服の持ち主がわからない

前回、子どもの成長に伴って洗濯物の部屋干しスペースがなくなり、廊下が洗濯物のれん街と化しているというお話をしました。

 

しかし、三世代完全同居の洗濯物問題はそれだけにとどまりません。

 

洗濯物が混ざってしまい、さらには見分けがつかなくなるという問題もあるのです…。

完璧な洗濯システムに義母の影

私は、洗濯物をたたむのがあまりにも嫌いでした。

 

たたんでいない衣類が常に山積みになっていたため、数年前から、私たち子世帯のすべての衣類は干したときそのままの形で、個人用のハンガーラックに移動させるだけ(下着や靴下など細かいものは専用のカゴに放り込む)という収納方法をとっています。

 

この“全部吊るし方式”に変更してから、洗濯物を片付ける手間が劇的に削減され、なんと素晴らしい方式か…!と自画自賛をしている日々です。

 

しかし、そんな完璧に見えるシステムにもほころびはあるものです。我が家の場合は…義母の存在です。

 

子どもたちが入浴の際に脱いだ服は、寝るときにそれぞれが二階の汚れ物置き場に持っていくと決めているのですが、しばしば、義母が良かれと思って、一階の自分たちの洗濯物と一緒に洗ってくれることがあるのです。

 

いつも洗濯物に追われている私を可哀そうにと思ってのことで、そのお気持ちは本当にありがたい、心からそう思うのですが…。

積み重なる洗濯物と義母の善意

問題は、義母は自分たちの洗濯物と同じように、洗った服をきっちりとたたんでくれるということです。しかも、息子の服も娘の服も私たち夫婦の服も一緒くた、順番もバラバラに…。

 

この結果がどうなるのかというと、義母が洗ってくれた服をいつものように吊るして収納しようとすると、一度きちんと畳まれた服を再びハンガーにかけ、それぞれ個人のハンガーラックに仕分ける…という作業が必要になってきます。

 

いや、たいした手間ではないといえばその通りなのですが、その作業の背後に漂う、ぬぐいきれない徒労感がなんとも…私だけでなく夫や子どもたちも同様なようで、義母がせっかく洗って乾かしてたたんでくれた衣類は、部屋の隅で積み重なったまま死蔵しがちになるのです。

 

ハンガーにかけたまま渡してほしい、でなければ洗わないでほしい、とやんわりとお願いしても、頑なに洗濯物を洗い、そしてたたみ続ける義母。

 

これはもはや、義母と私、たたむべきかたたまざるべきか、二つの洗濯流儀のぶつかり合いなのでは…と最近ではすっかりあきらめの境地です。

某大手メーカーによって混迷する家族の衣類

さらに、二人の子どもたちが成長し、服のサイズが大人とほとんど変わらなくなったことで発生する新たな問題もあります。

 

明らかに子ども服だとひと目でわかるころはよかったのですが、最近では子どもたちの服も大人の服も、ぱっと見ではサイズの見分けがつきません。

 

さらに混迷を深めているのが某・超メジャーな巨大アパレルメーカーの存在です。

 

老若男女問わずに愛用できるシンプルなデザインと豊富なサイズ展開に加え、何よりお手頃価格なので、我が家の6人全員が愛用しているのです。それはつまり、似たようなデザインの洋服がひとつ屋根の下に大量に存在するということ。

 

私たち子世帯4人と義父母の洗濯は別々にしているのですが、それでも最近では息子と夫、そして義母と娘の洋服のサイズがほぼ同じになり、この無地の白Tシャツは誰のだ?ウエストが〇インチのジーンズは夫だっけ息子だっけ?メンズSサイズだと思ったらレディースだ?などと、洗濯のたびに混乱が生じているのです。

数年ぶりに発掘された義母の服

先日は、娘のハンガーラックの奥のほうに見慣れないシャツがかかっていたので、こんなの持ってたっけ?と娘に聞いても知らない、という返事。私のサイズではないし…と義母に聞いてみると、なんと

 

「これどこにあったの?私が何年も前に買って、すぐどこかに行っちゃって探してたのよ」

 

という返事でした。

 

つまりこのシャツ、義母が買ってすぐに子世帯の洗濯ものに紛れ込み、さらに誰かの勘違いで娘のハンガーラックに掛けられ、そしてそれを特に気にしない娘がどんどんラックの奥に押しやっていき…というドミノ倒しのような多重ミスによって、数年単位で我が家の洋服の地層に埋もれる羽目になっていたのでした…。

 

そして今日もまた、私の洋服のクローゼットからは、明らかに娘のものであるスカートが一枚発掘されました。これは洋服のサイズ感の把握にやや難のある夫の仕業に違いありません。

 

しかし私も人のことは言えません。息子と夫が着ている同じサイズ、同じ型のシャツ、見分けがつくように色で買い分けたはずなのですが、カーキ色が息子だったか、グレーが夫だったか…。

 

もはや記憶が定かでないため、ごく適当に二人のクローゼットに振り分けました。

 

こうして、我が家の洗濯物の混迷は深まるばかりです。

文/甘木サカヱ イラスト/ホリナルミ