「今、振り返ってみても両立は相当タフでした。寝不足のまま生放送に突入する地獄のような日もあった(笑)。でも一生モノの自己投資で、仕事の『腹落ち感』が変わりました」。平日朝5時45分から放送されている『Newsモーニングサテライト』(以下、モーサテ)(テレビ東京系)でメインキャスターを務める相内優香さん(36)。テレビ業界では「日本一難しいニュース番組」と呼ばれる番組でキャスターを務めつつ、大学院での勉強を両立させ、今年3月にはMBA(経営学修士)を取得しました。
相内さんの「学び直し」の決断の背景にあった思いとは?メインキャスターの重責と喜び、未来のビジョンまで、幅広く伺います。
決断の背景に 33歳で抱いた「もやもや」
── まずは早稲田大学ビジネススクールの卒業とMBAの取得、おめでとうございます。
相内さん:
ありがとうございます。最後は年末年始を返上して修士論文を書き上げましたが、無事に修了することができ、ホッとしています。尊敬する教授のもとで本気で学び、素晴らしい仲間たちに出会うことができた2年間でした。
── 20年4月に入学されていますが、MBA取得を意識したのはいつ頃ですか?
相内さん:
新型コロナウイルスが流行する前、19年の夏頃です。
── 決断の背景にはどんな思いがあったのですか?
相内さん:
経済キャスターとして、自分の経済・経営の分野の専門性を高めたいと思ったことが大きな理由です。
あとは、当時、WBS(ワールドビジネスサテライト)を担当して丸10年になるころだったんです。
経済キャスターとして、消費の現場など、ミクロ経済の現場に足を運んでレポートするという、本当にやりがいのある仕事を長年やらせていただきました。2018年には番組の中で『Vチューバー相内ユウカ』というキャラクターも生まれ、19年にはYouTube番組をやったり、本を出版したり、充実した日々でした。
ただ、速報性が命のニュースの現場は、その日のオンエアが終わると「次、次」と、どんどん流れていくというところがあって。「New」を追い求める「News」なのだから当然なのですが、関心も次から次へと移っていく。「情報が消費されていくなぁ」という感覚がありました。
そんな毎日に身を置く中で、その場その場で消費されていくものではなく、「じっくり腰を据えて、一生残る自己投資がしてみたい」という思いが少しずつ大きくなっていきました。
── ある意味では、変化を求めていたということでしょうか?
相内さん:
そうですね、変化を求めていたと思います。当時33歳で、なんとなく「このままでいいのかな」ってもやもやしたものがありました。
決断する決め手になったのは、2019年にノーベル化学賞を受賞された吉野彰さんの言葉です。吉野さんと、ジャーナリストの池上彰さんの対談企画のナレーションを担当したのですが、33才でリチウムイオン電池の研究を始めた吉野さんが「35歳までにどれだけ自分の力を蓄えられるかが重要なんだ」「コツコツやってきたことが35歳を過ぎてから花を開いていく」とおっしゃったんです。
ナレーションを入れながら「あ、わたし、35歳まであと2年だな。どうしよう?」って。
あと2年。挑戦するなら「今だ」と思い、これまでの経験が生かせる「MBAしかない」と思ったんです。