プリント類をうっかり親に渡し忘れてしまうお子さんは多いものですが、もしもわが子がテストや学習プリントなどを意図的に隠していたらショックですよね。そんなときはどうしたらよいのでしょうか。教育家・見守る子育て研究所所長の小川大介先生に聞きました。

Q】テストを隠していたことが発覚し

小学4年の男の子の母です。息子が悪い点のテストやプリント類を隠していることが発覚しました。先日、保護者会があって、学校に行って息子の机を見たら奥のほうからぐしゃぐしゃに丸まったテストが出てきて、あれ?と思ったのですが…。その帰り道に同じクラスの子がうちの子がテストを学校のゴミ箱に捨てているところを見た、と教えてくれました。

 

家に帰って子どもの部屋を見てみたら、おもちゃ箱の下から小さく畳まれた学習のプリント類も発見。悲しみを通り越してあきれてしまいました。点数についてとやかく言った覚えはないのですが。どうしたら良いのでしょうか?

「理由は必ずある」子どもの声をまずは聴くこと

こうしたケースの場合、親としては焦りや怒り、悲しみが沸き起こってくるとは思いますが、まずは気持ちを落ち着けてください。そして、叱るより前にまずは本人の事情を聴くように心がけてください。「何があったの?怒らないから何が起きたのか教えてくれる?」と声をかけてあげてほしいのです。

 

アニメか何かの影響で「0点のテストを隠した主人公」のまねをしただけかもしれませんが、ご相談者様のお子さんは学習プリントを小さく折りたたんでいることから、自信のなさがうかがえます。

 

小学4年生は学習内容が難しくなる学年なので、もしかしたら授業がわからなくなっているのかもしれません。自分の点数にショックを受けてどうしたらいいのか分からなくなったのかもしれません。

 

とにかく何か理由が必ずあるはずです。大切なのは、安心させてあげること。「大丈夫だからね。もし勉強に困っていても、どうしたらいいか一緒に考えるからね。大丈夫だよ。何があったの?」といった言葉を重ねながら話をしてあげてください。

 

原因がわかったら、困っていることを取り除いてあげることが大切です。

 

たとえば、どうしてもやりたいゲームや見たいテレビがあり、趣味の時間を制限されたくないから学習プリントを隠していたとします。その場合は、「どういうタイムテーブルなら宿題も趣味も両方できるか一緒に考えてからやろう」と提案し、時間の使い方を相談していくことになりますね。具体的な過ごし方がイメージできて、お子さんが納得できたなら、テストを隠す必要もなくなるでしょう。

学校の教室で

一方、お子さんが心を閉ざすようにしてそういった話し合いができない場合は、よほど勉強またはテストで困っていることがあるのでしょう。本人にとっての痛みが強く、癇癪を起こすようなときは、無理に対話を続けようとはせずにしばらくそっとしておくことです。親御さんからの催促がなければ落ち着いていくでしょうから、理性を取り戻したタイミングで話しかけましょう。

 

「勉強は大切だよね。でも、ママが勝手にやり方を押しつけたら嫌でしょう?何がどう嫌なのか教えてくれないと、どんなやり方がいいかわからないから教えてくれるかな。一緒にやり方を考えよう」と、寄り添ってあげてください。

 

ここで時間がかかるケースは、親に対する信頼度が低いことが考えられます。「どうせ親は自分の言い分なんか聞いてくれない」と思っている場合などですね。その場合は、過去の関係の清算が必要です。親にとって、子どもとの信頼関係を築けてきたかどうかに向き合うのはなかなか苦しいものですが、「これからはママ(パパ)も考え方を変えて、あなたの味方をしていくからね」などと、これからのスタンスを伝えるようにしましょう。

 

親御さんも一生懸命子育てをやってきたと思いますし、自分は間違っていないはずだという思いもあるでしょう。しかし、信頼関係は親だけがつくるものではありません。子どもの気持ち、受け止め方もあります。

 

現に信頼関係が上手くいっていないなら、その事実を踏まえて「一緒に考えられる関係に変わっていこう」と親側が捉えることが改善の第一歩です。思春期以降のコミュニケーションにもつながる大切な視点です。段階的に親子の信頼関係をつくっていくことを大事にしてほしいと思います。

親も先生も気づけていないことがある可能性も? 

ご相談者様は点数についてとやかく言った覚えはないとのことなので、「高得点をマウントしてくる友達がいて、親にもテストに関して何か言われたくない」など、お子さんが学校で何らかの嫌な思いをしている可能性も考えられます。それを、親御さんに言いにくかったのかもしれません。

 

「忙しくてあまり関わってあげることができていなかったかな、だから言えなかったのかな」など思い当たることがあるかもしれませんが、どうか「親失格だ」とご自身を責めることはしないでください。

 

「悲しみを通り越してあきれてしまいました」とおっしゃっていますが、実際はあきれたわけではなく、心にぽっかり穴があいたような親としての無力感のようなものを感じられたのではないでしょうか。ここ数年はコロナ禍で先生とのやり取りも少なくなり、子どもの学校での姿が見えにくくなっているので、いろいろと大変な部分があるのではとお察しします。

 

お子さんが困っているという事実に気づけたのなら、これから手を打てばいいだけのこと。繰り返しになりますが、まずはお子さんの事情を理解し、信頼関係に問題がありそうなら立て直せばよいのです。

 

もうひとつ、学校の先生もお子さんのことが見えていないのかもしれません。とても手のかかる子がいて先生の関心がご相談者様のお子さんに向いていないとか、先生が淡々と単元をこなすだけで子どもたちの理解度への配慮がない授業になっているとか、学級運営に何か問題がある可能性も感じます。先生と連絡をとり、学校での様子を聞いてみることも解決の手がかりになると思いますよ。

 

PROFILE 小川大介さん

小川大介先生
教育家・見守る子育て研究所所長。京大法卒。30年の中学受験指導と6000回の面談で培った洞察力と的確な助言により、幼児低学年からの能力育成、子育て支援で実績を重ねる。メディア出演・著書多数。Youtubeチャンネル「見守る子育て研究所」。

取材・構成/佐藤ちひろ