当事者だけでなく社会の課題に
ツインズエイドが今年に入って行ったアンケートでは、親たちの厳しい状況が浮かび上がっています。
多胎児を育てている・または妊娠中の親約300人にweb上で協力してもらったところ、およそ3割の人が鬱や不安障害などの症状が出てもおかしくない状態だと分かったのです。メンバーで公認心理師・臨床心理士の高原けい子さんは「多くの家族が精神的に疲弊しているのが分かります。核家族が多くサポートが得づらい中、やはり横のつながりを作っていくことが大切なんだと思います」と分析しました。
ツインズエイドのような団体のほか、地域の子育て支援センターが開く双子・三つ子の家族の会、病院の助産師や自治体の保健師など、多胎家庭に関わる人や団体はいくつもあります。
ただ、活動の中で、そういった妊娠出産に関わる専門職に就く人でも、多胎育児の大変さや特別なサポートの必要性をあまり認識できていないと感じることもあったそうです。
プレファミリー教室では講師も務めた、出産前まで助産師として働いていた中西杏奈さんは、「仕事柄3人以上の新生児の世話や医療的なケアをひとりですることには慣れていたので2人なら余裕だとすら思っていましたが、実際子育てしてみたら想像と全く違いました」と自身の体験を振り返ります。
「24時間フル勤務が続くようなもの。休憩もないし、2人の命を常に1人で預かっているプレッシャーや外に出られない孤独感もすごくて、体力的にも精神的にも仕事よりずっと大変でした。私のような専門職でも、多胎児を育てる大変さは理解できていなかったのだと実感しました」
そのためツインズエイドでは、多胎家庭へのサポートの必要性を各所に訴え、ネットワークづくりを進めることにも力を入れているそうです。稲垣さんは「課題を共有し合うことで、必要な人に情報が届きやすくなります。当事者だけではなく、社会全体の課題として取り組むことで、支援からこぼれてしまう人がいないようにしたいです」と訴えます。
大変なことも多い多胎育児。ただ、稲垣さんは「大変だからこそ得られる、何倍もの喜びがあると知ってほしい」と言います。
多くのお母さんたちと接してきて、「できるだけ自分でやらないと」と感じている人が少なくないと感じたそうですが「夫やおじいちゃんおばあちゃん、友達、保健師さんなど、いろいろな人に頼ることはすごくいいことなんです。いろんな人に頼ったからこそ、いろんな人に愛されるのが双子育児の醍醐味ですよ!」と断言します。「1人で抱え込まないで、社会と関わり、仲間と関わりながら楽しんで子育てをしてほしいです」。
ツインズエイドは今後も、プレファミリー教室や親たちの座談会、多胎家庭向けの冊子の作成などの活動を行っていくそうです。
取材・文・撮影/小西和香