『日々猫だらけ ときどき小鳥』の表紙

 

—— では最後の質問です。あさのさんにとって「本を書くこと」とは?

 

あさのさん 

30歳のときに絵本を描いたのですが、ちょうど「私の価値ってなんだろう」と考えていた時期でした。選ばれたり比較されることが多い声優の仕事とはまた違って、書くことは「、」や「。」など句読点に至るまで全部自分が出るもの。同じテーマを与えられても、絶対同じものにならないことが素敵だなと感じました。

 

宮下さん 

書く仕事ってひとりで全て完結できるところに幸せを感じますよね。

 

あさのさん 

良くも悪くも自分にしかできない。どう転んでも自分が出るものだから、「私ってなんだろう」と自分を見失う事のない作業だと思います。「私の価値って」という考えから解放されるのがうれしいんですよね。

 

宮下さん 

でも、忙しいから書く時間ないでしょう?

 

あさのさん 

いえ、むしろ増やしていきたいと思っています。夫と比べると自分はぼーっとしているなって感じることが多いんです。

 

宮下さん 

忙しい職業の人と比べるとそう感じるのかもしれないですね。今後もあさのさんの作品にたくさん出会えそうで楽しみです。

 

あさのさん 

ありがとうございます。たくさん届けられるように頑張ります。

 

 

 

あさのますみ / 作家

1977年、秋田県生まれ。2001年、声優(浅野真澄)としてデビュー。07年「ちいさなボタン、プッチ」にて第13回おひさま大賞童話部門最優秀賞を受賞。18年『まめざらちゃん』で第7回MOE創作絵本グランプリを受賞。絵本作品に『アニマルバスとよるのもり』(ポプラ社)などがある。

 

 

宮下奈都 / 作家

1967年、福井県生まれ。上智大学文学部卒。2004年「静かな雨」で文学界新人賞佳作入選。『羊と鋼の森』で、16年本屋大賞。『よろこびの歌』『つぼみ』など小説の他、エッセイ集『とりあえずウミガメのスープを仕込もう。』なども発売中。

 

取材・文/タナカシノブ