30年後の未来を占う

「60歳までに2000万円貯めなければ、将来の生活は苦しくなる」。昨年、金融庁が発表した報告書をきっかけに、そんなことが叫ばれるようになりました。いま30歳なら、あと30年後。住宅ローンや教育費の支払いを考えると、それまでに2000万円を貯めるのは大変そう…。

 

本当にそれだけ貯めなくてはいけないのでしょうか?それとも、もっと必要? 家計再生コンサルタントの横山光昭さんに、そんな疑問をぶつけてみました。

2000万円を貯める必要は本当にあるの?

老後資金に2000万円は本当に必要な額なのでしょうか?数字の出所は金融庁の「老後の収支のシミュレーション」の報告です。夫65歳以上・妻60歳以上の無職世帯の収入と支出を試算したところ、年金だけに頼る生活を送ると、毎月5万4520円の赤字になることがわかりました。

 

この赤字生活が60歳から80歳まで続くと、約1300万円、90歳まで続くと約1900万円不足する計算になります。この試算結果を「国」が明らかにしたことで、「本当に違いない」と一気に広まってしまいました。しかし、この数字を真に受ける必要はない、と私は考えています。

 

発表後、麻生太郎金融担当大臣も「単純な試算を示しただけで、そうではない人もたくさんいる」と言っていましたが、金融庁の試算は、あくまで一つのモデルに過ぎません。将来の家計の状況は人によって大きく異なります。

 

にもかかわらず、「60歳で2000万円」というキャッチーなワードに振り回されると、必要以上に不安になってしまい、良いことはありません。

 

将来に対して正しく危機感を持つためには、読者の皆さんが60歳を超えてからの収入と支出を試算してみることをおすすめします。

60歳以降に入ってくるお金が計算できる!

老後の収支を正確に算出するのは難しいですが、そこまで厳密な数字を出す必要はありません。ざっくり計算するだけでも、不足額がある程度リアルに見えてきます。

 

まずは収入から。「60歳以降は働いていない」仮定で、年金と退職金がいくらもらえるのかを調べましょう。

 

自分が受け取る年金を知るには、毎年、日本年金機構から送られてくる「ねんきん定期便」をチェック。これまで納付した保険料の金額と、それを踏まえた年金額が書かれています。夫婦の分を合算すれば、もらえる金額の目安がわかるはずです。

 

加えて、退職金も、老後の家計を大きく左右する大事なファクター。転職や早期退職など何が起こるかはわかりませんが、最大でいくら退職金が見込めるかを予想すれば、楽観的なシナリオと悲観的なシナリオの2つをシミュレーションできるでしょう。

 

一方、老後の支出に関しては、まず、今の支出を計算します。それをベースに、60歳以上になるとどの費目が減るかを考えて、数字を出してみましょう。

 

シミュレーションをするときは、多少、悲観的に考えた方が良いです。ただ、多くの場合は、住宅ローンや教育費がなくなったり、食費が下がるなど支出が減るはずです。

 

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