夫婦の関係性をうまくいかせるコツを綴った『夫婦喧嘩は買ったらダメ。勝ったらダメ。』(産業編集センター)や、思わず「わかる!」と頷いてしまうような“名もなき家事”を162項目とすべてリストアップし話題になった『夫が知らない家事リスト』(双葉社)など、著書を通じて夫婦のあり方に面白おかしく切り込む、芸人の嫁でもあり放送作家の野々村友紀子さん。ご自身が中1と小5の二人の娘さんを育てるママでもあります。

 

テレビで繰り広げるまさに「大阪のオカン」といった感じの歯に衣着せぬ物言いは、「当たってる!」「確かに!」とママたちの共感を得まくっています。そこで今回は、そんな野々村さんに私たちワーママの最大のテーマである「家事分担」と「夫婦」について、インタビュー。ざっくばらんに、お話をしていただきました。

“名もなき家事”、ありすぎ。
うまく手を抜く方法が知りたいです…


──CHANTOwebの読者には、夫婦間での家事分担に悩むママがたくさんいます。“名もなき家事”も含めると、まわしていくのって本当に大変…。野々村さんが考える“うまくまわすコツ”ってどんなことでしょうか。

 

野々村さん:

毎日、全部をやろうと思うと死んじゃうんで(笑)。「無理をしない」っていうのが基本ですね。ただそれを「妻ばかりが感じない」ということが大事。夫にも同じように感じてもらうように、どれだけやるべきことがあるのかを細かくリスト化するんです。その上で「できない家事もあるよね」というふうに、お互いが感じられればいいと思います。

 

共働きならなおさら!夫婦共通の認識として「すべてを頑張りすぎない」っていうのがないとしんどい。そこを夫婦が「補いあえるように」なると、一番いいですけどね…。

 

──手を抜いていいんですね。でもそれって、意外と難しくて。

 

野々村さん:

私は、手を抜くときは、“手を抜くことに手を抜かない”って決めています。しんどいと思ったら、意識的に「全く家事をやらない」と決める。家はぐちゃぐちゃでも、気持ちがリセットできたりするんですよね。家事って毎日365日あるじゃないですか。毎日全部をきちんとやるなんて、そんなの大変に決まってます。

 

 

──具体的に野々村さんが“手を抜く日”はどんな感じですか?

 

野々村さん:

例えば、「今日はごはんは買ってこよ」となるわけです。そうすると、洗い物もないですしね。掃除だって今日しなかったからって、死ぬわけじゃないし。「死なければいいじゃん、ラッキーじゃん」っていうぐらいのラインでやる(笑)。逆に、できた日は、できたことを自分で褒める

 

 

まあ、子供がいるんでそこまで不衛生にはできないでしょうから、そこのバランスはとりつつにはなっちゃんですけどね。料理が面倒だけど、作らないわけにもいかない…という日は、「Oisix」の献立キットを頼んだりしますね。献立まで決められた材料で送られてくるのでラクなんです。もちろん、洗濯乾燥機などの時短家電には頼りまくりですね(笑)。

 

家事を時短すると、子供たちとゆっくり話す時間がもてたりといいこともいっぱいあるんです。

 

 

──“名もなき家事”のリストアップを見つつ、夫と家事分担について話すきっかけにしてみます!

 

野々村さん:

私が作ったリストはweb上からダウンロードしていただくこともできますよ(野々村友紀オフィシャルブログ「目から血出るくらい読んでブログ」2019/2/6の記事よりダウンロード可能)。細かい家事も含めて、まずは夫婦で共有するのが大事!

 

ただし、細かく分担はしないこと。分担すると、「なんでコレやってないの?こっちはやっとんねん!」と、お互いがあら探しになり兼ねないですから…。だから、分担は決めないこと。これが、大切ですね。

 

──そうすると、どっちもやらないものとかがでてきませんか?

 

野々村さん:

ざっくりカテゴリー別に決めるとかがいいかもですね。食事作りは妻、掃除は夫、など。ただ、その夫婦によって得意不得意もまちまちなので、あくまでも例ですけれど。家事リストをもとに、お互いができそうなことやできなさそうなことを話し合うだけでも、進展ですよ。とはいえ、リストだけ作って、結局どっちもやらない…にならないようにしなければいけないので、そこが難しいんですけどね。

 

 

──ざっくばらんに家事を話し合えるのは、夫婦の関係性にもよりますよね。

 

野々村さん:

2人の関係がいい関係じゃないのに、家事リストをいきなりつきつけるのは、無理があります。だからこそ、普段の夫婦の関係がやっぱりすごく大事になる。夫婦間で潤滑に家事の相談をするには、日々の積み重ねでの良好な夫婦関係があるからこそと思いますね。

つい、夫につらく当たっちゃう。
夫婦の関係性ってどうすれば…

──まずは夫婦の関係性の見直しってことですね。夫の顔見るとつい小言をいってしまう…というママも多いみたいです。

 

野々村さん:

それは、「私ばっかりやってる」って思っているからですよ。そうと思うと、すごくしんどくなっちゃう。腹が立っちゃう。小さい子供がいながら働くママには、こういった方が多いかもしれませんね。私も、子供が小さいときはずっとそうでしたから。

 

保育園の送り迎えも仕事もやってるのになんで私ばっかり…って。仕事はいまほどしてなかったとはいえ、仕事は仕事で集中してやっていたいじゃないですか。「なんで、女性のほうばっかりごちゃまぜになるねん」って、思ってましたよ。男性は、仕事と家庭が完全に分けられている感じで、うらやましかったですね。だって、自由の幅が全然違うんですもん。

 

──そうなんですよ! 

 

野々村さん:

ただね、そこをグッとおさえるんです。パパも仕事、頑張ってきてくれてるでしょ?「頑張ってるのはお互いさま」と思うんです。思えなかったら“思い込む”(笑)「私ばっかり」っていうのをずっと言ってるところで、相手は分かってくれない。本当に困っているんだったら、素直に冷静に「なぜ困っているのか」「なぜ手が回らないのか」を夫に伝えてみるとか。

 

細かくリストアップして「これだけのことやりながら仕事してるんだ」と、目に見えるようにする。そこで初めて、「こんなにやることがあるのか」って知る夫もいると思いますよ。ウチの旦那もリストを作ったとき、「あーそうやったんや。そんなんをしんどいと思ってやってるなんて考えたこともなかった」って言ってましたから。

 

 

──リストアップして伝えるのが、男性には有効なのですね。

 

野々村さん:

そうそう。「私、本当はなんにもやりたないからな。好きでやってると思わんとって。趣味ちゃうねんから」って(笑)。まずはそこをわかってもらってそこからでしたね、ウチの場合やっと話が進み出したのは。「家事やって家事やって」っていってるだけでは、相手も何をやったらいいか、わからないから。「これやって」って、言いたくないですしね。二人でやるのが、当たり前なんですから。

 

 

──野々村家は、リスト化したことで、旦那さんの働きかけは目に見えて変わりましたか?

 

野々村さん:

それはもう、変わりましたよ。見えてなかった部分が見えたわけですから。例えばね、洗濯ものを「後で畳も」って、どさーって置いとくこと、あるじゃないですか。そうしているうちに他の家事をなんやかんややってたら、ずっと手がつけられない…ってこと、ありませんか?それをいままでは、「インテリアのために置いてると思ってんの?」ってくらい(笑)、触れないわけですよ。その横でソファでテレビを見たりしてるわけですよ!

 

ただ、リストアップしてからは、「後で畳もうと思ってるんだな」ということがあらかじめわかっているから、やってくれることも多くなりました。男性は、物事の次の流れが見えていると早く行動に移す人が多いと思います。

 

──男性は家事にどんなことがあるのか、そもそも分かってないと。

 

野々村さん:

未知すぎるんだと思うんです、家事って。ざっくりしかわかってなくて、そこに細かいことがあるというのが、わかっていないんだと思います。

 

こまごましたガチャガチャのおもちゃとか「捨てたのに…なんであるねん!なんも変わってない!」ってことありません(笑)? それと一緒というのか。妻がチャカチャカ動いていることが、当たり前になりすぎて、なじみすぎてるんですよね。もはや風景です、家族にとっては。それは“当たり前じゃないんだ”っていうことを見せないと。「しんどいねん」って、言っていいと思うんです。

 

──そうすることで、夫婦間の風通しも変わりますかね?

 

野々村さん:

そう思いますよ。そして、旦那さんが家事をしてくれたら「助かったよ!」と感謝の気持ちを伝えると、相手も気持ちいいですよね。ま、自分は洗濯物畳んだぐらいで「ありがとう〜」なんて一言も言われないですけどね…。

 

──ちょっとしたところの声がけやリアクションが大事なんですね。

 

野々村さん:

はい、それは必ず“自分のため”になりますから。パパが当たり前に家事をやってくれる、第一歩ですよ〜(笑)。

 

 

──そうはいっても、子供が小さいときって、本当に大変じゃないですか。どうしたら、そんなおおらかな気持ちになれますかね?

 

野々村さん:

私も、子供が小さなときはよくケンカしてましたね。ほぼ、ワンオペ育児だったんで。実家も両方関西で、生むのもこっち、育てるのも一人。余計に旦那の助けがないと絶対無理やとおもってたんで、妊娠中から「父親になるんだよ」と、いろいろな情報共有していましたね。

 

家事は妻がやるだけじゃなくて、夫も一緒にやらないと生活がまわらないというのを、わかってもらうことが大切。「この人は家事をやらないから」って、あきらめたらダメなんです。それは、どんどん「やらないほう」を育ててるだけ。リストアップして、共有する。それだけでも、進展ですよ!

 

──最後に、家事・育児・仕事で“いっぱいいっぱい”のワーママにアドバイスをください。

 

野々村さん:

優先順位を決めること。そして、加点方式で考えるといいですよ。「今日はこれができなかった…」って減点方式にすると、精神的に追い込まれてしまうので。加点方式にして「いまは子供が小さいから、仕事は将来できるときに頑張ろう。子育ては頑張れてるし!」みたいな感じで。家事・育児・仕事なんて、どれも完璧になんて無理なんです。絶対、中途半端になる。きっちり全部やろうと思うと、フルで動いても毎日寝るのが夜中の2時〜3時になっちゃいますよ(笑)。

 

私は家事がニガテなので、例えば掃除はいつも「これだけできたらいい」の最低限のレベルにしてましたね、子供が小さいうちは。“友人は呼ばれへんけど親族は呼べる” “ママ友は無理やけど娘の友達は呼べる”のように。

 

ハードル、低くていいです。自分が一番ラクにいられる考え方を、見つけてください。「余白を多めに」です! 余った時間は、ビールを1杯飲んだり、美容に使ったりね。

 

 

ズバズバとお答えいただきつつも、とってもやさしく相談に乗ってくれた野々村さん。“頼れるお母さん”的な、とても素敵なオーラでした。「家事=家の事。夫婦でやって、当たり前」これを夫に伝える術、ぜひ今日から実践してみます!

 

【PROFILE】

 

野々村友紀子


大阪府出身。「にちょけん」の愛称で知られるお笑い芸人「2丁拳銃」のツッコミ担当の川谷修士の嫁。自身も芸人として活動後、放送作家に転身。現在はバラエティ番組の企画構成に加え、吉本総合芸能学院(NSC)東京校にて講師としても活動。最近ではコメンテーターとしてTV番組などでも活躍している。最新の著書に『夫婦喧嘩は買ったらダメ。勝ったらダメ。』(産業編集センター)。見えない家事を全162項目リストアップした『夫が知らない家事リスト』(双葉社)も、TV番組で話題に。公式ブログ『目から血出るぐらい読んでブログ』も人気。中1と小5の娘のママ。

取材・文/松崎愛香 撮影/田尻陽子