原油価格の高騰により、昨年からガソリン代の値上げなどのニュースが世界中を駆け巡っています。ふだんから車に乗らないのであれば、自分には関係ないと考えがちですが、実はそうとも言えません──経済アナリストの増井麻里子さんに聞きます。

経済回復により原油の使用量がアップ

原油価格が上昇した理由としてまず考えられるのは、世界的に経済が回復する見通しが立ってきたということです。新型コロナウイルスは世界中に大きな影響を与え、景気は非常に落ちこみました。いまだに収束しておらず、私たちの生活に多大な影響を与え続けています。しかし経済を動かそうという流れも強く、少しずつですが景気回復の見通しがたってきました。

 

2022119日には原油価格の国際的な指標となる、「米国産WTI原油」の先物価格が、1バレル87ドル台と、201410月以来の高値を記録しました。経済が回復してくると人が動いたり生産活動をしたりするため、石油の消費量が増え、このように価格が上がってくるのです。

 

118日に原油国であるイラク共和国とトルコ共和国を結ぶ、パイプラインが事故で爆発しました。これにより原油の安定した供給が難しくなるのではとの懸念が高まりましたが、再開の目途が立ったようです。しかし、ロシアのウクライナ侵攻の可能性が高まり、24日には88ドル台と高値を更新しました。こうした供給不足への不安も原油のさらなる高騰につながっているのです。

電気やガス料金の値上がりが心配

原油の高騰が、私たちの生活に与える影響は多大にあります。ガソリン代の値上がりはもちろんのこと、実は心配なのが電気料金の値上がりです。

 

電気料金には「燃料費調整制度」というものが適用されます。この制度は電気をつくるためにかかる火力燃料の価格変動を、電気料金に反映させても良いというものです。火力燃料には原油も含まれています。そのため原油が高騰すると、私たちの電気料金もその影響で値上がりするのです。

 

ガス料金にも同じように、「原料費調整制度」というものがあり、原料となる天然ガスの輸入価格の多くは原油価格に連動しています。したがって原油の高騰により値上がりが予想されています。

 

ただ、どちらも今すぐに値上がりするわけではありません。13月にかかった燃料や原料の平均価格が、私たちの電気料金やガス料金に反映されるのは6月です。そのため6月以降の電気料金やガス料金の値上がりが、心配されています。
原油
スーパーマーケットにあるような身近な商品も影響を受けています。

 

たとえば、すでに一部の企業から値上げが発表されたもののひとつに、紙製品があります。紙をつくるのには燃料が必要です。ティッシュペーパー、トイレットペーパー、キッチンタオルなどの価格に転嫁される可能性があります。また、製造過程で熱を使う加工食品も今後が心配です。このように私たちの家計に響きそうなものに、原油の価格は大きく関わっています。

 

最初にガソリン代の値上がりについて述べましたが、影響を受けているのは自動車だけではありません。原油は飛行機の燃料にも関係しているため、世界的に運賃が上がっています。鉄の価格も上がるため、建設会社や自動車メーカーなどの企業は苦戦を強いられそうです。

原油の高騰はしばらく続く懸念が

原油はつくるにも、精製するにも、運ぶにもたくさんの人手が必要なため、大きな費用がかかります。しかし新型コロナウイルスの影響もあり、現在は労働者不足。原油の高騰が落ち着く見込みがたっていません。

 

電気料金やガス料金、紙製品や加工食品の値上がりに対しては、個人レベルでできる対策は残念ながらあまりないかもしれません。ライフラインですから、大幅に節約するのは難しい。ただ、原油の高騰は「経済回復の見込み」ともとれるため、今後の経済活性化には期待したいですね。

 

PROFILE 増井麻里子さん

経済アナリスト増井麻里子
経済アナリスト/経営コンサルタント。証券会社で株式調査等に従事し、ヘッジファンドでのクオンツアナリストを経て、ムーディーズでは大手企業の信用力分析、国際協力銀行では国際経済調査を担当。独立後、経済に関する講演・執筆実績多数。

取材・文/酒井明子