テレビなどの報道によると、新型コロナウイルス感染症の影響で休園休校や在宅勤務が増えた結果、マンションやアパートなど集合住宅を中心に騒音の苦情が急増しているといいます。

 

しかし、コロナの外出自粛期間に限らず、集合住宅と騒音問題は切っても切れない問題。

 

今回はマンションに住む子育て中のママたちに、体験談や対策などを聞かせてもらいました。

マンションの騒音トラブル体験談と原因

首都圏の都市で分譲マンションの4階に住んでいるSさん(38歳)には、小学校6年生と4年生のお子さんがいます。

 

新築時からもう13年住んでいるそうですが、あるとき、下の階の部屋を購入して引っ越してきた70代の夫婦に、入居3ヶ月頃から、子どもが部屋で暴れてうるさいと言われるようになったそう。

 

「それまで、外で会えばあいさつもしていて普通の方に見えたのですが、ある晩ご主人が突然訪ねてきて、ちょっと子どもの騒音をなんとかしてくれんかと言われました」

 

その時は子どもたちはソファに座ってゲームや漫画を見ていたのですが、Sさんは、これまでの毎日で瞬間的に走ったり音を立ててしまうことがあったかもしれないと思い、その場はおわびして気をつけますと答えたそうです。

 

「その後、子どもたちに話して、私もけっこう気をつけていたつもりなのですが…数日後にまた来られたんです。今度はかなり興奮していて。あんたらは若いから分からないだろうが、朝早く目が覚めるから、夜は9時には布団に入る、その真上で夜中まで飛んだり跳ねたりされたら具合が悪くなってしまうと…」

 

しかし、9時はともかく、Sさんのお子さんも10時には2人とも寝室に行くし、聞いてみると下の階で寝室にしている部屋の真上は、Sさん夫婦が使っていました。

 

「夫の帰りが遅いので、0時頃まで大人はリビングにいて寝室は無人のことも多々あるはずなのに…と」

 

本当にうちなのか?という疑問が沸きはじめてきたそうです。

 

「でもその数日後にまた訪ねてきて、今度は警察を呼ぶ、子どもを出せと騒ぎ始めました。子どもになにかされたら困ると焦りましたが、たまたま代休で夫がいたんですね。夫が出てきて、それじゃ夜中何時でもいいので、うるさい時に電話してください、確かめにいきますのでと言って帰ってもらったんです」

 

すると翌日の夜10時頃に、さっそく電話がかかってきたということ。

 

「そこで夫が階下を訪ねていき、こう言いました。”うちの子たちは今、祖父母宅に泊まりに行っています。部屋には妻が1人で座っていますが、たしかにどこかから、バタンバタンと聞こえますね”と」

 

その後、管理会社に連絡したところ、音の出どころは別の家からの足音だったということです。

マンションは思わぬ方向から音が伝わる

実は、マンションの構造は、鉄骨を組んだ上にコンクリートなどで壁を作っていて、内部には配管などが通る空洞があります。

 

そのため、隣接している上下左右の部屋だけでなく、斜め上や2階上など、離れたところから壁や天井・配管に反響した音が伝わることが非常に多いそう。

 

これを「太鼓現象」といいます。

 

足音だけではなく次のような音も太鼓現象の元となるそうです。

 

  • 家電製品(ロボット掃除機、食洗機、冷蔵庫の製氷機、オイルヒーター、ホームベーカリーなど)
  • 家庭用フィットネス用品、トレーニングマシン
  • ペット用品(熱帯魚水槽のモーターなど)
  • エアコン室外機

 

これらは、音が発生している部屋ではほとんど聞こえないくらいの小さな音である場合も多く、振動が伝わっていくうちに増幅されてドンドンと響き、「子どもがずっと走り回っている」と思い込んでしまうほど大きく聞こえるケースもあるそうです。

 

そのほか、子供が暴れていると勘違いされやすいものとしては、給排水用のパイプに急激な圧力がかかった時に、別の家で「ゴン」と壁を叩くような音として聞こえたり、床で重いものを引きずるような連続音が聞こえたりする「ウォーターハンマー現象」もあります。

 

多くの世帯がお風呂やトイレを使うマンションでは、夜中に何時間も騒音が続くことも。

 

また、最近のマンションは気密性が高いため、窓や扉を閉め切った状態で換気扇のスイッチを入れると、わずかな隙間から空気が入って高い音が鳴り、「どこかの家の子が笛をピーピー鳴らしている」とクレームになった事案もあります。

マンションで騒音トラブルを防ぐための対策とは

上記のように、子どもが騒音を出していないにも関わらず苦情が出るケースもありますが、そもそも子どもが活発に動き回るのは自然なこと。時には本当に階下や近所に迷惑をかけてしまうこともありますよね。

 

そこで、マンションやアパートに住むママたちに対策としてやっていることを教えてもらいました。

 

「去年生まれた子がもうすぐ1歳です。これから歩き始めるので、まだ苦情を言われたことはないですが、床の防音を考えています。賃貸で工事はできないので、ママ友にすすめられた、防音マットの上にタイル式のフロアクッションを並べる方法を考えています。転んだ時にも頭を守ってくれそうですし」(Yさん・29歳)

 

「丘陵地にあるアパートで、ベランダのすぐ前にコンクリートの斜面が迫っています。窓を開けていると、リビングでの話し声や食器の音などが反響して、話の内容まで全部聞こえてしまうほど。うちは5歳と3歳の子がいるので、窓を閉めていても声が響きそうで、防音カーテンを買いました。窓のサッシのすきまにもクッションテープを貼っておくと音漏れが軽減されるみたいです(夫と交互に外に出て確認済み)」(Hさん・34歳)

 

「うちはマンションの2階で、5歳と1歳の子どもがいます。真上の3階のお宅にも小学生のお子さんが1人いて、叱られると泣きながら全力で地団太を踏むので、窓から泣き声が聞こえてくると、そのあとは柱がビリビリするするほどの騒音を覚悟しないといけません。よく下の子がびっくりしてお昼寝から起きてしまうほど…。でも、反面教師として、1階のご夫婦には迷惑をかけないよう気をつけ、いつもあいさつや”うるさくないでしょうか?”と声をかけさせてもらっています。え?上の階からは、一度も何も言われたことないです(笑)」(Uさん・33歳)

騒音対策は、便利グッズを活用するなど工夫して対応を

新型コロナウイルスによる休園・休校のあいだ、公園には使用禁止のテープが貼られて子どもを外にも連れていけず、リモートワークがあるから付きっきりで家遊びもできず、騒音を出さないよう気を使い、八方ふさがり…という人も多かったのではないでしょうか。

 

しっかりと対策をして、子どもにもよく言い聞かせているのに苦情が…という場合は、今回の記事で紹介したような意外な原因が隠れているかもしれません。参考になれば幸いです。

 

文/高谷みえこ ※画像はイメージです。