「知らない」「想像がつかない」 膨らむ不安
稲垣さんは、多胎児の妊娠・出産・子育てに関する専門的な知識や情報は手に入りづらく、「知らない」「想像がつかない」ということで不安が膨らんでしまいがちだと指摘します。
例えば、保健所や病院などで開かれる両親学級はほとんどが1人を妊娠している人向けで、双子・三つ子については言及しません。そのため、入浴などの世話の仕方をはじめ、出産後にどのような生活になるのか、何枚肌着を用意したらいいかなどの基本的なことについても分からないことが多いといいます。
また、多胎妊娠では妊婦の体調が安定していて動きやすい期間は短いことが多く、さらに出産後は子どもを連れての外出が難しいため、妊娠中の動ける時期を逃さず準備を進めることが重要だそうです。
出産後を見越して支援を受けるための手続きを行ったり、産後のイメージを家族で共有したり、出産前に入院しなくてはならなくなった時の準備をしたりすることで負担を減らすことができますが、出産前にはそこまで頭が回らず出産してから困惑する人も少なくありません。
プレファミリー教室には、妊娠中から経験者から具体的な話を聞いて準備を進め、これから出産を迎える仲間を得て不安を打ち明け合うことで、孤独感の解消につなげる狙いがあるといいます。
教室に参加した板橋区に住む妊娠5か月の女性は、「インターネットで調べても、実際はどうなのかよく分からない」と参加。他の参加者と連絡先を交換し、「同じ悩みや不安を抱えている人と知り合えて嬉しい。戦友のようになると思うので、これからも集まれるといいなと思いました」。
ともに参加した夫の印象に残ったのは子育て中の父親の話だったそうです。「なかなか父親側の話は聞けない。双子を連れて出かける時などの具体的なアドバイスをもらえてとても助かった。『なんとかなるよ、大丈夫』って経験者に言われるだけで、気持ちがすごく楽になりました」と話していました。