パーティで再開した二人

晩婚化、非婚化が進んでいますが、なかには50代になってから結婚を決める人もいます。今やいくつになっても、自分がしたいときにするのが結婚、なのかもしれません。 

“過去ばかり話をする男性には興味なし!

30代に入った頃、友人たちが結婚への焦燥感を抱いているのが不思議だったとカナさん(53歳・仮名)は言います。とても50代には見えない若さを維持している彼女ですが、「体はそれなりに老いていますよ」と、淡々と話します。

 

 

「私は仕事が楽しかったし、30代で起業したいとも思っていたので、結婚する気はありませんでした。うちは父親が暴力をふるうタイプで、私が大学生の頃に両親はようやく離婚。と思ったら、すぐ母は再婚して。男性にすがらないと生きていけない姿を見て、私はひとりで生きていきたいと思いました。恋愛はしても結婚はしない。頑なにもそう思っていたんです」

 

33歳のときに起業し、小さいながらも20年、会社を経営してきました。中小企業経営者の集まりなどで知り合った男性から、何度か「つきあってほしい」や「結婚を前提に」と言われましたが、彼女はほとんど耳を貸さなかったといいます。

 

 

40代半ばに入ったこ頃、悟ったんです。私より年上の男性たちは、みんな過去のことばかり話すんだな、と。お酒や仕事の武勇伝。いろいろあるけど、みんな若い頃を懐かしんでいるだけ。私はいくつになっても、今とこれからの話をしたい。だから若い人と意識的に友人にならないといけないなと」

 

これは立場がどうであれ、大事なことかもしれません。同世代と話していると、つい過去に話に偏りがち。過去より今、そして未来の話をしたいものです。

昔の知り合いに偶然、パーティで再会

50歳を迎えたとき、それまでとは少し心持ちが違ったとカナさんは言います。

 

 

「過去があって今がある、それらがつながって未来がある。そんなふうに思えたんです。それまで過去を否定していたんでしょうね。特に自分の育った家庭を。でもこの年、母が亡くなって、自分の人生を一本の線として認められるようになったんです。もちろん、視点は常に今と前を向いていたいとは思いましたけど」 

 

そんなときに再会したのが、同い年のヨウスケさん。20代、必死に働いていた会社員時代に仕事関係で知り合った男性でした。つきあいかけたこともありましたが、彼女が仕事を優先したことで自然消滅。

 

「仕事関係のパーティで突然、『カナさん』と声をかけられて。びっくりしましたね。パーティを抜け出して2人で食事に行きました。積もる話をしながら、昔よりずっといい男になったなぁと思っていたら、彼が『あの頃よりずっといい女になったね』と言ったので、笑っちゃいました。『同じことを言おうと思ってたのよ』って。お互い結婚歴ゼロなこともわかりました」

 

意気投合したふたりはそのまま朝まで飲み明かしました。体力を使い果たしてボロボロになりながら、一度家に戻って出社したこともあとで笑い話になっています。

 

「彼も30代でフリーランスとして仕事を始め、その後、会社組織にしたそうです。お互いに零細企業だけど頑張ってる。そして過去より、今が楽しい。気持ちが同じで、自然につきあうようになったんです。私は賃貸暮らしなんですが、更新時期になにげなく彼に話したら、『うちに来ない?』と。どういう意味か聞くと、『結婚したい。一緒に暮らしたら楽しいと思う』って。そういう選択肢もあるのか、って目から鱗な気分でした」

“この人とならに年齢は関係ない

ずっと排除していたのに、50年経って、彼女のなかで初めて「結婚」の選択肢を意識したそう。

 

「単なるパートナーでも事実婚でもいいけど、婚姻届を出すのも面白いかもね、という話になって。ただ、結局はどちらかが姓を変えなければいけないので、それがネックで事実婚を選択しました。公証役場に行って事実婚契約書も作ったんです。披露パーティで、真っ白なドレスを着たら友人にウケました」

 

彼女が結婚を決めたのは、やはり同い年の彼が「今と未来」を見ている人だったから。

 

「体はお互いに50代ですよ。でも精神はつねに前向きな人なんです。この人となら一緒に走っていけると思った。歩くより走りたいんですよ、私」

 

カナさんはそう言って豪快に笑います。さらに年を重ねどちらかが病気になっても、彼となら「気持ちは前を向いていられる」と感じたからこそ、超オトナ婚に不安はなかったそうです。

仕事も順調な女性
パーティで再開した二人
文/亀山早苗 イラスト/前山三都里 ※この連載はライターの亀山早苗さんがこれまで4000件に及ぶ取材を通じて知った、夫婦や家族などの事情やエピソードを元に執筆しています。