心理カウンセラーの筆者は「夫婦生活はご無沙汰なのに、夫がひとりで自慰行為をしていると知って…ショックです」という相談を受けることがあります。 「私とはしないのに…」「性欲があるのにどうして?」と、妻としては、寂しさや不安を感じるのは当然のこと。ただ、男性にとっての「ひとりでする」ことは、女性のイメージするものとは少し違っているようです。 そのことを知っておけば、必要以上に悩むことが減るかもしれません。
性行為と自慰行為は別もの
男性にとっての「自慰行為」を、彼女や奥さんがいないために性行為ができない人が、代わりにするものと誤解している女性が多いのですが、男性にとって性行為と自慰行為はまったくの別ものです。 男性は身体の構造上、3日ほどで精巣が満タンになります。そのまま放っておいてもたんぱく質として身体に吸収されていくのですが、ため込むよりも放出したほうが身体にも良さそうですよね。 つまり「自慰行為」を行うのは、「排出」してスッキリしたいという目的も大きいのです。もし「私との性行為をしたくないから自慰行為をしている」と思っているのなら、否定させてください。 「性行為」と「自慰行為」はまったくの別もの。「ひとりではするのに、私とはしてくれない」と考えないほうが良いでしょう。
「性行為が面倒くさい」の意味
「自慰行為」のメリットを男性側に聞いてみると、体力の節約、時間短縮、快感のコントロールが可能など、「楽である」という共通点が挙げられます。 「性行為」をしようと思うと、男性のタイミングだけでははじめられませんよね。すぐに挿入したくても、相手の気持ちや身体の準備が整っていなければできません。 射精のタイミングをコントロールしたり、相手の反応を気遣ったりと、男性にとって性行為はかなり「面倒」だと感じる作業も多いのです。 ここで誤解しないでいただきたいのは、面倒なのは「行為」に関連することであって、相手のことが面倒なのではありません。 お風呂は好きだけど、さっさとスッキリしたいときにシャワーで済ませるような感覚で「自慰行為」をしていると考えればわかりやすいかもしれませんね。
「疲れている」にはふたつの意味がある
「疲れている」という理由で性行為を拒否されることがありますが、「疲れている」には身体的疲労と精神的疲労のふたつの意味が存在しています。 身体的疲労はわかりやすいですよね。「性行為」になると、男性は体力消費も激しくなります。「スッキリはしたいけど、明日のことを考えると…」と「自慰行為」を選ぶ人もいるでしょう。
一方で、仕事でのストレスなどによる精神的疲労からくる「疲れ」があると、体力はあっても相手のことを気遣う余裕がなくなります。 夫婦生活のなかでは気遣いや配慮は必須事項ですが、それができる余裕がないために「性行為」を避ける。それでも一時的にスッキリしたいので、「自慰行為」でひとまず気を紛らわす、といったイメージでしょうか。
その場合は、好物のご飯を作ったり優しく接したりと、夫のメンタルケアに努めることも必要です。夫が「疲れている」という場合には、精神的疲労の可能性を探ってみるのもひとつかもしれません。
「ひとりで自慰行為をすること」は自然なことであり、悪いことでも、「性行為」の代替品ということでもありません。 「セックスレス」と「自慰行為」を無理に結びつけてしまうと、あなたが必要以上に傷ついてしまいます。「それはそれ、これはこれ」と割り切る気持ちが大切ではないでしょうか。
文:矢島みさえ