職場の上司、いつも遠くに座っているけど偉い人だし、話しかけた方がいいのだろうか。それとも、話しかけない方が良いのだろうか。でも人生で関わる人は限られているのだから、せっかく会ったのに、お互いを知らないままに終わるのはもったいない。コミュニケーションのコンサルティングを行う吉原珠央さんに職場の上司、偉い人と話すことについて聞いてみました。
話しかける意図は明確に
── 30〜40代の中堅社員になってくると、会社規模によっては幹部や経営陣とも話す機会が増えます。でも、偉い人と話すときってやっぱり緊張してしまいます。
吉原さん:
誰でも緊張するものですが、社会的に立場がある方は、実は話しかけて欲しいと思っていることが多いんです。人生の大先輩であり、苦労もされてきているので、その話を伝えたい、誰かに聞いて欲しいと思うものです。
相手の都合もあるので、業務中にとめどない話をするわけにはいきませんが「取引先の●●さんにお会いするにあたり、お聞きしたいことが2つあるのですが、よろしいでしょうか?」と意図を明確にしたうえで接すれば、相手は喜んで答えてくれると思います。
また、単純に質問をするだけではなく、「財務の勉強をしているのですが、おすすめの本がありましたらぜひ教えていただけますか?」などと話しかけると積極性があると思われる可能性があります。
「おこがましいかもしれませんが」と聞いてみる
── 直属の上司はともかく、普段接点の少ないそれ以上の立場の方だと、ちょっと勇気がいるかもしれません。
吉原さん:
もし躊躇するようであれば、「私がこんなことを聞くのはおこがましいかもしれませんが」と断りを入れてみてはいかがでしょう。
例えば、工場長がオーナーと会う機会が毎日あっても、聞いてみたいことがあれば「唐突ですが」と言って改めて聞いてみるのも大事です。
野心がある人はちょこちょこ聞いてみられたらいいですし、たまにそういうことを聞いてくれる後輩がいたら嬉しいですよ。
パワハラ気味の上司には「おうむ返し作戦」で
── いっぽう、昨今、企業のハラスメント対策は進んでいるとはいえ、いまだにパワハラのような対応をする上司もいますよね。
吉原さん:
精神疾患を招くようなレベルであれば、然るべき部署に相談をすべきです。
そこまでではなくとも、攻撃的な言葉を放つ人には、「今、抱えているタスクのなかで、優先的にすべき業務はこちらでよろしいでしょうか?」と筋道を見せて話を変えていくことが大切です。
また、ワンクッション置いて、ボソッと「おうむ返し」をする方法が有効です。
知人の後輩が失敗したとき、上司に「犬以下だな」と言われたと相談を受けたのです。まともな人は受け止めてショックを受けてしまうけれど、まさか言わないよね、と思い、「いぬ、いか、」と繰り返したそうです。
すると、その上司も自分の言った言葉をおうむ返しで人から聞くと、インパクトが大きく、客観的に自分はそんなひどいことを言っていたのかと気づいて冷静になってくれたそうです。
これはパワハラにあたる話なので個人で対処する必要はありませんが…、人は急に予測をしていないことを言われたときに、思いつきでは対処できないということです。普段、冷静になっているときに対策を考えておくと、いざ、相手が怒り出したときにもスムーズに対処できますよ。
── ひどいケースがあれば、然るべきところに相談しつつ、おうむ返しなどの対処も取りたいですね。
PROFILE 吉原珠央
取材・文/天野佳代子