夫婦のカタチは、十人十色。それぞれ抱える問題や夫婦のルールも、カップルの数だけ存在します。

 

「夫婦はそもそも他人であり、他人同士が円満に暮らすためには、“知恵”と“歩み寄り”が必要」とは、コラムニストの犬山紙子さん。問題が起きたときにどう向き合い、どうやって解決するかが大事だと指摘します。

 

そんな“夫婦のリカバリー力”を身につけ、いつまでも仲良く過ごすにはどうすればいいのでしょうか。数多くの夫婦を取材してきた犬山さんが得た学びと夫婦円満の秘訣とは? 

見た目ではわからない「家族内での孤立」が人の心を蝕む

── 犬山さんの著書『すべての夫婦には問題があり、すべての問題には解決策がある』では、さまざまな問題を抱えた夫婦に危機の乗り越え方を取材されたそうですね。取材を通じてあらためて夫婦の在り方について感じたことを教えてください。

 

犬山さん:

本当に多種多様なカップルを取材したのですが、痛感したのは、“夫婦のどちらかが孤立しない、孤独を感じないように話し合いを持ち続けることの大切”さでしたね。でも、それって実はすごく難しい。例えば妻側が、“自分さえ我慢すればワンオペでもなんとか回るから…“と受け入れ続け、夫もそれを問題だと思わない。その先に、孤立があったりしました。

 

── 本来ふたりで解決すべき問題なのに、ひとりで抱えこんでしまう。こうした問題の根底には何があると思いますか?

 

犬山さん:

問題があることをわかっていながら、向き合わずにやり過ごしていたり、相手の状況に無関心だったり。あるいは、パートナーの辛さや大変さを正確に認識できず、心の孤独に気づかない。こうしたことが要因になって、パートナーとの関係性が悪化してしまうのだと思います。

 

── 本当は手を取り合って歩みたいのに、同じ方向を向いてもらえないと、だんだん“相手に期待するだけムダ”と心が頑なになって、自ら孤立してしまうケースも少なくないと思います。

 

犬山さん:

そうなると何より自分自身が苦しくなりますよね。相手に対するネガティブな感情も雪だるま式に膨れ上がって、それまでたいして気にならなかった行動に嫌悪感を覚えたりと、だんだんとり返しのつかない状況に陥ってしまうと思うんです。

 

ですから、そうなる前に手を打ちたいところです。夫婦はそもそも他人同士ですから、円満に暮らすためには、“知恵”と“歩み寄り”が必要なんですよね。問題が小さいうちに対処できていたら少しの労力で解決できたはずなのに…というケースは多々あります。問題が大きくなるほど、向き合うために大きなパワーが必要になってしまう。
犬山紙子さん

「問題がある」と認めるのは難しいけれど…まずはそれが出発点

── “そのうち何とかなるだろう”と見て見ぬふりをしていても、ひとたび問題が起こるとやっぱり根本的な原因に立ち戻ってしまう。結局、どこかで解決しておかないと、くすぶり続けてしまう気がします。

 

犬山さん:

問題があることを認める、直視するというのは、意外と難しいものです。何かを変えるより、現状維持のほうがラクですからね。パートナーが大変そうでも気づかないふりをしてしまったり、感情にフタをして自分を押し殺したまま、日常をやり過ごしている人も少なくないと思います。

 

── 「これは私だけではなく、ふたりの問題なんだよ」ということをわかってもらう必要もありますよね。

 

犬山さん:

そもそもたいていの場合、ひとつの問題についての捉え方に夫婦間でかなり温度差があると思うんです。相手はたいして問題視しておらず、こちらの深刻さが伝わっていない可能性が高い。ですから、まずはきちんと状況を伝えなくてはいけません。

 

いちばんやってはいけないのは、相手に察してもらうことで、行動を変えさせようとすること。“私が大変なの、わかってるよね?”と考えるのは、残念だけど本当に伝わらないことが多くて。言葉にしないとなかなか気持ちは正しく伝わりませんから。たくさんのカップルの取材を通じて、私たち夫婦もそれを痛感しました。それ以来、「察してね」はふたりの間では禁止事項となりました。

優しい夫と理詰めで責める妻…この構図を変えたくて 

── そんなことがあったんですね。おふたりを見ていると、すごく信頼しあっている様子が伝わってきますし、漂う空気もとても穏やかです。最初から上手く向き合うことができていたのでしょうか?

 

犬山さん:

それが、そんなことはなくて。私たちの場合、彼がとにかく優しい性格で、逆に私は理屈っぽくて気が強いんですよね。

 

私は過去に2回不安症を発症していて、アンガーマネジメントも下手くそで…。何かを話し合うときは、相手が何も言い返せなくなるまで理詰めで責めてしまいがちでした。そして、必ずその後に罪悪感で自己嫌悪に陥ってしまう…という悪循環。自分でも“このままでは彼を追い込んでしまう、自分を変えていかないとダメだ”と感じていました。

 

それで、ふたりで話すときには、なるべく冷静でいることを意識したり、カウンセラーの手も借りながら、少しずつ変わっていって。今ももちろん完璧ではないですが、以前に比べ穏やかに「こういうことがあるけれど、どうする?」という話し合いができるようになり、ふたりの関係性も前より良くなりましたね。

 

PROFILE 犬山紙子さん

犬山紙子さん
コラムニスト。1981年、大阪府生まれ。2011年、“美女にもかかわらず負けている恋愛エピソード”を収集した著書『負け美女〜ルックスが仇になる〜』(マガジンハウス)でデビュー。『言ってはいけないクソバイス』(ポプラ社)など計14冊の著書を上梓。近年はテレビコメンテーターとしても活躍。

取材・文/西尾英子