赤ちゃんや子どものほとんどは動物が大好き。よちよち歩きの頃から、犬や猫を見ると「ワンワン」といって指さす子も多いでしょう。 すでにペットと暮らしている家庭もあると思いますが、そうでない家庭でも、少しお子さんが成長してくると「犬を飼いたい」「猫を飼いたい」とせがんでくることがあるかもしれません。
今回の記事では、そんな時、ペットを迎え入れるにあたって考えておきたいことを紹介します。
現在の日本のペット事情は?
平成30年の調査では、全国のペットの推計頭数は、犬:890万3千頭、猫:964万9千頭とのこと。
一世帯に犬や猫が数匹いる場合や都会と地方の場合で異なりますが、およその割合として、犬は12.64%・猫は9.78%と、それぞれおよそ10軒に1軒がペットと暮らしていることになります。
猫に関しては、多少の増減がありつつも、5年間でほぼ飼育頭数は横ばい。それに対し、犬は5年連続で頭数が減り続けています。
昔と違って犬の生活場所が室内に移ってきたこと・エサの改善・医療の進歩などで、1頭あたりの寿命が伸びていることと、高齢者だけの世帯が増え、今の犬が死んでしまったらあとに新しいペットを迎え入れることが難しくなっていることなどが理由と考えられています。
「ペットを飼いたい」と子どもが言ったら
ペットと暮らすことは、子どもや家族にとってたくさんの良い効果をもたらします。
- 子どもの良き友・遊び相手になってくれる
- 精神的な支えや癒しになってくれる
- 生死を見届けることで命の大切さを学べる
- 言葉を持たない相手の気持ちを読み取る力が身につく
- 感受性が豊かになる
- 責任感が身につく
- 家族の会話のきっかけになる
ただ、ペットはおもちゃやモノではなく、ひとつの命。迎え入れるには、それ相当の覚悟と責任が生じます。
ペットを飼うにはお金がかかる
責任のひとつめは費用の問題です。 上記と同じ平成30年の調査では、ペットにかかる1ヶ月当たりの支出総額は、医療費を含め、
犬 10,368円 猫 6,236円
と、犬の場合で年間約13万円にもなります。
一説には、トイプードル1頭の生涯にかかるお金は300万円近いとも言われています。
犬や猫の治療費は、健康保険などがききません。ペット保険に加入すればいくらかは支給されますが、保険加入にもある程度の金額が必要。
以前は趣味の範囲内で犬や猫を繁殖させていた人にも近年は登録義務が課せられるようになり、ペットの健康を守るためショップでの規制も強化されています。 それは良いことなのですが、結果、ペットの価格はより高額になりました。
これらのことを子どもに伝え、「おもちゃやゲームに使えるお金は節約しないといけないよ」と話しておきましょう。
お世話やケアは責任を持って
もうひとつの責任は、ちゃんとペットのお世話ができるのかということ。
子どもの年齢にもよりますが、両親や子ども自身の帰宅が夕方遅かったり、ママは帰宅しているものの子どもは習いごとや塾・スポ少などでほとんど家にいないのであれば、満足にお世話ができないため、かわいいからという理由だけで本当に飼えるのかよく考えなければなりません。
お世話をする時間はあるけれど、子どもが最初だけしか世話をせず、結局ママがお世話係…という状況は、ペットを飼うにあたりママたちが一番心配なことのひとつでもあります。
いきなり子どもだけで世話をするのは難しいので、できるだけ大人が見本を見せ、「お世話をした方が心も通じるんだよ」といった声かけも必要です。
マンションでペットが飼えないときは
最近では、頭数や種類の制限はあるものの、ペット飼育可能な分譲マンションが増えている傾向です。 しかし、住んでいるマンションやアパートがペット禁止の場合も当然ありますね。
そんな場合も次のような生き物であれば飼育可能なことも。
・ハムスター ・小鳥 ・フェレット ・ハリネズミ ・トカゲ類
大きな音や匂いを出さないペットで、壁や床を傷つけたり汚したりしない飼育方法であれば許可されることもありますので、管理人さんへ確認してみましょう。
カブトムシやクワガタなどの昆虫、熱帯魚やメダカ・金魚などの魚類、カメ、ザリガニなどであれば、室内でケースから出さないなら飼育が禁止されていないところがほとんどでしょう。
ペットを飼わせてあげたいけれど規約で禁じられている場合には、こういった生き物を一緒に検討してみるのもひとつの方法です。
アレルギーは大丈夫?
ある研究では、赤ちゃんの時から猫と暮らしている子どもに花粉症が少ない、複数のペットがいる家庭の子どもにアレルギーが少ないといった報告があるそうです。
しかし、途中からペットを飼うことになった場合、いざ迎えてみたら重度のアレルギーを発症したとなると、治療かペットを手放すかの選択を迫られることになります。
以前に親戚や知人宅で犬・猫と触れ合ったときに、かゆみや腫れ・鼻水などのアレルギー症状が出た子は注意が必要です。
「インターネットでペット購入」ありえない?
ペットを飼うといえば、ペットショップでケースの中の子犬や子猫を見て、抱っこさせてもらったり説明を聞いて、自宅へ連れて帰る…というのが当たり前と思われがちですが、実はこれは日本特有の販売形態だといいます。
店頭で長時間明るい照明に照らされたりたくさんのお客さんに触られるのは、子犬や子猫にとってかなりのストレス。感染症などのリスクも高まります。
欧米では、かわいさのあまり環境が整っていないのに衝動買いしてしまうことを防ぐため、店頭販売が法で禁じられている国も多くあります。
一方、子犬のインターネット販売では、お金を振り込んだのに引き取りがなされない、事前に聞いていたのと犬種が違うなどのトラブルも報告されていますが、それらをのぞけばむしろ大切に育てられた子犬と出会える可能性が高いといわれています。
ペットショップでは、ブリーダー(生まれてから育ててきた人)を知ることはできませんが、インターネットのマッチングサイトなどを利用すれば、ブリーダーの元へ見学に行き、育て方などに納得した上で引き取ることも可能。
これらのことから、一概に「ショップは安心でインターネットは怪しい」とは言えない状況のようです。
2019年の「動物愛護法改正」の内容とは
2019年6月、ペットの待遇改善や動物への虐待対策を盛り込んだ改正動物愛護法が成立しました。
ポイントとしては、動物を捨てたり、傷つけたり殺したりした時の厳罰化のほか、ペットショップでの子犬・子猫の販売を、これまでより1週間遅らせて「生後8週間(56日)を過ぎてから」としたことなどがあります。
また、子犬や子猫には、識別番号を記録したマイクロチップの埋め込みが義務付けられました。
これにより、子犬や子猫を育てたのが誰なのか分かるようになり、迷子のペットが飼い主のもとへ戻れる可能性が高まりました。
完全に義務化されるのは公布から2~3年後ですが、今後順次実施されていきますので、ペットショップを訪れる時は上記の法律が守られているかも確認するとよいでしょう。
まとめ
子どもにとって、ペットとともに暮らし成長することは、数えきれないほどのメリットがあり、状況が許すかぎり希望を叶えてあげたいものです。
ペットの待遇は、その国の文化レベルを表すともいわれています。東京オリンピックを控え、世界から見て恥ずかしくないよう、動物たちの幸せも今まで以上に考えていきたいですね。
文/高谷みえこ
参考:一般社団法人ペットフード協会「平成30年(2018年)全国犬猫飼育実態調査結果」
独立行政法人国民生活センター「ペットのインターネット取引にみるトラブル」