終業時刻を過ぎてから明日の業務に変更があり、至急連絡をしたいときや、本日が締め切りで残業してでも対応したいとき、何らかの事情で翌営業日の午前中にメールを送れないとき…。夜の時間帯にメールを送ってもよいのか、送るときはどのような言葉を添えればよいのか迷うこともあるかもしれません。
一般的なビジネスシーンでは、何時までメールを送ってよい時間帯となるのでしょうか。送信時間や夜に送るメールの挨拶のフレーズについて、日本ビジネスメール協会の直井章子さんに解説していただきます。
メールは基本的に勤務時間内に送るのがマナー
メールを送る時間について迷ったときは、勤務時間を基準として考えてみましょう。基本的には、業務連絡は勤務時間内にするべきというのが前提にあります。
仕事のメールは勤務時間内で処理をするのが基本
しかし、緊急時や、期日なのでどうしてもメールを送る必要がある場合、一般的に許容されるのは終業時刻から2時間くらいと考えておきましょう。相手が9時~17時勤務の場合は、遅くとも19時くらいまでに送るとよいでしょう。
許容される時間を過ぎてメールを送ってしまうと、「こんな遅い時間まで仕事をしているなんて、労働環境は大丈夫なのだろうか」といらぬ心配をかけたり、会社の評判に影響したりするかもしれません。
また、遅い時間でも対応するのが当たり前になると、相手が自分の都合で返信を求めるようになる可能性も。のちに無理を強いられることがないよう、特別な場合以外は勤務時間外のメールは控えましょう。
勤務時間は、職種や業種、会社によって異なることも忘れずに
ただ、別の会社の相手に自分の常識や勤務時間をあてはめて考えてしまうと、誤解が生じてしまうことも。
そうならないために、普段のコミュニケーションの中で、相手の勤務時間を確認したり、メールの対応可能時間についての認識をすりあわせたりしておくとよいでしょう。
緊急事態であれば、まずは電話をかけます。併せて許容される時間を越えてからメールを送る場合は、「夜分遅くに失礼いたします」といった挨拶を添えます。
勤務時間外にメールを送るときに確認するポイント
次に、勤務時間外にメールを送るときの判断基準や注意点について紹介します。
いま送らなければならないメールか
たとえば、勤務時間外でも緊急で連絡が必要なとき。
翌営業日の始業時刻に連絡をするのでは間に合わない場合は、時間外でも連絡をする必要があるでしょう。いまメールを送らないと相手に迷惑をかけることになるかどうかといった状況判断が大切です。
また、勤務時間外のメール送付は、相手がメールを確認できるとは限りません。急ぎの用なら電話連絡もあわせて行うなど、いますぐ確実に伝える工夫が必要です。
お互いに遅くまで仕事をしているという共通認識があるか
自分と相手の間で夜が業務時間であり、共通認識がある関係性の相手なら、夜の時間帯にメールを送っても失礼にならないケースもあります。
ただ、よほどの特別な事情がなければ遅くにメールを送ることは控えたほうがよいでしょう。
期日に関しても人によって解釈はさまざまです。「今日中」という表現も、終業時刻にあわせて17時までと考える人もいれば、18時までと考える人もいるため、毎日の業務の中で確認をおこない、認識の相違がないようにしたいですね。
夜に送るメールの挨拶に使うフレーズ
やむを得ず夜の時間帯にメールを送る場合は、遅い時間や勤務時間外にメールを送ることに対するお詫びのひとことを冒頭の挨拶に加えるのがマナーです。
「夜分遅くに申し訳ありません」
「夜分」は夜の改まった表現です。
終業時刻から数時間が経過しているなど、一般的に許容されると思われる時間を越えていると感じたら、「夜分遅くに申し訳ありません」とお詫びのひとことを加えておきましょう。
さらに、なぜこの時間にメールをすることになったのかもあわせて相手に伝えます。
たとえば、「夜分遅くに申し訳ありません。〇〇社のシステムで障害が発生し、先方より連絡があったため急ぎで連絡いたしました」と状況を添えるとよいでしょう。
相手からの返信が必要な用件の場合は、メールを確認次第すぐに連絡が欲しいのか、翌営業日でよいのかなどの希望も書いておくと、相手が対応しやすくなります。
「勤務時間外に申し訳ありません」
勤務時間外にメールを送ることで相手に迷惑をかけるときは「勤務時間外に申し訳ありません」とひとこと添えておきましょう。
「勤務時間外に申し訳ありません。明日の午前中に予定していた打ち合わせの時間について、変更をお願いしたく連絡いたしました」など、急ぎでメールを送った理由を添えます。
翌営業日にもあらためて連絡するときはその旨もあわせて伝え、必要以上に相手を急かさないよう気をつけられるといいですね。
大切なのは普段の密なコミュニケーション
何時までメールを送ってよいのか、勤務時間が何時までなのかは、相手によっても異なります。
普段のコミュニケーションの中で、相手の勤務時間を把握したり、期日について認識にズレがないようしっかり確認したりすることを心掛けておくと、夜の時間帯にメールを送ってよいか迷ったときもスムーズに判断ができるでしょう。
なるべく遅い時間帯の連絡はせずに済むよう、日々の仕事を進めていけるとよいですね。
PROFILE 直井章子(なおいしょうこ)
ビジネスメール教育の専門家。一般社団法人日本ビジネスメール協会専任講師。同協会にて、ビジネスメールの教育研修プログラムの開発、実態調査や検定試験に携わり、研修やセミナーでの講演、執筆など活動は多岐に渡る。著書・監修本に『このフレーズが決め手! 伝わるモノの書き方のコツ』(ナツメ社)、『カリスマ講師に学ぶ!実践ビジネスメール教室』(日経BP社)、『ビジネスメールの常識・非常識』(日経BP社)がある。
取材・構成/水谷映美