保育が充実、ワークライフバランス重視の働き方

堀内都喜子さん

 

状況よりも個々の能力を重視しているんですね。

フィンランドは国際NGOセーブ・ザ・チルドレンが発表していた「お母さんに優しい国ランキング」や「ジェンダーギャップ指数」で常に上位に入っています。こうした世界に誇るべき文化の背景にはなにがあるのでしょうか。

 

コッコ参事官

フィンランドは小国で、人口も550万人しかいません。森はたくさんありますが天然資源は少なく、生き残って成功していくためにはすべての人間を生かすしかありませんでした。 そのため教育と社会における平等というのは、かなり古くからフィンランドでは意識されてきました。

 

堀内さん

フィンランドには「1人も取りこぼすべきではない」という考え方があります。 もちろんフィンランドでも、保育は母親という意識の時代もありました。第二次世界大戦後、女性が働かなくてはならない状況になっているのに保育の制度がなかった。そこで女性が声を上げ始め、すべての子どもが望んだタイミングで保育園に入れるよう自治体が対策することを定めた「保育園法」ができるなど、社会が変わっていきました。

 

労働人口減少の中で女性の活躍を促そうとしている日本と似ている部分がありますね。

 

コッコ参事官

そうですね、でも日本はまだたくさんの可能性があると思います。フィンランドはすでにほとんどの女性が働いていますから。

マルクス・コッコ報道・文化担当参事官

 

望んだタイミングで子どもが保育園に入れるというのは、女性が働く上で非常に重要だと思います。

男性も育休を取得する人が多いのでしょうか?育休明けの働き方はどうなりますか?

 

堀内さん

8割程度の男性がパートナーの出産直後に育児休暇を取得しています。さらに、ワークライフバランスを重視していますので、基本的にみんな残業はしません。子どもや家庭に関わる時間というのは男性も女性も取りやすいです。 フィンランドでは、途中から無給ですが3年間の育児休暇を取得することが可能ですので、長く育休を取得する女性も多いです。 無給の間も自治体や国から月に数万円の手当てが出ますし、仕事では必ず同じポジションに戻れると決まっています。さらに先程も触れましたが保育園も希望したタイミングで入れますので、せかされることなく個々のタイミングで復帰する、という状況です。 女性の社会進出が進んでいるというと、母性があまりなくてバリバリ働いているというイメージを持たれがちですが、お母さんとして子どもと一緒にいたいという気持ちはもちろん持っているんですよ。

 

男性だから、女性だからという見方ではなく、能力がある人が活躍できる。そうした考え方が徹底していると感じました。 制度は大きく違っても、私たちが学ぶべき点がたくさんありそうです。

 

ジェンダーギャップの少ないフィンランドでは、男性の家事・育児へのかかわり方はどうなっているのでしょうか?「フィンランドのお父さんに聞いてみた!子育て事情と父親の家庭進出」では、コッコ参事官に子育て中の男性編集者が男性の家庭・育児参加について聞いています!

 

 

PROFILE

マルクス・コッコ報道・文化担当参事官

マルクス・コッコ報道・文化担当参事官
1971年、フィンランド生まれ。ヘルシンキ大学で国際政治学の修士号取得。2014年まで国外のメディアにフィンランドの産業や企業などの情報を提供する団体「Finfacts(フィンファクツ)」の所長を務めた。2015年9月より現職。

 

堀内都喜子さん

堀内都喜子さん
長野県出身。フィンランドのユヴァスキュラ大学大学院でコミュニケーションを専攻し修士号取得。帰国後は都内のフィンランド系機械メーカーに勤務しながら、ライター、通訳なども行う。2013年より現職。

 

文/小西和香 写真/小林キユウ