急に広報的な仕事を頼まれ、「SNSを活用してよ」と指示されたら…。ちょっと待って、そんなスキルないのに!初心者が“SNSマーケティング力”を磨く方法はあるのか?SNSマーケティングのプロ・朝山高至さんは「ふだんから利用していて身近なツールなら問題ないですよ」と話します。
口コミを跳ねさせる仕組みがわかれば、誰でもできる!
── Instagramで商品を売るときのポイントはありますか。
朝山さん:
マーケティング用語では口コミのことを「UGC(User Generated Content)」と呼びますが、企業の公式アカウントの投稿だけでなく、一般ユーザーの投稿するUGCも購買を直接左右する要素と言えます。特に、身近な人によるUGC投稿が購買意欲を高める要因となっていますね。
── そのUGCが、どのように自社商品の販促などに結びつくのでしょうか。
朝山さん:
ユーザーの行動を「UDSSAS」(ウドサス)という6つのフレームに落とし込むとわかりやすいでしょう。
- UGC(アテンション):例えば、一般ユーザーAさんが商品の写真や感想を「フィード」や「ストーリーズ」に投稿。または、友達にダイレクトメッセージを送り感想を伝える。
例 Aさんが「#表参道パン」と投稿
- Discover(発見):別のユーザーBさんが、Aさんの投稿を発見。UGC投稿を見て、商品やブランドを認識する。
例 BさんがAさんの「#表参道パン」を見て、UGC投稿もチェック
- Save(保存):BさんはAさんの投稿を後から見返すため、Aさんの投稿を保存する。
- Search(検索):商品やブランドについて調べ、さらに口コミや詳細を探す。
- Action(購入):調べた情報を元に商品を購入したり、店舗に出向く等、行動を起こす。
- Share(共有):Bさんも購入した商品について投稿し、新たなUGCとなる。Bさんの投稿を見た人が興味をもって行動をとると、さらに購入やUGCが増える。
仕事でInstagramを活用するのであれば、自身の企業アカウントや一般ユーザーの投稿がどのように購買に結びつくか、まずは整理するのがいいと思います。
そのうえで、「UDSSAS」のサイクルを回していけると、UGC投稿数と比例して商品を知る人も増えていきます。すると、さらにUGCがUGCを呼ぶ好循環を生み出すんです。
── では、まずはサイクルの起点となる商品を見つけてもらい、UGCの量を増やすことが大切ですね。
朝山さん:
そのためには、ハッシュタグや発見タブのおすすめなどで、新規ユーザーにも効率的にアテンションして、フォロワーの基盤を作ること。アカウントを育てていくことが重要です。
ハッシュタグの使い方次第でフォロワーが増える
── アカウントを育て、フォロワーを増やす方法はあるのでしょうか。
朝山さん:
アカウントの育成には2つのポイントがあります。まず、「新規のリーチ(投稿を見てもらう)を増やす」、そして「フォロワーの親密度を上げること」です。
はじめは、フィードやリールなど、色々な人に見てもらいやすいフォーマットにして、フォロワー外の新規のユーザーを増やしていきます。ひとつの目安として、フォロワーが数千人など一定数を超えてきたら、余力があればストーリーズやライブ配信等でフォロワーとコミュケーションをとることもお勧めです。より親密度が上がるでしょう。
── 実際に、投稿の新規リーチを増やすにはどうしたらいいですか。
朝山さん:
ハッシュタグ検索の上位、または発見タブのおすすめなど、フォロワー以外のユーザーが発見しやすいように、自分の投稿が表示される工夫する必要があります。
ハッシュタグ検索の上位や発見タブのお勧めの表示される投稿は、さまざまな要素から複合的に決まります。基本的に「いいね」や「保存」、「コメント」などのポジティブなリアクションを多くもらえると表示される確率が高まります。
どのような写真やコンテンツが、デザインにすると、より多くのポジティブなリアクションを貰えるのか。実際に投稿を続けていくと特徴が見えてくると思います。
── マーケ初心者が始める際に、心がけておきたいことはありますか?
朝山さん:
Instagramの運用を始めてしばらくは、投稿への反響も少ないかもしれませんが、地道に運用と改善を継続していくことが大事です。分かりやすい成果が出るまで半年~1年程度掛かる場合もあります。
ただ、運用の結果、フォロワー数が増えて、投稿へのエンゲージメントが増えて、さらに新規ユーザーも獲得できるといった良い循環が回ると思えば、継続しやすいのでは。
── 実際、新規のリーチを増やした後、フォロワーとの親密度を上げるにはどうしたらいいですか。
朝山さん:
フォロワーが増えてきたら、積極的に交流をはかるようにしましょう。Instagramではフォロワーとの関係が深いほど、フィード等のタイムラインに表示される投稿は上部に、ストーリーズであれば、左側に表示される仕組みです。そうした特性を活かしたいですね。
Instagramでの表示順を決めている要素は3つ、「Interest(興味・関心)」、「Relationship(親密度)」、「Timeliness(新しさ)」です。
- Interest(興味・関心):アカウントの投稿内容への関心の高さを推測されるので、「関心が高い」と見なされたコンテンツが優先的に表示されます。たとえば、いつも猫に関する投稿をよく検索する人は、発見タブ上で猫の投稿が上位にきます。
- Relationship(親密度):フォローとフォロワーの親密度を計算。より親密度の強いユーザーの投稿を上位に表示します。
- Timeliness(新しさ):新鮮なコンテンツが優先されます。他の要素も関わるため、完全な時系列ではないですが、5日前の投稿よりも5分前の投稿が上位に表示されやすくなります。
── フォロワーとの親密度が上がると、フォロワーに対してもリーチ率が上がりそうですね。
朝山さん:
それに伴って「いいね」や「保存」など、ポジティブなリアクションも増えていきます。その結果、ハッシュタグ検索の上位や発見タブのおすすめに表示される確率が高まって、新規ユーザーが増えていくんです。フォロワーが増えると、リアクションも増えるので、新規ユーザーへリーチするチャンスも増えるわけです。
PROFILE 朝山高至さん
慶應義塾大学総合政策学部卒。2019年にホットリンクに入社。企業のInstagramマーケティング支援や、ソーシャルメディアマーケティングの研究機関「ホットリンク総研」の研究員としてInstagramマーケティングのメソッド開発に従事。
取材・文/松永怜