2020年に夫でアートディレクターの池澤樹さんと共に起業。クリエイティブスタジオ「STUDEO」を立ち上げた篠原ともえさん。日本を代表する大手企業の広告を数多く手がけてきた池澤さんを、篠原さんは羨ましいと感じていたそう。そんなとき、池澤さんから掛けられた言葉から大きな気づきを得たと語ります。

篠原ともえさん
夫との関係を話す篠原ともえさん

言い合う時間は「ものづくりに必要なプロセス」

—— ご夫婦で会社を立ち上げられましたが、素人考えですが、夫婦で一緒に仕事をすると、ケンカが多くなったりしませんか・・・?

 

篠原さん:

ケンカというか、いいものを作るために、厳しく、妥協しないで徹底的に制作に向き合うと、熱量が上がって言い合いにはなります。でも逆にその方が、もの作りとしては強くなる。

 

だから、あまりネガティブに捉えないようにしてます。

 

言われるべきことがきっとあるんだって。デザインに関してはね。夫婦げんかとは違うから。ありがたく、先輩の意見として聞いていますね。

 

—— その空気をそのまま家に持って帰ってしまったりしません?

 

篠原さん:

それはありますね(笑)。でも、私はものづくりが良くなくなるなら、それでも構わないという考え方です。

 

もの作りが良いものになれば、2人でよかったねと笑い合える時間があるから。仕事がうまくいくことと、夫婦生活がうまくいくことが、同時に成立することを信じてやっています。

 

毎日がいい日じゃなくてもいい。言い合う時間があっても、私はとってもクリエイティブだなって思うんです。

 

ただ、プライベートの時間としては、土日は絶対取るようにしてますね。

あえて仕事とプライベートを分けない

—— 休日は、デザインとは関係ないお話をされるんですか?

 

篠原さん:

とはいえ、「この資料になりそうな展覧会があるよね」と美術館に行ったり、洋書を探しに本屋さんとかに行っちゃうんだけど(笑)。でもそれもすごく楽しい。

 

あくまで私の考え方ですが、家庭がうまくいって、穏やかであれば仕事も穏やかだし、家でのことを頑張ると仕事にも生かされるという考え方ですね。

夫は「同志でもあり、ライバル」

—— ご主人はどんな存在ですか?

 

篠原さん

背中を押してくれる人、勇気をくれる人です。同志でもあり、ライバルでもある。悔しいって思うときもあるし、尊敬もしているし、仲間でもあります。

篠原ともえさん
仕事について今の考えを話す篠原ともえさん

—— ご主人からかけられた言葉で印象的だった言葉はありますか。

 

篠原さん:

彼はいろんな良いプロジェクトを手がけているので、最初から恵まれた仕事が来たのかなと、羨ましく思ったときがあったんですね。でもそうではなく、「小さな仕事も大きな仕事も関係なく、全力で取り組めば必ずいい仕事に繋がる」と言われました。

 

小さな仕事でも大切に育てていく。本当はそこまで頼まれてない仕事を、企画書を作って「こうしませんか」と提案したらガラッと変わったり、そういうことがおおいにあったんです。

 

彼は、クライアントさんが本当に喜ぶ、クライアントさんの人生のことまでずっと考え続けて、アイデアがわーっと溢れてくるんですよ。

 

私もこれまでやっていたつもりだったんですが、考えてきれてなかったなと思っちゃうんです。「なんで私はこのアイデアが出てこなかったんだろう」と、すっごく悔しくなったり。

 

どんな仕事でもそれくらい時間をかけて熱量を届けるということは、教わりました。

 

—— 素敵なご関係ですね。

 

篠原さん:

…厳しいですけどね(笑)。

PROFILE 篠原ともえさん

文化女子大学短期大学部服装学科ファッションクリエイティブコース・デザイン専攻卒。1995年歌手デビュー。映画、ドラマ、舞台など歌手やタレント活動を経て、衣装デザイナーとしても活躍。2020年、夫でアートディレクターの池澤樹氏とクリエイティブスタジオ「STUDEO」を設立。2022年4月開業の宿泊施設「OMO7(おもせぶん)大阪 by 星野リゾート」ではホテルユニフォームのデザイン・製作監修を担当している。

取材・文/市岡ひかり 撮影/植田真紗美