高熱と強いのどの痛みに襲われる「溶連菌感染症」は、子どもがかかりやすい感染症のひと。特に「処方された薬は飲み切る」のが大事です。その理由とは? 子どもが感染したときの看護のポイントも合わせ、詳しく解説します。

溶連菌感染症ってどんな病気?

 

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一般的に「溶連菌」と呼ばれるこの病気は、「A群溶結性連鎖球菌」と呼ばれる細菌がのどや鼻の粘膜に感染することによって発症する感染症です。

原因菌に感染すると、2~5日の潜伏期間を経て、38~39℃以上もの高熱、倦怠感と共にのどの強い痛みが現れます。その他にも、手足や身体の皮膚、舌などに小さな赤い発疹が見られることもあります(※1)

強い症状が現れるため、特に乳幼児では水分摂取できず脱水状態に陥ることも少なくありませんが、適切な治療を受ければ2~3日ほどで軽快していくことがほとんどです。

 

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抗菌剤を飲み切ることが大事!

溶連菌の治療では、解熱剤や鎮痛剤など、高熱・のどの痛みといった辛い症状を和らげるための薬と同時に原因菌を退治するための「抗菌薬」による薬物療法が行われます。

通常は抗菌薬を服用すれば、2~3日ほどで症状は徐々に改善していくものです。しかし、のどの痛みのため水分が摂取できない場合などには、点滴が必要になり入院が必要になるケースも少なくありません。

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溶連菌では、症状が改善した1~2週間後に腎臓に炎症を引き起こすことがあります。腎臓の細い血管に炎症が生じたり、過剰に産生された免疫反応に必要な物質が沈着するのが原因です。

このような腎臓の異常は血尿やむくみ、高血圧などの症状を引き起こしますがほとんどは一過性のもの。しかし、まれに腎臓の機能低下が続くこともありますので注意が必要です(※2)

 

このような続発症は、適切な抗菌薬の服用によって、大幅に発症リスクを軽減できることが分かっています。一般的に抗菌薬は10日間ほど処方されますが、数日の服用で熱が下がると、途中で服用を中断してしまう人もいます

しかし自己判断で抗菌薬の服用を中止すると続発症が起こりやすくなります。たとえ症状がすっかり良くなったとしても、処方された抗菌薬は最後まで飲み切ることが大切です。

 

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「溶連菌感染症」の看護ポイント

 

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子どもが溶連菌にかかったときは、抗菌薬を最後まで服用させること以外にも次の点に注意しましょう。

 

水分摂取はこまめにおこなう

溶連菌は高熱が出るため、身体はいつも以上に水分が必要な状態となります。のどの痛みが強い場合でもこまめに少量ずつ水分摂取を促して脱水にならないよう注意しましょう。 乳児はうまく哺乳ができなくなることもありますので、スポイトなどを活用して。また、水分は電解質が含まれた経口補水液がよいでしょう。

 

食事は食べやすさ重視で

塩分や香辛料の多い食事、熱い食事は、のどに刺激を与えて痛みを悪化させることがあります。のどの痛みがある間は、のど越しの良いおかゆやスープ、ヨーグルト、ゼリーなどがおすすめです。このときは栄養バランスは重視ではなく、食べられるものを少しでも口にするようにしましょう。

 

のどや鼻を乾燥させない

溶連菌では、のどや鼻の粘膜に強い炎症が生じます。乾燥すると痛みが強くなりますので、加湿器などを利用して50~60%ほどの湿度をキープするようにしましょう。マスクを着用するとのどや鼻に潤いが行き渡り、さらには家族への感染予防にもなるのでおすすめです。

 

(※1 国立感染症研究所「A群溶血性レンサ球菌咽頭炎とは」
(※2 東邦大学医療センター佐倉病院腎臓内科「腎炎・ネフローゼ症候群」

 

 

 

文:成田亜希子