子どもが野菜を食べてくれない…。親なら誰もが直面するこの問題。

 

「野菜も食べないと大きくなれないよ」なんて口では言ってみるものの、そもそも自分がよくわかっていないものだから、そりゃ説得力もないわけで。今日も我が子はお皿の端にちょこんと野菜を残してく。

 

そもそも、野菜の栄養って…何!?

 

そんなギモンに切り込んだ回答をしてくれるのが35年間“八百屋のオヤジ”として野菜と向き合ってきた内田悟さん。

 

現在では、レストラン専門青果店「築地御厨(つきじみくりや)」から旬の野菜を届けつつ、定期的に開催する野菜塾などを通じて、野菜の選び方を提唱しています。

 

3記事目は「 野菜の旬をこどもと勉強しよう! 」

じつはママもあまり知らなかったりする「野菜の選びかた」。春野菜、夏野菜、秋野菜、冬野菜…には、それぞれどんあものがあるの?や、旬の野菜はどんな特徴があるの?ということを、子どもにも教えられるくらい簡単なポイントで教えていただきました。

目次

旬の野菜には「8つの特徴」がある!


スーパーで野菜を選んでいるときに「これって旬なのかな?」と迷った場合。自然界で育った旬の野菜を簡単に見分ける方法があるとのことなんです!早速お伺いしました。

1.丸い

上から、下から、横から。いろんな角度から野菜をみたときに、美しい円形を見つけられるものは旬を迎えているものです。ゴツゴツとしたジャガイモにも必ず丸い部分があります。タマネギなどの丸い形状の野菜は当然なのですが、ホウレンソウや小松菜などの葉物の場合なら茎の断面が、レタスやキャベツなら切り口の断面が「まあるく」なっているときが、旬を迎えたとき。丸くなるのは、必要な栄養をしっかりと吸収して、バランスよく育っているから。

2.ずっしり

同じ大きさの野菜なら、身の詰まった重いほうを選びましょう。この重さは「細胞分裂」の証し。栄養分とおいしさがたっぷり詰まっているものです。

3.淡くて美しい緑色

野菜が淡く白っぽく見えるのは、「クチクラ層」という薄い膜がはられているため。この膜には、野菜を紫外線や乾燥、害虫から守ってくれる役割があります。淡くて美しい緑色は、自然に育った野生の色です。

4.左右対称

とくに葉物の野菜は、葉脈を見てみるとよいでしょう。旬を迎えた野菜の葉脈は、見事なほどに左右対象です。ゆがんだりしていません。こういった野菜は根も左右均等に張っています。バランスよく発達した根から、土中の養分をたっぷりと吸収した健康の野菜です。

5.軸が小さい

軸とは、たとえばにんじんのこの部分。いい環境で育っている野菜は、栄養を吸収しすぎずに必要なだけを自分のペースで効率的に吸収しているので、軸が小さく引き締まっています。そうすると、形もまっすぐで美しいものになります。

6.ひげ根が均等

大根やニンジンなどの根菜は、ひげ根と呼ばれるひげに注目してみましょう。この並びかたを見ると、すくすくと育ったのかそうてないのかがわかります。ひげ根が均一な感覚で整列しているものは、必要な栄養をしっかりと吸収しているものです。料理しても火の通りがよく、おいしい野菜です。

7.根・芽・子室が多い

例えばジャガイモは、いっぱいでこぼこがあって芽の数が多いほど栄養をたくさん吸収しています。

8.枯れる

自然界の植物は、芽が出て、花が咲き、実がなり、枯れて種を落とし、また芽が出て…と繰り返しのサイクルで息づきます。枯れるということは、自然に育っている証しです。ところが、ハウス栽培の野菜などでは途中で腐ってしまうものがあります。「腐るのではなく枯れる」野菜が、健康であるといえます。

春野菜、夏野菜、秋野菜、冬野菜の特徴

それぞれの旬の野菜の代表的なものには、どんなものがあるのでしょうか。

 

「季節を野菜の旬に合わせてみると、ぴったりと合致するのが、旧暦の二十四節気。旧暦とは昔ながらの日本の暮らしの暦であり、農作業の目安とされたものです。季節とともに暮らしてきた、昔ながらの日本人の暮らしをのぞくことができるものです。この二十四節気になぞらえて、旬の野菜を見ていきましょう」

 

下記している産地は、その野菜の「一大産地」と呼ばれる土地だそうです。

◼️3〜5月に旬を迎える春野菜

大地から勢いよく顔を出す「芽吹く」野菜が多く見られます

  • 立春(りっしゅん)2月4日頃
    川や湖の氷が解けはじめ、春の兆しが見えてくるころ。この日から暦の上では春となります。
    【ニラ/群馬 ホウレンソウ/関東】
     
  • 雨水(うすい)2月19日頃
    積もった雪が溶け出す頃。昔から、農作業の準備を始める目安とされてきました。
    【タケノコ/九州 菜の花/千葉、福岡】
     
  • 啓蟄(けいちつ)3月6日頃
    少しずつ暖かくなってきて、土の中で冬ごもりをしていた虫たちが動き出します。
    【セリ/岡山、宮城 トマト/静岡、愛知、三重】
     
  • 春分(しゅんぶん)3月21日頃
    太陽が真東から登り、真西に沈む日。昼夜の長さがほぼ同じになる日で、この日を境に陽が延びていきます。
    【グリンピース/鹿児島 レタス/香川】
     
  • 清明(せいめい)4月5日頃
    自然のすべてのものが、春の息吹を謳歌する陽気の頃。
    【根三ツ葉/栃木】
     
  • 穀雨(こくう)4月20頃
    たくさんの穀物をうるおす春の雨が降る頃。この季節の終わりには、夏の始まりを告げる八十八夜が訪れます。
    【山菜類/東北、北海道 そら豆/鹿児島、茨城】

◼️6〜8月に旬を迎える夏野菜

ぶら下がってなる野菜が多く見られ、ビタミン豊富です

  • 立夏(りっか)5月6日頃
    新緑に彩られ、さわやかな五月晴れが続く頃。夏の兆しを感じられる季節です。
    【アスパラガス/北海道 スナップエンドウ/静岡】
     
  • 小満(しょうまん)5月21日頃
    陽気がよくなり草木が成長して茂る頃。農家では田植えの準備を始める頃。
    【フキ/愛知 クレソン/山梨 谷中しょうが/東京】
     
  • 芒種(ぼうしゅ)6月6日頃
    米や麦などの種を蒔く頃のこと。農家が忙しくなる時期。梅雨入りも間近で少し蒸し暑くなってきます。
    【新しょうが/高知 サヤインゲン/福島】
     
  • 夏至(げし)6月21日頃
    1年で最も日が長く、夜が短い。至を過ぎると暑さが増して本格的な夏がやってきます。
    【絹サヤ/福島 ミョウガ/高知 大葉/愛知】
     
  • 小暑(しょうしょ)7月7日頃
    梅雨が明け、日差しが強くなり始める頃。
    【ピーマン/宮崎 オクラ/沖縄 ズッキーニ/長崎】
     
  • 大暑(たいしょ)7月23日頃
    夏の暑さが本格的になる頃。
    【ナス/新潟 キュウリ/福島 ツルムラサキ/福岡】

◼️9〜11月に旬を迎える秋野菜

根菜や芋類が中心です

  • 立秋(りっしゅう)8月7日頃
    残暑が残りつつも、秋の気配が感じられる頃。この日から暦の上では秋となります。
    【枝豆/山形、新潟 モロヘイヤ/沖縄、関東 トウモロコシ/北海道】
     
  • 処暑(しょしょ)8月23日頃
    暑さが和らぎはじめる頃。朝晩の涼しさに初秋の息遣いを感じます。
    【空芯菜/静岡 水前寺菜/熊本】
  • 白露(はくろ)9月8日頃
    草花に朝露がつきはじめ、本格的な秋がスタートします。
    【チンゲンサイ/茨城、群馬、静岡 カボチャ/北海道】

     
  • 秋分(しゅうぶん)9月23日頃
    春分と同じく、昼夜の長さが同じになる火。この日を境に、日が短くなります。
    【天然のキノコ類/東北地方 ギンナン/愛知】
     
  • 寒露(かんろ)10月8日頃
    草木に冷たい露が降りる頃。刈りが終わるころで、その他の農作物の収穫もたけなわとなります。
    【ニンジン/北海道 タマネギ/北海道 ジャガイモ/北海道】
     
  • 霜降(そうこう)10月23日頃
    晩秋を迎え、北の方では朝霜が降り、山々は紅葉に染まります。
    【サトイモ/宮崎、静岡、埼玉 ゴボウ/熊本、青森】

◼️12〜2月に旬を迎える冬野菜

寒い冬を乗り切るためにビタミンをたっぷり含んでいます

  • 立冬(りっとう)11月7日頃
    この日から立春の前日までが暦の上では冬となります。
    【長芋/青森、北海道 大根/関東】
     
  • 小雪(しょうせつ)11月22日頃
    木々の葉が落ち、山には初雪が舞い始める頃。
    【春菊/茨城、千葉 レンコン/茨城】
     
  • 大雪(たいせつ)12月7日頃
    山の峰々は雪をかぶり、平地にも雪が降る頃。本格的な冬の到来です。
    【白菜/茨城 カブ/関東】
     
  • 冬至(とうじ)12月22日頃
    太陽が最も低い位置にあり、1年で最も夜が長く、昼が短い日。
    【長ネギ/関東 サツマイモ/九州、千葉】
     
  • 小寒(しょうかん)1月5日頃
    この日を「寒の入り」といい、寒さの始まりを意味します。
    【キャベツ/愛知 小松菜/東京】

     
  • 大寒(だいかん)1月20日頃
    二十四節気の最後の節気で、ここを乗り切れば春がやってくるといわれます。
    【ブロッコリー/長崎 カリフラワー/長崎】

育った環境を考えれば、適切な保存ができる

野菜はすぐにダメになってしまうような気がしますが、適切な保存法も「旬」によるそうです。

 

「育った環境に応じた気温で保存をするのがいいでしょう。旬の野菜なら、冷蔵室にしまわずに常温保存で十分ということです。また、直射日光を避けて風にあてず、空気にふれないようにするのがいいので、新聞紙にくるむといいでしょう」

 

野菜とは、私たち人間と同じ。だから、自然に育ったものが正しいもの。正しいものとは、栄養価が豊富でおいしいもの。そんなシンプルなお話をお伺いできて、身が引き締まる思いでした。

 

いつもどこかで感じていた「子どもに野菜を食べさせなきゃ」という思い。そこにこだわりすぎず私たち母親が野菜の旬を知って、一年を通じてゆっくりとしたサイクルで、野菜をおいしく、子どもといただく。それこそが、子どもがすくすくと育つサプリメントにつながるのですね!

 

「慣行栽培の野菜でもいいんです。季節を選んだ上で、処理の仕方や切り方を少し気をつければ、見違えるほどおいしくいただけますから」。

 

PROFILE 内田悟さん

1955年北海道生まれ。フランス料理店で修業中に野菜への関心を深め、26歳より23年間青果納品業に勤務。その後築地場内の仲卸店で有機無農薬野菜のコーナーを立ち上げたのち、2005年東京中央区にレストラン専門青果店『築地御厨』を創業。信頼できる青果店として評判を呼ぶ。2007年からは、一般消費者にもきちんと野菜と向き合ってほしいと、本業のかたわら、無料で「やさい塾」を開講。安全安心な野菜の選び方や扱い方を独自の視点でわかりやすく伝え、幅広い支持を得ている。野菜の目利きとしても、テレビ、雑誌などで活躍中。『間違いだらけの野菜選び(KADOKAWA)』、『子どもと大人のやさいの本 やさいのことがよくわかる、やさいの味方(芸文社)』など、著書多数。

 

取材・文/松崎愛香 撮影/斉藤純平 取材協力/築地御厨