JR以外の民営鉄道で一番長い路線網を持つ鉄道会社を知っていますか。答えは近畿日本鉄道、近鉄です。近鉄は東は名古屋、西は神戸三宮まで乗り入れる鉄道会社。これだけ広い路線網を持っているため、専用車を使った近鉄特急のネットワークが充実しています。今回はそのような近鉄特急の魅力を紹介します。
各地へと広がる近鉄特急のネットワーク
近鉄特急の最大の魅力は広大な路線網を活かしたネットワークです。2019年7月現在、近鉄特急が定期運行されている区間は以下のとおりです。
大阪(大阪難波)~名古屋 大阪(大阪難波)~伊勢・志摩 名古屋~伊勢・志摩 京都~伊勢・志摩 京都~奈良 京都~橿原神宮前 大阪(大阪難波)~奈良 大阪(大阪あべの橋)~吉野
近鉄特急は専用車両を使うので、乗車券のほかに特急券が必要です。車内はすべて座席指定になっているため、必ず座れます。また、一部の列車にはJRのグリーン車にあたるデラックスカーが連結されています。デラックスカーに乗車するには特急券のほかにデラックスカー券が必要です。
近鉄特急ではさらに、特急の豪華バーションといえる車両「しまかぜ」と「青の交響曲(シンフォニー)」も運行しています。「しまかぜ」の運行区間は以下のとおりです。
大阪(大阪難波)~伊勢・志摩 名古屋~伊勢・志摩 京都~伊勢・志摩
「しまかぜ」には近鉄特急のシートをよりグレードアップした「プレミアムシート」や展望車両、個室が連結されています。また、JRではほとんど見られなくなった「カフェ車両」も連結。伊勢・志摩方面の旅がより楽しくなることでしょう。「しまかぜ」には乗車券・特急券のほかに「しまかぜ特別車両券」が必要です。
「青の交響曲(シンフォニー)」は大阪あべの橋駅~吉野駅間で運行されています。こちらも通常の近鉄特急より豪華な仕様。重厚な座席が並び、2号車にはラウンジ車両が連結されています。「青の交響曲」に乗車する際も「しまかぜ」と同じく、乗車券・特急券のほかに特別車両券が必要です。
近鉄特急のエース「アーバンライナー」の実力
さて、観光特急「しまかぜ」や「青の交響曲」が誕生しても、未だに近鉄特急のエースは大阪(大阪難波)と名古屋を結ぶ名阪特急といえるでしょう。名阪特急には停車駅が少ないタイプと多いタイプが交互に運行されています。少ないタイプは「アーバンライナー」と名付けられた車両が優先的に使われます。初代「アーバンライナー」が誕生して約30年が経過しますが、今でも近鉄特急のシンボルトレインです。
この「アーバンライナー」には2種類の車両が存在します。1つ目は1988年に登場した21000系「アーバンライナーplus」です。登場から約30年が経過しますが、2003年~2005年にかけてリニューアルされたので、快適性は最近の車両と変わりません。2つ目は2002年に登場した21020系「アーバンライナーnext」です。こちらは新しい車両ですが、2編成しかないため、乗れたらラッキーですね。
「アーバンライナー」(停車駅が少ないタイプ)の停車駅は大阪難波、大阪上本町、鶴橋、大和八木(一部が停車)、津、近鉄名古屋です。大阪難波駅~近鉄名古屋駅間の所要時間は最速2時間9分です。実は東海道新幹線の新大阪駅~名古屋駅間の倍以上の時間を要します。所要時間だけを見ると近鉄特急には勝ち目がないように思うことでしょう。
実は近鉄特急は運賃と始発駅で勝負しています。大阪難波駅~近鉄名古屋駅間の「アーバンライナー」の運賃は特急券込で4,260円、デラックスカーを利用しても4,770円で済みます。一方、東海道新幹線の運賃は「ひかり号」の普通車自由席であっても5,830円になります。
「アーバンライナー」は大阪・ミナミの中心地、大阪難波駅から出発します。大阪難波駅はOsaka Metro御堂筋線、千日前線、阪神線、南海線と接続する一大ターミナル。近鉄名古屋駅から乗り換えなしで大阪・ミナミの中心地に直行する点は大きなメリットだといえるでしょう。なお、難波から新大阪駅まではOsaka Metro御堂筋線で約15分。しかも、Osaka Metro新大阪駅と新幹線の新大阪駅は少し離れているので、10分ほど歩かなくてはいけません。
次に「アーバンライナー」の車内を紹介しましょう。こちらはJRの普通車にあたる「レギュラーシート」。ビジネスパーソンが利用するせいか、全体的にシンプルな内装です。シートはリクライニングシートになっていますが、シートを倒すと座面も沈み込む「ゆりかご型シート」を採用。そのため、シートを倒しても腰のあたりに妙な隙間ができず、快適に過ごせます。また、東海道新幹線の普通車にはないフットレストも標準装備。工夫に満ちた座席のため、2時間9分の旅でもまったく苦に感じませんでした。
ぜひ、次の連休は近鉄特急を使って旅行に出かけてみませんか。リーズナブルでゴージャスな鉄道旅行が楽しめますよ。
文・撮影/新田浩之