文句封じの必殺手作りおせち
そんなことを数年間繰り返し、私はつくづく、文句を言われるために数万円を支払っているようなおせちの外注に嫌気がさしました。
そうして決心したのです。おせち、これからは毎年私が作る。と。
もともと料理は嫌いではありませんが、おせちづくりの大変さは別格です。
数週間前から計画を立てて、年末年始の割高価格になる前に材料を少しずつ買いそろえ、下ごしらえして冷凍したり、毎日黒豆に火を通したり…材料費だけでいえば外注よりもお得だけれど、作る手間を考えたら決して劇的に安いわけではありません。
そんな同居嫁の台所での苦労を、忙しい歳末の数日間、存分に見せつけておいて、さあどうだ!と出すおせち。これにはさすがに義父母も文句のつけようもありません。
手作りおせちの第一の利点が「文句を言われない」というのが我ながら実に後ろ向きだなぁと思うのですが、メリットはほかにもたくさんあります。
手作りおせちの「後ろ向きじゃない」甘木的メリット
まず、正月に不足しがちな野菜料理をたっぷりと入れることができるということ。私は毎年、鍋にいっぱいの量のお煮しめや炒り鶏を作って、お重の一番下にみっちりと詰めます。
そして何より、手作りおせちは「詰め足し」ができるのです!
既製のおせちは、元旦の昼に箸をつけてしまえば、その日の夜にはどうしても「食べ残し感」が出てしまいます。しかし手作りおせちならば、空いたすき間にどんどん料理を詰め足すことができ、結果として三が日まで、ほとんどおせちとお雑煮で押し切ることが可能です。さすがに自分も飽きてくるので、たまに外食など差しはさむのもいいですね…。
味付けを家族の好みに合わせられるのも利点です。冷蔵庫があるのですから、昔ながらの甘じょっぱい味付けにこだわる必要はありません。栗きんとんや紅白なます、伊達巻はさっぱりとした甘さで、昆布巻きも出汁をきかせた薄味に。たたきごぼうで繊維質を補い、ごまめは炒ったアーモンドを加えておつまみ風に。
こうして主婦が工夫に工夫をこらしたおせち、まずいとは言わせねぇ…!
そんな同居嫁の無言の圧を感じ取るのか、家族も手作りのおせちには数日続いても決して文句をつけません。
数万円出して徒労感を味わうか、数日間激務をつとめて称賛を得るか…
こんな究極の選択を、毎年味わっている同居嫁の年の瀬なのでした。皆さんもどうか、心穏やかな年末年始を迎えられますように…。
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文/甘木サカヱ イラスト/ホリナルミ