「まさか咳ひとつで…」──順調な回復から一転、激痛で動けなくなった神田うのさん。「足を切断して!」と絶叫し、42歳でおむつや摘便も経験した9年前の地獄を乗り越えた今、再び足のしびれと闘っています。寒暖差の大きいこの季節、腰に爆弾を抱える誰もが無関係ではない「日常の落とし穴」と現在のリアルを伺いました。
「咳で崩れ落ちた」順調だった治療からの急転直下
── 今年8月末に椎間板ヘルニアの再発を公表されました。順調に回復していた矢先に、急激に悪化したそうですね。
神田さん:同じヘルニアで苦しんでいる方が本当に多くて驚きました。インスタのDMにも全国からおすすめの病院や治療法、「私も同じ経験をしました」という切実な声がたくさん届いています。

最初に発症した9年前に先生から「完治したと思っても、一生つき合う覚悟が必要」と言われていたので、8月に再発した際も注射や点滴、鍼治療など手を尽くして、経過は順調だったんです。医師からも「順調だから次は12月にMRIを撮りましょう」と言われていたのですが、10月半ばに思わぬ引き金で急激に悪化してしまいました。原因は「咳」でした。
── 寒暖差の大きい季節ですが、咳だけでそこまで悪化するものなのですか?
神田さん:急に寒くなって風邪が流行り出し、娘が熱を出したんです。病院で検査をしてコロナでもインフルでもなかったのですが、私もうつってしまって。最初は微熱程度だったのが、だんだん咳がひどくなっていきました。咳をするたびに、響くように足腰に鋭い痛みが走るんです。 咳が出そうになると「来る!」と身構えて、なるべく腰に響かないよう体勢を変えて耐えていたのですが、長引く咳にある日耐えきれなくなったのか、激痛に襲われ、ついに痛くて歩けなくなってしまいました。
その場から立ち上がれず、床を四つん這いになりながら、必死に這って寝室へ向かいました。 私の異変に気づいた15歳の娘が、心配そうに「ママ、おんぶしようか」と声をかけてくれたのですが、もちろん無理で…。幸い寝室の真横にバスルームがあるので、なんとかトイレとお風呂だけは済ませ、丸2日間は部屋から一歩も出られず横になったままでした。食事もすべて寝室まで運んでもらう状態でした。
そこから少し落ち着いたものの、足にしびれと痛みが残っていて、移動の際は車椅子を使うこともありました。とにかく今は無理をせず、安静にして様子を見ているところです。今後もし痛みが耐えられなくなれば手術も考えなければいけないのですが、できれば避けたいですね。治療が順調に進んでいた矢先だっただけに、まさか咳ひとつでここまで逆戻りするとは思ってもいませんでした。病院の先生からも「この時期はくしゃみや咳をきっかけに、ぎっくり腰やヘルニアになったり、肋骨が折れたりする方が多い」と聞きました。腰に不安のある方は、咳やくしゃみをするときも絶対に油断せず、本当に気をつけてほしいです。
9年前の地獄「足を切断して!」と絶叫した夜
── 家の中を這って移動するほどの痛み……。本当に壮絶です。9年前、42歳で最初にヘルニアを発症したときは何が原因だったのでしょうか。
神田さん:原因はキックボクシングです。海外の有名な先生が日本に教えに来るということで、友人たちとレッスンを受けていました。幼少期からクラシックバレエをやっていたので体が柔らかく、足が高く上がるので先生にも気に入られて週に2回通っていました。でも、プロのキックボクサーの方は筋肉をしっかりつけて、体が仕上がった状態でサンドバッグを蹴りますよね。私はただ体が柔らかいだけで、腰回りを支える筋肉がないまま思いきり蹴っていたので、腰への負荷が限界を超えていたのだと思います。
しばらくして足にビリビリとしたしびれが出るようになったのですが、最初は「トレーニングの疲れかな」と思っていました。ですが、ヘルニアを患った経験のある当時のマネージャーから「うのちゃん、それはヘルニアかもしれないから、絶対にちゃんと病院で診てもらったほうがいい」と強く勧められたんです。
すぐに病院へ行き、レントゲンを撮ってもらいました。ところが、医師からは「骨には何の問題もありません」と言われてしまって。 私はヘルニアの知識が少しあったので、「先生、ヘルニアの場合はMRIを撮らないと椎間板の状態がわからないんじゃないですか?撮らなくて大丈夫ですか」と食い下がったんです。ところが先生は「大丈夫です、ヘルニアじゃありませんから」と。さらに運動を続けていいか尋ねると、「血流もよくなるから、むしろ運動はしたほうがいいです」と言われたんです。
安静にしなければいけない状態だったのに、「先生がそう言うなら」と、キックボクシングを週3回に増やし、縄跳びまで跳んでさらに負荷をかけ続けました。足のビリビリしたしびれが消えると信じて、痛みに耐えながら運動を続けてしまったんです。
── 専門の医師から「むしろ運動したほうがいい」と言われたら、信じてしまいますよね。そこからどうやってヘルニアの診断が?
神田さん:ある日、家でお風呂に入っていたときでした。髪を洗おうと少し前かがみの姿勢になった瞬間、足に今まで経験したこともないような激痛が走ったんです。到底立ち上がれる状態ではなく「痛い!痛い!」とあまりの激痛にその場で叫び続けました。 家族が慌てて救急車を呼んでくれたのですが、裸のまま体にバスタオルを巻かれて運ばれる恥ずかしさなんて、完全に消し飛ぶほどの痛みでした。陣痛や出産の痛みなんて比べものになりません。
あまりの激痛にパニックになり、原因もわからないまま「お願いだから足を切断して!今すぐ足を切り落として!」と泣き喚いていました。当時まだ5歳だった娘は、パニック状態の私の姿を見て「ママが死んじゃう!」と泣き叫んで…。今振り返っても、まさに地獄のような光景でした。
搬送先の病院ですぐにMRIを撮り、「重度の椎間板ヘルニア」と診断されました。もし最初の受診の段階で正しく診断され、MRIを撮って安静にできていたら、ここまで悪化することは絶対にありませんでした。麻酔も強いものしか効かず、背中からカテーテルを入れる硬膜外麻酔をして、手術を受け、1か月半にわたる入院生活を送ることになりました。