4月2日は世界自閉症啓発デー。長年、自閉症啓発の活動を続ける俳優であり、一般社団法人Get in touch理事長の東ちづるさんにお話を伺いました。活動を通して「自分の生きづらさの理由を知った」と話されます。

活動するのは、私自身が生きづらいから

── 自閉症、LGBTQ、さまざまな障がい者と一緒の「まぜこぜの社会」を作る活動、Get in touchは今年で法人化から10年を迎えます。どうして活動されているのでしょうか。

 

東さん:
私が高齢者、患者、障がい者になった時、自分らしく生きられないのがいやだから、活動しているんです。

 

漠然と生きづらいなというのは感じていて、活動するようになって、私の家族にも原因があったんだなあと気づきました。

自分とちがうイメージに苦しみ

── 生きづらさは何があったのでしょうか。

 

東さん:
すごく言語化が難しいけれど、芸能界に入って、お嫁さんにしたい女優・タレントって言われたり、いつも元気で明るいと言われたりしたら、それをなぞる自分をやらなきゃいけないのかなと思っていました。

 

私は元々はすごいアングラ志向なところもあるのに、いつも太陽の下にいるちいちゃんを求められて。

 

料理番組で家族を上手くまとめていく、元気で明るくたくましい優等生的なイメージがどんどん作られていきました。振り返れば、私は子供の頃から優等生なイメージだったと思います。

 

私、小学校の1年から6年まですべて1学期学級委員なんです。怖いでしょ。でも本来は、学級委員には向いてないんです。張りきってやらないから、2学期には落選するんです。でも次の学年になったら、運動も勉強もできるからとまた選ばれて、親は喜んで、でも自分は嫌で…を6年繰り返してました。

東ちづるさん

── 「まぜこぜの社会」をめざす活動を通じて、生きづらくなくなったのでしょうか?

 

東さん:
カウンセリングも受けたし生きづらさとも付き合えるようになりました。活動のおかげもあります。群れることを否定していたけれど、団体を作ったことで活動もしやすくなりました。団体での煩わしさもあるけれど、効率のよさも知りました。時代も変わってきました。「生きづらい」がみんな知っているフレーズになりましたしね。

高校時代の記憶がほとんどない

── 高校生時代の記憶がないんですね。

 

東さん:

ほとんどないんですよね。芸能界に入った時には、高校の恩師にはびっくりされました。「みんなの視線を浴びるところにはいくとは思わなかった」と。静かだったようです。テニスの部活もすぐやめたし、まんが研究部の部長だけど幽霊部員だし。おとなしかったかも覚えていないですね。

 

芸能界に入って、バラエティ番組で、サプライズで高校の同級生が登場して、でも私はわからなくて、「高校の恩師?」って答えたら、「同級生だよ」って言われて、番組としても成立しなかったですね。

 

楽屋に先生や同級生が訪ねてきてくれて「私、本当に記憶ないんです」と言っても、「天狗になりやがって」みたいに相手は思いますよね、それでやばいと思って、これはちゃんと向き合おうと思ったんです。カウンセリングを受けて、すごく変わりました。

日本が基本的人権を守れる国になれば

── 今は生きやすいですか?

 

東さん:
以前と比べたら生きやすいですね。でもコロナ禍と戦争と地震と自殺などのネガティブなニュースを見ると自分を保つのが大変な時があると思います。

 

── 日本中がそうかもしれません。どうしたらいいと思いますか。

 

東さん:

日本が本当に基本的人権を守れる国になったらいいと思います。みんな不安だらけ。でもその不安を解消できるひとつに制度がありますよね。「この国で暮らして安心」となればいいですよね。

 

過去の世界自閉症啓発デーの様子(写真提供 Get in touch)

── 自閉症支援において、日本はどの程度進んでいると言えそうですか。

 

東さん:
10年前と比べるとずいぶん進んでいると思います。

 

「うちの子最高、めっちゃ面白い、町でティッシュもらったら、返さなきゃって走って持っていく」と笑顔で話す人がいる一方で、同じことをしても「恥ずかしい。あなたにうちのしんどさがわかりますか」って怒る方もいる。みんなと一緒じゃないとダメと思っている両親に育てられている子はしんどさがあると思います。

 

「みんな違ってみんないい」と言えるような環境だといいですよね。要するに、合理的配慮がなされている社会です。

 

自閉症のお子さんがいる親御さんは警察に呼ばれることもあるんです。例えば、電車内でシャカシャカと音漏れしている音楽を聴いている人の耳からイヤホンを外してしまったり、がらがらの電車の中、自分にとってこだわりのある席に座って隣の人を驚かせてしまったり、トラブルになる時もあるんです。

 

でもそういう特性があると知っていれば、トラブルになりませんよね。

 

寛容な社会は全ての人が暮らしやすいです。でも今は寛容とは言えないですよね。ベビーカー論争もあるくらいですから。

啓発活動が必要なくなることが目標

── 目指す姿はどこでしょうか。

 

東さん:

Get in touchが必要なくなること。私たちの啓発活動がなくなることですね。

 

多様性やSDGsなどの言葉も浸透し、こうしたインタビューもあるし、自閉症の特性を生かしたドラマもある。ネットフリックスなど海外ドラマでは自閉症などさまざまな特性のある人が主役でも脇役でも出ています。

過去の世界自閉症啓発デーの様子(写真提供 Get in touch)

 

── どうやって実現しますか。

 

東さん:

浅く広くゆるくつながることだと思います。私たち日本の人はどうしても真面目なので、絆、寄りそうことを大事にする。それも大切ですが私はちょっと苦手(笑)。

 

継続は力なりですが、できる時に、できる人が、できる事をしていく。無理はしないで、諦めず、焦らず。浅く、広く、ゆるくつながりながら。失敗や間違い、迷惑も必要以上に恐れず。そこから気付くことや学ぶこともたくさんありますから。

 

「社会のために役に立たないといけない」という刷り込みがありますよね。でも必要なのは、「社会のために役に立つ人」ではなく「人のために役に立つ社会」ですよね。「人に役立つ社会を作る」ことが大事です。

 

社会の役に立たなければ存在価値がないと思っていると、離職したり、大きな失敗をしたりすると生きていけない気持ちになるかもしれません。どうなっても生きていける国と思えれば最高ですね。

 

── そうなればいいですね。

 

東さん:
そのためには教育も重要ですよね。人権や哲学、経済学、性教育などの教育もあればいいと思います。例えば、性教育は命の教育ですから、自分の体が大事、相手も大事と学びます。哲学があれば、自分の頭で考え言語化の訓練もできるでしょうし。経済学があれば、お金を道具として活用する意味がわかると思います。

 

── いろんなこと考えて活動されてらっしゃるんですね。今後の目標は何でしょう。

 

東さん:
Get in touchの解散です。そして、新たな活動としては、10月6日の「世界脳性まひの日」への取り組みです。広く知ってもらうために、グリーンがテーマカラーなので、Warm Green Dayと名付けて啓発活動を考えています。

 

PEOFILE 東ちづるさん 

広島県生まれ。ドラマから司会、講演、ラジオ、執筆など幅広く活躍する。アートや音楽、映像、舞台などを通じて「まぜこぜの社会」を目指す一般社団法人Get in touchを設立し、理事長として活動している。東京オリンピック・パラリンピックの大会公式文化プログラム「東京2020NIPPONフェスティバル」の文化パート「MAZEKOZEアイランドツアー」の総合演出・構成・総指揮を務めた。4月2日 世界自閉症啓発デーにはオンラインイベントがYouTubeにて開催される。

参照/「MAZEKOZEアイランドツアー」 https://youtu.be/waK22pnvFRY
自閉症啓発デーオンラインイベント https://youtu.be/GWK1ik0AEjI

取材・文/天野佳代子 撮影/CHANTO WEB NEWS