすめ。このように見ていくと、併用軌道メインの路面電車は西日本に多いことがわかります。

鉄道ライターおすすめの路面電車

ここで、筆者の独断と偏見でおすすめの路面電車をピックアップしたいと思います。

「広島電鉄」

広島電鉄の路面電車

まずは何といっても、日本一の規模を誇る広島の路面電車、広島電鉄です。広島電鉄は広島市内を縦横無尽に走るだけでなく、安芸の宮島の玄関口である広電宮島口電停まで走ります。広電宮島口電停からは船を使って安芸の宮島に渡れます。

 

広島電鉄の魅力といえば、長い連接車のノンステップ路面電車に乗れること。その多くが広電宮島口方面行きに使われます。まるでヨーロッパの路面電車のようにスムーズに走る姿は路面電車に対するイメージが大きく変わることでしょう。

 

二つ目のおすすめポイントは古い車両が多いことです。それも単に古いだけではありません。京都、大阪、神戸など関西の大都市で活躍した電車が昔の塗装で働いています。きっと、昔の活躍を知っている方ですと、懐かしく感じることでしょう。なお、古い電車は新しい電車と交代する形で引退することが予想されます。懐かしの電車に出会いたい方はお早めに。

 

三つ目のおすすめポイントは沿線に観光スポットが多いことです。沿線には先ほど書いた安芸の宮島をはじめ、原爆ドーム、広島焼が堪能できる「お好み村」があります。広島観光には広島電鉄線と宮島松大汽船(宮島口~宮島航路)に乗れる「一日乗車乗船券」がおすすめ。価格は大人840円、小児420円です。

「阪堺電車」

阪堺電車の路面電車

二つ目のおすすめ路面電車は阪堺電車(阪堺電気軌道)です。阪堺電車は大阪メトロ堺筋線の接続駅、えびす町~浜寺駅前の阪堺線、天王寺駅前~住吉までの上町線で成り立っています。天王寺駅前から浜寺駅前までは直通運転を実施しています。なお、新今宮駅前電停でJR大阪環状線、JR関西線、南海本線、南海高野線、浜寺駅前電停で南海本線に乗り換えることができます。

 

阪堺電車のおすすめポイントは何といっても大阪らしさを感じられること。ド派手なオレンジ一色の塗装や大きな広告は他の路面電車では見られないのでは。また、沿線も下町や住吉大社を走るため、途中下車が本当に楽しいです。

 

二つ目は新幹線の新大阪駅から1本で行けることです。新大阪駅を降りたら大阪メトロ御堂筋線に乗りましょう。御堂筋線は上町線の起点駅がある天王寺駅まで行きます。なお、えびす町から出る阪堺線の一部区間(えびす町~あびこ道)の日中時間帯は20分間隔で運転されるのでご注意ください。

路面電車に乗る際の注意点

写真2-4

道路を走る路面電車ですと、思わず子供が線路を走るかもしれません。路面電車といっても立派な電車ですから大変危険です。停留所で待っている時や横断歩道を渡る際は、子供が勝手に走り出さないように十分に注意しましょう。また、路線が複雑な場合は紙の路線図を手に入れるのがコツ。間違った電車に乗ると大変なことになりますから。

 

取材・文・撮影/新田浩之