鳩サブレーで有名な鎌倉にある和菓子屋・豊島屋。実はお菓子だけでなく、鳩サブレーにちなんだグッズも人気です。なぜ鳩サブレーグッズを発売することになったのかを、広報の宮井さんに聞きました。
鳩グッズ誕生のきっかけは「鳩サブレーの空き缶」
—— 豊島屋の鳩サブレーグッズを初めて発売したのはいつですか?
宮井さん:
初めて発売したのは2002年です。現在の4代目社長が考案しました。最初に発売されたのは、「鳩サブレー」の形をした「鳩三郎」という携帯ストラップです。当時はガラケーの時代。想像以上の反響があり、かなり売れたので、正直驚きました。
—— どうしてこのようなグッズをつくろうと思ったのでしょうか?
宮井さん:
「鳩サブレー」が入っている黄色い缶がヒントになりました。お菓子を食べた後、空き缶は捨てずに取っておいて、書類やおもちゃ入れに使っているという声を、多くのお客様からいただきました。
お菓子の缶がそのように親しみを持ってもらえていると知り、鳩サブレーのファンの存在に気づくことができました。それならば、もっとファンを増やそうということになり、グッズ展開をすることにしました。
—— 現在までにどれくらいの鳩グッズが販売されたのですか?
宮井さん:
現在販売されているのが20種類ほど、過去には30種類以上あったと思います。販売中の商品は、弊社ホームページ上の「鳩これくしょん」のページでも見ることができます。
なかでも人気があるのは、鳩サブレーの根付けストラップ「鳩三郎」や、鎌倉時代の日本の歴史書「吾妻鏡」のネーミングをもじった「鳩妻鏡(ハトミラー)」です。鏡は鳩サブレーそっくりの形状で、鳩をズラすと鏡が現れます。
ほかにも、ふせん「鳩っといって(はっといって)」シリーズや、デニム生地の大きめなトートバッグ「ポーポバッグ」、ボールペンのトップにダイキャスト製の車がついていて、取り外して後ろに引いて手を離すと車が走り出す「ハトカー」などがあり、ほとんどの商品名がダジャレです。思わずクスッと笑えるネーミングも人気の理由のひとつです。
企画からデザインまで、まさかの社長ひとりで…
—— これらの商品は誰が考えているのですか?
宮井さん:
すべて今の4代目社長がひとりで、企画からデザインまで行なっています。新商品がどんなもので、いつ頃リリースされるのか、社員はまったくわかりません。すべての社員に内緒で進めているので、広報担当の私でさえ、発売の1週間前に内容を知らされることがほとんどです。
「社員はお菓子のことに専念してほしい、グッズのことは自分がやる」という社長の心づかいからなのですが、突然知らされるのでみんないつもびっくりしています。販売店のスタッフは前日に知らされることも多く、ディスプレイを調整するのが大変そうです。
—— 社長おひとりで!それはすごいですね。
宮井さん:
社長は文房具が大好きなので、仕事というよりも、半ば趣味感覚でつくっている可能性が高いです。商品を考えるのも楽しいのではないでしょうか。
商品名にはダジャレっぽいものも多いですが、あれもすべて社長がひとりで考えています。「クスッと笑ってもらえたらいいなあ…」と思っているかもしれません。
文房具好きだからなのか、商品について業者の方と細かくやり取りをしているようです。毎度、商品のクオリティの高さに私もびっくりします。
—— 新商品については告知などしているのですか?
宮井さん:
豊島屋のインスタで告知をしています。新商品や豊島屋の情報についても社長自らがインスタで発信していますので、ご覧になってください。
鳩グッズは鎌倉に足を運んでもらうため
—— 鳩グッズはすべての店舗で買えるのでしょうか?
宮井さん:
販売は本店だけに限定しています。鳩グッズをつくり始めた理由のひとつに、もっとみんなに鎌倉に来てほしいという思いがありました。
そのため販売は鎌倉本店のみに限定しています。実際にグッズ目当てに来られるお客様もいて、入店して鳩グッズコーナーにまっしぐら、という方もいますね。
—— ネットなどでもかなり話題になっていたので、本店限定は意外でした。
宮井さん:
地方在住のファンのなかには、わざわざ鎌倉近隣の知り合いに頼んで、買ってきてもらう方もいるようです。
実はコロナ禍で緊急事態宣言があった際に、期間限定で、公式オンラインショップで販売したんです。週替わりで5〜6アイテムずつ売ったのですが、全国からかなりの注文がありました。お客様からも「ネットで買えて嬉しい!」という声がたくさん届きましたね。
しかしながら、今後はオンラインで販売をする予定はありません。鳩グッズに出会いにぜひ鎌倉に足を運んでもらいたいです。鎌倉に多くの方が来てくださるというのが私たち豊島屋の願いだからです。
取材・文/酒井明子