ビジネスメールを送るときに必ず入力する「宛先」。そこで目にする「TO」「CC」「BCC」の違いがよくわからない…という方もいるのではないでしょうか。
プライベートではなかなか使用する機会が少ないものですが、ビジネスでメールのコミュニケーションを円滑に進めるために、しっかりとマスターしておきましょう。
目次
メールの宛先「TO」「CC」「BCC」意味と正しい使い方は?
基本的なメーラーの宛先にあるのは、「TO」「CC」「BCC」の3種類。どれを使っても、指定した相手にメールが届きます。
ただし、それぞれ役割が違うので、正しく理解しておかないと思わぬトラブルを招く危険が。
特に、「CC」と「BCC」の使い方には、注意が必要です。
メールを受け取った相手に失礼にならないよう、そして不快な思いをさせないためにも、それぞれの役割と注意点を確認していきましょう。
メインの送信先「TO」
「TO」は、メールの主な送信先であり、いわば「あなたに送っていますよ」というサイン。通常は、ここに送りたい相手のメールアドレスを入力します。
また、「TO」に指定されているメールアドレスは、そのメールを受信した人すべてに表示されます。
「TO」に複数入力する場合のテクニック
メールの「TO」には複数人のアドレス入力が可能です。たとえば、同じプロジェクトを進めるメンバーが自分を含めて4人いる場合、3人のアドレスを「TO」に入れて、随時プロジェクトの進捗状況を共有することができます。
ただし、「TO」で受け取った人には返信する責任が生じます。そのため、返信を求めるのか、情報を共有するのみなのかを明確にしておくことが大切です。
目的に応じて、プロジェクトに中心となって携わる人を「TO」、サポートする人はこの後説明する「CC」とするなど使い分けるとよいでしょう。
「TO」で受け取ったメールにはリアクションを
「TO」には返事が欲しい相手を指定します。自分が「TO」でメールを受け取った場合は、必ず返信するなどしてリアクションをするのがマナー。
忙しいときは特に、メールを読んでそのままスルーしてしまうことも少なくありません。しかしながら、メールが届いているか、開封されているか、不安になってしまう経験は誰にでもあるもの。
さらに、メールの返信は早いと相手に好印象を与えます。素早い対応は、仕事ぶりの評価や、相手との信頼関係構築につながります。
ちなみに、「返信」と「全員返信」では送り先が変わります。「返信」は送信者のみ、「全員返信」は、自分以外の「TO」や後ほど説明する「CC」に入っている受信者を含めた全員に返信となります。
同じメールを複数に送る「CC」
「CC」とはCarbon Copy(カーボンコピー)の略、つまり「複写」を意味します。わかりやすく言うと、「TO」に指定された人に届くメールと同じものが、「CC」に指定された人にも届く仕組みです。
たとえば、プロジェクトをいっしょに進めるメンバーに、進捗状況を報告するときなどに使用します。メールの内容を報告したい人のアドレスを「CC」に指定しておくと、「今、このような状況です」「先方へこんな依頼をしているので、確認をお願いします」という意味合いに。
上司を「CC」に入れておくと、別途報告メールを送るよりもずっと効率がよく、相手とのやり取りが肌感覚でつかんでもらえるというメリットもあります。
「CC」で受け取ったメールへの返信は必要なし
「CC」で受け取ったメールへの返信は、何らかの返信が必要な「TO」で受け取るメールと違い、内容を読んで把握しておくだけでよいとされています。
「TO」での受信者の代わりに「CC」でメールを受け取った人が返信する必要があるときは、理由をそえて返信することもありますが、基本的に返信の義務はありません。
「CC」は、お互いにアドレスがわかってもいいことが条件
「TO」と「CC」に指定したアドレスは、メールを受信したすべての方に対して表示されるため、お互いに名刺交換をしていない、面識がない人同士を指定してしまうと、トラブルになりかねません。
もしも、お互いに面識がないけれど、プロジェクトを進めるうえで「CC」に入れたいメンバーがいる場合は、事前の打ち合わせや最初のメールなどで、「今後メールのやり取りには、サポートとして〇〇をCCに加えて進めさせてください」と一言伝えておくと丁寧です。
お互いが気持ちよく仕事を進められるコツを押さえておくと、相手の印象もグッとアップするもの。そういった気遣いを込めることも大切なポイントです。
こっそりメールを共有したいときに使う「BCC」
最後に、Blind Carbon Copy(ブラインドカーボンコピー)の略表示の「BCC」。「CC」との違いは、「BCC」に指定した相手が、「TO」や「CC」で送られた人には見えないという点にあります。
お互いのメールアドレスを知らない大勢に一斉送信したい場合などに使用されます。
「BCC」と「CC」の間違いに注意
とはいえ、使い方を誤ると大きなトラブルになってしまう恐れがあり、扱いに注意が必要なのが「BCC」。
たとえば、顧客宛てに夏季休暇の連絡を一斉メールで送る場合、「BCC」で送るべきところを「CC」にアドレスを入力してしまうと、顧客同士のメールアドレスがすべて表示されることになってしまいます。
結果、個人情報の漏洩になり、大きなトラブルを招いてしまったという実際のケースも少なくありません。
「BCC」で受信したメールには返信しない
原則、「BCC」でメールを受け取った人は返信をしません。
たとえば、Aさんが「TO」でBさん、「CC」でCさん、そして「BCC」でDさんにメールを送った場合で考えてみましょう。
このとき、Dさんが「全員に返信」を選択して返信してしまうと、そのメールがBさん、Cさんにも送信されてしまうことに。もちろん、BさんとCさんは、Dさんが「BCC」でメールを受け取っていることを知らないので、大問題に発展する可能性もあります。
トラブル防止のためにも、「BCC」を使う場合は、送る側も受け取る側も十分に注意が必要だと覚えておきましょう。
使える!メールの宛先のマナーとテクニック
それぞれの宛先の意味と使い方がわかったところで、もうワンランク上を目指す場合の、マナーとテクニックをご紹介します。
宛先に入れる順番はどうする?
「TO」や「CC」に複数人を指定する場合、順番はどうしたらいいか迷うこともあるのではないでしょうか?「BCC」に指定されている人の名前やアドレスは見えませんが、それ以外はすべて表示されるので、中には並び順を気にするという人も。
ただ、並び順はメールソフトによって変わることがあります。たとえば、役職の順にメールアドレスを指定しても、相手の受信環境では、その並び順が変わっている可能性もあります。そのため、順番を気にする必要はありません。
本文冒頭で「CC」がわかる工夫をする
宛名についても誰に送っているメールなのか、明確にわかる工夫を施すのもポイントです。
受け取ったメールについて、自分以外の宛先に誰が入っているかまで確認しないこともあるでしょう。また、名前で表示される場合はいいですが、アドレスがそのまま表示される場合は、各アドレスが一体誰のものかわからないことも。
さらに、「TO」で受け取った人が、ほかに「CC」の人がいることに気づかず、全員返信を選択せずに個別で返信してしまうケースもあるでしょう。情報を共有したくてメールを送っているのに、全員に情報がシェアされないのは困りますよね。
それを防ぐためには、メール本文の最初に、 〇〇様
(CC:〇〇様)
としておくと、より丁寧なメールの印象に。これなら、受け取った人は、自分以外の誰にメールが共有されているのかが一目瞭然です。
また、「CC」に指定されている人数が多い場合は、「CC:関係者各位」などと記載することもできます。
メールを受け取る相手の立場を考えながら、わかりやすい表記を考えるとよいでしょう。
ビジネスメールの宛先をうまく使い分けて、良好なコミュニケーションを
宛先は、指定間違いがないのはもちろんですが、目的に応じて正しく使えば、仕事もスムーズに進みます。
「TO」「CC」「BCC」の正しい意味と使い方を知り、ビジネスにおけるコミュニケーションスキルを磨いていきましょう。
PROFILE 直井章子(なおいしょうこ)
ビジネスメール教育の専門家。一般社団法人日本ビジネスメール協会専任講師。同協会にて、ビジネスメールの教育研修プログラムの開発、実態調査や検定試験に携わり、研修やセミナーでの講演、執筆など活動は多岐に渡る。著書・監修本に『このフレーズが決め手! 伝わるモノの書き方のコツ』(ナツメ社)、『カリスマ講師に学ぶ!実践ビジネスメール教室』(日経BP社)、『ビジネスメールの常識・非常識』(日経BP社)がある。
取材・構成/水谷映美