取引先から対応が難しい依頼をされたときや、興味のない商品を営業されたとき、断りメールの書き方に悩むこともあるかもしれません。今後の関係に影響を与えないためにはどのような断り方をすべきか、丁寧な印象の言葉をどう選べばよいかは、多くの方が迷うポイント。
ビジネスシーンで押さえておきたいスマートな断り方やマナーについて、日本ビジネスメール協会の直井章子さんに解説していただきます。
目次
断りメールのマナーで大切なのは気遣いを忘れないこと
断りのメールでは「断る意思をはっきりと伝えること」、そして「断ったあとにどういう関係でいたいかを考えて書くこと」が大切です。
断った先に相手とどうなっていきたいかという目的を頭におきながら言葉を選ぶと、自然と使うフレーズも決まってくるでしょう。
ビジネスにおける断りのシーンには、大まかに分けてふたつの種類があります。
ひとつは、すでに知っている相手である取引先などからの依頼や提案を断る場合。もうひとつは、知らない相手からの提案を断る場合です。
取引先などからの依頼や提案を断る場合は、今後の関係に影響しないよう、丁寧な断り方をしたいと思う方が多いのではないでしょうか。
知らない相手からの営業を断る場合は、相手によっては関係の継続を望まないこともあるかもしれませんが、さまざまなつながりが影響するビジネスにおいては、どこでどういうご縁があるかわかりません。
どちらの場合でも、明確に断りの意思を伝えるとともに、気遣いを忘れないようにしましょう。
丁寧な断りメールの構成と書き方のポイント
断りメールの構成に悩む場合は、3つのポイントを押さえて考えていくとよいでしょう。
まずは感謝の気持ちを伝える
メール本文の冒頭に挨拶と自己紹介を書いたら、まずは依頼や提案をもらったことに対して感謝の気持ちを伝えます。
- このたびは〇〇のお見積もりをいただきましてありがとうございます
- このたびは貴社サービスの詳細についてご案内ありがとうございました
丁寧な印象を与える第一歩として、お礼の言葉は欠かさないようにしましょう。
次に断る意思と理由を明確に
断りメールで一番大切なポイントである、断る意思と理由を明確に伝えます。
- 社内で検討を重ねた結果、誠に残念ではございますが、費用の面で折り合いがつかず見送らせていただくこととなりました
- 現在、お客様からのご注文に弊社の生産が間に合っておらず、お受けいたしかねる状況です
- 過去お支払いいただけなかった経緯があるため、今回のご依頼は辞退いたします
大事なのは、自分だけの見解ではなく、会社としての判断で断ることがきちんと伝わる言葉を選ぶことです。
断る理由を明確に伝えると、相手が納得しやすく、また次の機会につながることもあるかもしれません。
ただし、理由をどこまで開示するかは、相手と今後どういう関係でいたいかにもよるため、状況に応じて考えましょう。
相手への配慮の言葉を添える
ストレートに断るだけでは配慮が足りない印象を与えてしまうため、心遣いも忘れずに。
- 事情をお察しいただき、ご了承いただければ幸いです
- ご期待に沿えず申し訳ございません
今後も良好な関係を継続していきたいと望む相手には、今回は断る理由を添えたうえで「またの機会にぜひお願いいたします」と未来への期待を伝える言葉を続けてもよいでしょう。
断りメールに活用できる「クッション言葉」
断りをメールの文面だけで伝えるときは、声色や表情で印象をやわらかくできる電話や対面と比較すると、冷たい印象になってしまうことも。
そういった場合は、断るという行為で相手が受ける衝撃をやわらげる「クッション言葉」を使うと、相手への気遣いを伝えることができます。
- ありがたいお話ではございますが
- 身に余るお話ではありますが
- せっかくのお話ですが
- 大変恐縮ではございますが
- まことに不本意ではございますが
心を尽くして対応している印象を与えることができるクッション言葉ですが、過剰な謙遜や思ってもいないことを書く必要はありません。
あくまでも自分の気持ちに添った誠実な言葉を選ぶようにしましょう。
断りメールの代表的な4つのフレーズ
相手に断りの意思を伝えるフレーズには、どのようなものがあるのでしょうか。4つの代表的なフレーズを紹介します。
「お断りいたします」
ストレートに断りの意思が伝わる言葉ですが、きつい印象を与えることもあります。
一方的な営業の提案を、正当な理由があってきっぱりと断る場合などに使われます。
「ご要望には沿いかねます」
取引先などからの要求に対して断るときのフレーズです。
「かねる」は「できない」のやわらかな言い方です。「お引き受けいたしかねます」などのように使います。
「見送らせていただきます」
「先送りする」というニュアンスもある言葉です。
「次回以降は引き受ける可能性がある」ときは、そのことを添えてもよいでしょう。
「辞退させていただきます」
遠慮して断りたいときに使うフレーズです。
なぜ辞退するのかという理由を相手に伝えるのがマナーです。
印象のよい丁寧なメールで誠実な断り方を
断りをメールで伝えるときは、相手と今後どのような関係を築いていきたいかを考えたうえで、はっきりストレートに断るフレーズや、次回への可能性を感じさせるやわらかいフレーズを選択しましょう。
誠実な文章で、相手が納得できる断り方や、今後もよい関係を継続していけるような伝え方ができるといいですね。
PROFILE 直井章子(なおいしょうこ)
ビジネスメール教育の専門家。一般社団法人日本ビジネスメール協会専任講師。同協会にて、ビジネスメールの教育研修プログラムの開発、実態調査や検定試験に携わり、研修やセミナーでの講演、執筆など活動は多岐に渡る。著書・監修本に『このフレーズが決め手! 伝わるモノの書き方のコツ』(ナツメ社)、『カリスマ講師に学ぶ!実践ビジネスメール教室』(日経BP社)、『ビジネスメールの常識・非常識』(日経BP社)がある。
取材・構成/水谷映美