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日々の小さな“いさかい”は、どんな夫婦にもつきもの。しかし、「わだかまりを持ち越さず、溝が深まる前に上手に対処することが、夫婦関係を健全な状態に保つコツ」だと家庭問題カウンセラーの新川てるえさんは言います。

 

そのために備えておくべきスキルや磨き方とは、一体どのようなものなのでしょうか?

感情的にならず冷静に話せる「魔法の言葉」

── 「わだかまりを持ち越さず、その都度対処していくのが大切」と伺いましたが、実践するのはなかなか難しいですよね。つい感情をぶつけてしまったり、嫌みを言って余計なケンカに発展することも…。

 

問題をきちんと解決しながら、信頼関係も損なわないコミュニケーションの方法はあるのでしょうか?

 

新川さん:

「アイ・メッセージ」というコミュニケーションの手法を覚えておくといいですよ。これは「私は」を主語にして自分の主張を伝える方法です。

 

まずは、「私はこう思っているよ」から会話を切り出し、その次に「WHY」で「なぜなら、こういう理由だから」。

 

そして、「次からはこんなふうにしてほしい」と願望を伝え、「どうかなあ」「わかってくれたら嬉しいのだけど…」と相手を尊重しながら交渉する。最後は、「聞いてくれてありがとう」と、感謝を伝えて締めくくります。
話し合う夫婦のイラスト

── なるほど…。柔らかな印象だけれど、意思を感じるメッセージですね。感情まかせに一気に伝えようとせず、筋道をたてて区切りながら話すことで、自分自身も冷静になれそうです。

 

新川さん:

「アイ・メッセージ」の反対語に当たるのが、「あなたが」が主語の「ユー・メッセージ」なのですが、これだと批判的で強い印象を与えてしまいがちです。「普通は〜」とか「世間では〜」といった一般化する物言いも同じ。あなた自身の思いが伝わりません。

 

ただ感情的に思いをぶつけるだけでは、「よくわからないけれど、なんだか怒ってるな」という印象だけを与えてしまい、こちらの意図が正しく伝わらないんです。
例えば、妻が家事の不平等を感じている場合。本来なら夫に自発的にやってほしいところですが、それが難しいなら…
私は、この数年間いつも悲しい思いをしてるよ。なぜなら、お互い働いているのに、私の家事負担が重くて、不平等に感じてしまうから。もう少しあなたの家事の分担を増やしてほしいけど、どうかなあ。考えてもらえると嬉しいのだけど…。
という具合に働きかけることで、結果的に妻側の負担を軽減できる可能性は高まると思います。

人間はコントロールされるのが嫌い!「こうしてよ」は反発を招く

── 「これをやって!」と決定事項を伝えるのはなく、交渉する、と。

 

新川さん:

人間は基本的に他者にコントロールされるのが嫌いなので、「こうしてよ」だと反発を招いてしまいます。

 

「~してもらえないかなあ」「これをやってもらったら嬉しいな」と言われると、相手も嫌な気持ちにならないし、前向きに考えることができて、事態が改善に向かうことが多いです。

 

とはいえ、一朝一夕では身につかないスキルなので、継続的にトレーニングをして習慣化させることが大事。要は筋トレのようなものです。新たな思考の習慣をつくるには100日必要だといわれているので、3か月間は意識的に伝え方を変える努力をしてみるといいと思います。

 

── ほかにも挑戦しやすい「夫婦関係をよくする習慣」はありますか?

 

新川さん:

ポジティブな発信を習慣にするのもいいですね。「11回、目を見てニコッと笑う」とか、帰宅したら「今日もお疲れさま!」と伝えてみる。意識的に「ありがとう」の回数を増やすなど、些細なことでOKです。

 

ただし、相手の反応に期待したり、見返りを求めないこと。無視されてイラッとしてしまうと、自分のメンタルにもよくないので、「ありがとうと言えた自分」「笑顔で声掛けできた私」を褒めてあげましょう。

 

こういったコミュニケーションを増やしていくことで、家庭のなかに自然と良い空気が漂うんです。
家事をする夫に声をかける妻のイラスト

相手をリスペクトする感覚を忘れない 

── お互い好きで結婚したはずなのに、長く暮らしているうちに、相手の良いところが見えなくなって、欠点ばかりが目についてしまうというケースは少なくありません。

 

新川さん:

相手をリスペクトする感覚は大切にしたいですよね。私のカウンセリングでも、「夫の長所を書きましょう」というトレーニングを行うんです。ですから、相手のいいところを思い出して、日記などに書いてみるのも手です。

 

── もし、ペンが止まってしまったらどうすれば…?

 

新川さん:

そんなときは、そもそもなぜ結婚したのかを思い出しましょう。

 

なかなか出てこないなら、欠点をひっくり返してみるとヒントになります。“細かくて口うるさい”なら“繊細でいろんなところに目が届く”、“自分の意見を押し付けがち”なら“自分の意志を持っている”、“ケチでお金を使わない”なら“節約家で計画性がある”とか。

 

あるいは、子どもに優しい、親孝行という具合に、いろんな角度から褒め要素を見つけてみましょう。なにごとも捉え方次第です。書くことで気持ちの整理や振り返りができ、前に進む力になりますから、ぜひトライしてみてほしいです。

 

時には相手に「私のいいところってどこだと思う?」「私のどこが好き?」と聞いてみるのも良いですね。最初は気恥しいと思うかもしれませんが、慣れれば、それが習慣になり、自然と“いいところ探し”ができる夫婦になれると思います。

  

PROFILE 新川てるえさん

新川てるえさん
作家・家庭問題カウンセラー。2度の結婚、離婚経験を生かし、1997年に情報サイト「母子家庭共和国」を開設。2014年子連れ再婚家族を支援するNPO法人「M-STEP」の理事長に就任。著書に「子連れ婚のお悩み解消法 ―継子・実子・住居・お金をどうするか」(さくら舎)など。

取材・文/西尾英子 イラスト/えなみかなお