2021年1月、新型コロナウイルス感染の第3波で各地に緊急事態宣言が出されましたが、2020年春とは異なり一斉休校・休園は実施されませんでした。

 

しかし入試や受験を前にしたこの時期、家庭の判断で自主的に学校を休む「自主休校」を選ぶ子も増えているといいます。

 

感染を警戒して自主休校したら成績や学力への影響はどうなるのか、不安で「どうしたらいいのか分からない…」という声が高まる中、現状や課題を整理してみました。

自主休校、これまでの状況と現状

まずは、お子さんが公立校に在学中のママを中心に聞き取りし、これまでの状況と現状を確認してみました。

小学校と中学校受験

実は、中学校受験をする小学校6年生においては、コロナ以前から3学期に学校を休むことは珍しくありませんでした。

 

小学校では例年インフルエンザが流行する時期で、もしも感染して中学の入学試験が受けられなくても代替の試験日などは用意されていないからです。

 

現在は、例年同様に自主休校する6年生に加え、中学受験しない子や他学年にも感染防止のために休校する子が出てきているそうです。

 

「うちの子は中学受験はしませんが、クラスでは日によっては1/3近く休校していて、できるなら休ませたいです。子どもも、休む子がこんなにいる中で私は登校して大丈夫なの?と不安になるでしょうし。ただ、中学受験などの理由があれば迷わないのでしょうが、なかなか踏み切れず…」(Jさん・東京都在住・小学校6年生のママ)

 

と迷う人も。

中学校と高校受験

高校受験では基本的に、入試当日のテストの点数と中学校での学業や活動を評価した「内申書(調査書)」の点数を合わせて合否が決まります。

 

地域や学校によっては中3の3学期の成績も内申書に反映されるため、1月に自主休校すると内申で不利になるのでは?と心配する親子も多いはず。

 

しかし、中3のお子さんがいるYさん(福岡県在住)は、内申にかかわらず迷いがあるといいます。

 

「息子の中学では内申点は2学期までとされているので、3学期は自主休校しても内申点には響きません。でも本人は、クラスで誰も休んでいないし、高校でおそらくバラバラになる友達と過ごせる最後の2か月を休みたくないとのことで、感染対策をいっそう厳重にして通わせるしかないのかな…と思っています」

 

と、複雑な胸の内を明かしてくれました。

高校生と大学受験

高校の場合、高3の3学期は学年末テスト以外はほとんど自由登校という学校も少なくありません。

 

特に進学校では、1月以降は卒業式まで数えるほどしか登校しないことも多く、コロナ禍での自主休校はおもに1~2年生が迷っているケースが多いようです。

 

しかしSNSでは「学年で自分だけが自主休校中です」など、高校生本人とみられる投稿もあり、不安でもすぐには休校に踏み切れないようすが見て取れます。

自主休校は欠席扱いになるのか

2020年の全国一斉休校からの登校再開後も、コロナ感染が不安で休校したい場合は「欠席」とせず、出席停止扱いとされていました。

 

現在も文部科学省では「家族の疾患がある・地域で感染が広がっているなど、やむを得ない場合には学校長の判断により欠席扱いにしないことができる」と各都道府県教委に通知しているということです。

自主休校には課題も

さまざまな事情から自主休校を選んだ場合でも、課題はたくさんあります。

オンライン授業体制がまだ整っていない

授業のオンライン体制が完備していれば、基本的には自主休校しても、大きく学力差はつかないと考えられます。

 

しかし、オンライン化はまだ地域や学校ごとにばらつきがあり、体制の整っていないところでは、プリントを受け取って提出するだけだったり、音楽や体育などの実技に参加できず成績が低く評価されるなどの懸念もあります。

子どもの心身への影響

学力だけでなく、登下校や体育・休み時間など学校での運動量と休校中とでは大きく異なり、体力低下も心配されます。

 

将来の骨折や骨粗鬆症予防の決め手となる「骨密度」は、成長期の運動量によって決まるため「極力、なわとびやエクササイズ動画を見て親子で運動しています」と気を配っている人も多いようです。

 

メンタル面でも、子ども自身に感染の不安がある場合は休校することでホッとできて有益ですが、本心では「学校に行きたい」と感じているときに、納得できないまま休ませると、友達が登校しているのを見て落ち込んだり、後ろめたく感じたり…という可能性も。

 

中2のお子さんがいるFさん(神奈川県在住)は次のような心配もしています。

 

「中学生だから留守番はできるので私は出勤可能ですが、ふだん、週末は夜遅くまで起きていて朝起きないんです。休校させたら毎日そんな風にダラダラと過ごしてしまうのでは…と生活リズムが心配です」

心ない批判やうわさも

周りに自主休校する子が少ない中で長期間休むと、「コロナに感染したのではないか」「ズル休みではないか」などと批判されたり、噂になることがあるかもしれません。

 

学校・登校している子の保護者とも、自主的に休む子に対する偏見が生まれないよう心がけていく必要があります。

おわりに

今回、公的なデータはまだ揃っていませんが、聞き取りによる印象では、緊急事態宣言が出ている都道府県とそうでないところ、また感染者数の多寡によって、自主休校を検討する家庭の割合が異なるように感じます。

 

しかし、各家庭や子ども自身の事情はそれぞれ異なり、登校するにも休校するにもリスクがあり、今は「これが正解」とは誰にも言えない状態です。

 

受験を控えた子の家庭はもちろん、すべての家庭で、できるだけ最新の正しい知識を把握するとともに、登校するにしても休校するにしても、子どもの気持ちをしっかり聞いて、それに寄り添った判断をしていくことが望まれます。

 

文/高谷みえこ
参照/文部科学省「学校における新型コロナウイルス感染症に関する衛生管理マニュアル」 https://www.mext.go.jp/content/20201203-mxt_kouhou01-000004520_01.pdf
桜花学園大学保育学部研究紀要 第17号「幼児の骨密度と身体特性、食事、身体運動との関連性」 https://core.ac.uk/download/pdf/268407537.pdf