いままでの当たり前が大きく変わった昨今。家族が家にいる時間が増えた結果、「どうやって対応したらいいかわからない!」という場面が多くなったという声が聞かれます。仕事や家事に集中したいという気持ちから、何気なく話しかけてくるわが子につい、きつい言い方をしてしまうと悩む人も…。

 

「子どもと衝突する親は、子どもへの第一声を工夫するといいでしょう」と、国内外の学校運営や生徒指導に長く関わってきた足立啓美先生は指摘。子どもへの声がけの問題点を、具体的なシーンに則して紹介します。

【その1】オンライン会議中、子どもが部屋に入ってきたら?

在宅勤務をする人が増え、オンライン会議も一般的になりましたが、会議中に子どもが声をかけてきたり、画面に入ってきたり…という経験をした人も多いと思います。そんなとき、どうしたらよいのでしょうか。

押しつけの「Youメッセージ」ではなく気持ちを伝える「Iメッセージ」を

「会議中は部屋に入ってこないで」と伝えたのに、それを子どもがすっかり忘れて部屋に入ってきてしまった…そんなときつい、感情に任せて「あっち行って」などと言ってしまいがちです。

 

これは主語が“あなた”になる、“Youメッセージ”と言われるもので、相手を責めたり避難したり、行動を変えさせたいという指示をするように伝わり、本当に伝えたいことが相手の心に届きにくくなります。親子関係を悪くすることになりかねませんし、子どもの自主性を育てません。
子供と会話する母親
この場合の適切な声かけは、“Youメッセージ”ではなく、「お母さんは会議中なんだ。あなたが一緒に映ってしまうと困っちゃうの」「(お母さんは)この会議、集中して終わらせたいな」という“私”が主語の“Iメッセージ”で伝えることです。

 

“Iメッセージ”の声がけは、自分も相手も尊重するコミュニケーションの一つで、相手の言動によって自分がどう感じたのか、相手に何を理解してほしいのかを素直に伝える効果があります。ですから、子どもがみずから考えて次の行動を選択・決断することにつながります。お母さんが集中して早く仕事を終わらせるには、別の部屋に行ったほうがいいんだな、などと子どもが考え、行動してくれたら大成功です。

 

自分で考えて、行動する子どもの成長につなげる“Iメッセージ”はさまざまな場面で利用できるそう。日ごろから親子の会話で意識して使うことをおすすめします。

× ネガティブワード:「あっち行って」「入ってこないで」「邪魔しないで」

○ ポジティブワード:「お母さんは集中して会議を終わらせたいな」

子どもと話し合って見通しを立てておく

そもそも、前もって“何時から仕事なのか”“いつから大事な会議があるのか”ということを丁寧に子どもに伝えておくことも大切です。親は仕事に集中でき、子どもも気持ちよく過ごせるように、見通しを立てて、それぞれがどのようにしたら良いかを話し合っておくと良いでしょう。

 

過ごし方を決めていくポイントは、親が一方的に決めるのではなく、子どもと話し合うこと。誰でも一方的に決まりを押しつけられたら気分はよくないものです。お互いが納得のいくアイデアを出し合ってみましょう。

 

たとえば、オンラインの会議中はドアの前にホワイトボードなどに「会議中」と書いておいておくのも、子どもが見通しを持つためには効果的です。子どもは時間の感覚の終わりを認識しにくいので、ホワイトボードには時計の絵を描くなどして、終わりの時間を書くなどの工夫も必要です。見通しを立てる力を育てることは、今後のテスト勉強やスケジュール管理にも役立っていきます。

【その2】オンライン会議があるのに部屋が汚いとき。何と伝える?

突然入ったオンライン会議に慌てふためいて、片づけるように子どもに怒鳴る…なんてことにならないようにしたいもの。常日頃から子どもに協力してもらって部屋をきれいに保てるのが理想ですよね。そのためにはどうしたらよいのでしょうか。

 

大切なことは、“親子で片づけの大切さについて共通認識を持つこと”と“ルール決め”です。ルールについては、置き場所や片づけの時間を決めたりと、既に工夫されている方も多いかもしれませんが、そもそも片付けがなぜ大切なのでしょう?子どもと話し合う機会はなかなかないかもしれません。

 

片付けは、家族みんなが気持ちよく過ごすために大切であり、家族の一員として協力しあって取り組むことなのだと実感できると、責任感とともに、子どもの意識も変わってくるでしょう。

命令や脅しはNG! 家族の一員としての責任感を育てる

部屋が散らかっていると、「何回言ったらわかるの!」「部屋を片付けて!」と一方的に命令してしまいがち。感情的に命令され、そのときは片付けたとしても、結局継続しないことも…。片付けの大切さとともに家族の片付けルールを理解していたら「洋服が落ちているね」「プリントが山積みだね」と状況描写をするような声かけをするだけで気がつくこともあります。

 

また、部屋が散らかっている状態で嫌な思いをしているのは、親だけかもしれません。「お母さん部屋が散らかっていると気持ちよく過ごせないんだ。一緒に片付けよ!手伝って欲しいな」と伝えて一緒に片付けるのも良いでしょう。

 

よく言いがちな、「片付けないなら捨てるよ」と脅すのはNGです。このような脅しも長い目で見て片付けの習慣の定着にはつながりません。

× ネガティブワード:「部屋が汚い!部屋を片付けて!」「片付けないなら捨てるよ」

○ ポジティブワード:「部屋がキレイだと、みんな気持ちいいね」「一緒に片付けしようか!」

ルールは一方的にならないようによく話し合う

親の言い分を伝えたらもちろん、子どもの言い分も聞きましょう。部屋を片づける必要性について双方が納得し、現実可能なルールを決めてみましょう。オンライン会議や授業では、個人的なものも映り込んでしまう可能性がありますし、簡単に録画することもできます。片付けないことで起こるリスクについても話し合うことで、片付けへの理解が深まることもあります。

 

また親は、在宅での仕事が増えているという現状を考慮して、完璧にきれいな状態を目指すより、会議ができるスペースが確保できれば良いくらいの気持ちに余裕が持てると良いかもしれません。コロナ禍のような非常時は、自分や周りへの期待値を高く持ちすぎないことも大事です。

 

育児をしていると、つい親の都合で「~しなさい」と言ってしまいそうになりますが、子どもを一人の人間として尊重することはとても大切な視点。「子どもの気持ちはどうなんだろう?」という考えを、常に頭の片隅におきながら子どもと接するようにすると、親子でよりよい関係が築けます。

 

子供と親は相互に影響しあって関係性を育んでいきます。子どもが家族の一員としての責任感を感じられることは、家族での所属感を育てることにつながり、逆境に負けない力(レジリエンス)を育てることにもつながります。

 

片付けを通して、家族の一員である実感と責任感を持てるとよいでしょう。

【その3】「ゲーム、タブレットをやめられない」ときはどうする?

コロナ禍により学校でもタブレット等のデジタルデバイスがますます積極的に活用されるようになりました。その延長線上で、ゲームや動画視聴などの時間も増え、親子げんかに発展する家庭も少なくないようです。

 

アメリカ小児科学会のガイドラインによると、メディア関連の養育には、4つの重要な点があるとされています。この4つとは、会話、教育、共同視聴、家庭内ルールです。

 

一番にルールを守ることを考えてしまいがちですが、メディアに触れる子どもとの会話を持つことや、一緒に見てみることも大切です。「新しいゲームなのかな?どんなの?」「今、どんな調子なの?面白いね!」などと子どもの熱中するものに興味を示してみてみましょう。子どもの好奇心も満たされていきます。

 

同時に、タイミングを見て、「携帯やパソコンってブルーライトが出ていてね。長い時間見ると目に良くないって書いてあったよ」などと、リスクについても伝えていくことが大事です。その上で、家庭内のルールを守れるようにサポートしていきます。

 

特に家庭内のルールは親が一方的に決めてしまいがちですが、子どもが納得して約束を守れるように、子供と話し合って現実的なルールを一緒に作ることが大事です。

 

しかしながら、ルールを守ることに頑なになりすぎるよりも、家族が良い時間を創り出すために、デジタルメディアを上手に利用できると良いでしょう。

ルールを守れなかったときの対応も子どもと話し合う

いざルールを決めたからと言って、それで終わりにはなりません。時にはなかなかゲームや動画視聴をやめないこともあるでしょう。大人でもゲームやインターネットはおもしろくてついついやめられないことがありますよね。

 

ゲームや動画を見始める前に「楽しそうなゲームだね。30分遊べるよ。5分前になったら知らせようか?」と言葉で伝えたり、終わり時間の前に「あと5分だよ。楽しいところで止めるのは難しいね。でも約束守らないと明日は使えなくなっちゃうものね」などと、気持ちを受け止めながらもルールを守ることを促す声がけをすることも忘れないようにしましょう。

× ネガティブワード:「いい加減にしなさい!」

○ ポジティブワード:「ゲームについて教えて」「あと30分遊べるね」

ときにはルールの更新も必要

ルールは柔軟に見返していくことも大切です。これだけやったけれど、それでも守れなかったときは、また話し合ってルールを更新していきましょう。根気よく、お互いが納得のいく落としどころを模索しましょう。

 

もちろん、完璧な人はいませんし、うまくいかないときもあります。時に親子喧嘩になってしまうことも…。しかし、そんなうまくいかない経験も次への学習材料として受け止めつつ、進めていきましょう。

 

PROFILE 足立啓美(あだちひろみ)

足立啓美さん
一般社団法人日本ポジティブ教育協会代表理事。小学校や適応指導教室などでレジリエンス教育の講師を務める。著書に『子どもの心を強くするすごい声かけ』(主婦の友社)ほか。

取材・文/田賀井リエ