長年、低迷期と言われ続けているデパート。新型コロナウイルスの影響で、インバウンド消失で打撃を受けつつも、昨年の全国百貨店売上高は前年比+5.8%増となりました (日本百貨店協会・速報)。デパートは今どうなっているのか──経済アナリストの増井麻里子さんに聞きます。

海外旅行代わりの買い物が増加

複合商業施設、モール型ECサイトなど、現在ではショッピングをする際に、さまざまな選択肢が増えました。新しく買える場所が増えて便利になった一方で、デパートは低迷期と言われています。一段と深刻な低迷期を迎えるきっかけとなったのが、リーマン・ショックです。

 

そんなデパートの売上げですが、2013年に16年ぶりに前年を上回ります。その頃から下支えとなっていたのが、インバウンド消費でした。しかし、コロナ禍になり、インバウンド消費が大幅に減り、2020年の免税総売上高は前年比▲80.2%、全体の売上高は▲25.7%と過去最大の減少を記録してしまいました。

 

この傾向は翌年も続くかと思われていましたが、2021年の百貨店売上高は前年比+5.8の4.4兆円に回復しました。免税総売上高は▲33.1%と一層厳しい状況でしたが、2021年の好調な分野は引き続き、時計や宝石などの装飾や絵画です。海外に行くことができなかった富裕層が、デパートで高額商品を多く買ったのです。外商など固定客に強みを持つ店舗は、会社想定以上に好調だったようです。

商品と一緒に信頼を買うことができる

デパートで買えば間違いのない品質の物が手に入るという信頼感は、現在でも私たちの中に根強くあります。
デパートで買い物
実は、デパートの通販が注目されているのも同じ理由です。品質面で安心感のあるデパート商品は、コロナ禍より前からお歳暮や贈り物などを考える際に利用する人が増えているのです。コロナ禍で外出機会が減ってからは、デパート側のECサイトリニューアルも功を奏し、自宅へ美味しい季節商品をお取り寄せする使い道も増えました。

 

デパートにはさまざまなブランド品が置かれています。たとえば食品では、出品者は手数料として20〜25%ほどをデパート側に払わなくてはいけません。手数料が買取分か実売分に対してかは契約内容によります。出品者はブランド力のある物を販売する必要があります。

 

また、催事で販売されている物も、デパートが自信を持っておすすめする、信頼できる物が多いと言われています。地域の物産展や輸入食品フェアでは、現地に行かず、近場で名産を味わうこともできます。その道のプロが選んだ確かな商品の中からひとつを選ぶ安心感は、デパートならではと言えるでしょう。

目を養う場としてデパートを利用

良質なものを扱うデパートですから、国内の富裕層が集まるのは納得ですが、アフターコロナでは、国内富裕層が海外で消費することが見込まれます。ボリューム品やインバウンドの需要回復についても、デパート側は慎重に見ているようです。

 

デパートは総じて、若年層よりも高齢者を重要視してきたため、他の商業施設などに比べ、SNS戦略の弱さも目につきます。しかし、コト消費やオンライン販売に注力し、変わりつつあることも事実です。アプリによるパーソナライズ提案やオンライン接客など、DXに取り組む動きも出てきました。

 

最近ではリーズナブルなファストファッションなどが流行し、たいていの日用品は100円ショップなどで手に入りますが、確かなものを見る目を養う場として、デパートをうまく活用するのもいいかもしれません。

 

DXにより魅力的なイベントやセールの情報が届きやすくなれば、足を運ぶ人も増えるのではないでしょうか?

 

PROFILE 増井麻里子さん

経済アナリスト増井麻里子
経済アナリスト/経営コンサルタント。証券会社で株式調査等に従事し、ヘッジファンドでのクオンツアナリストを経て、ムーディーズでは大手企業の信用力分析、国際協力銀行では国際経済調査を担当。独立後、経済に関する講演・執筆実績多数。

取材・文/酒井明子