妻として、母として、指導者として

土性沙羅
自身も母となり周囲のサポートに感謝しながら、現在は育児と指導の両立に全力で向き合っている

── 妻、母、コーチ業と忙しい毎日をどのように管理されているのでしょうか。

 

土性さん:朝4時半に起きて5時半からの朝練に出ます。帰宅して子どもの世話をして、日中は子どもを外に連れ出して体力を発散させます。夕方から再び練習に出て、夜21時には寝かしつけています。夫は元アスリートで家事や育児を完璧に分担してくれる絶対的な味方ですし、母のサポートも欠かせません。そういったさまざまな支援体制があるからこそ、私は現場に立つことができます。

 

── ご主人は育児休暇を取られていたんですよね。

 

土性さん:夫は1か月間育休を取ってくれて、生まれてすぐの新生児期を一緒に過ごしてくれました。寝られるほうが寝るという感じで、夫婦で交代しながらミルクをあげたり、起きたりしていました。

 

── お子さんも1歳を迎えて成長を感じる瞬間が多々あると思います。

 

土性さん:昨日できなかったことが急にできるようになったときは成長を感じますね。ご飯も最初は全然食べなくて、大丈夫なのかなと心配したんですけど、今ではたくさん食べるようになりました。言葉の意味を理解したり、自分の感情、嫌なら「いや!」と意思表示するようになりましたし、よく笑います。感情を出してくれることが最近とても増えているので毎日成長を感じるし、私自身も子どもから刺激をもらって「頑張らないと」という気持ちになりますね。

 

── コーチ業で外の世界との関わりを持つことは、土性さんにとってどんな意味があるのでしょうか。

 

土性さん:子どもと離れるのは寂しいですが、強くなりたい選手がたくさんいて、その選手をなんとかして強くしてあげたいという思いで私もコーチ業をやっています。だからこそ、しっかりと気持ちを切り替えて、練習の時間は選手に集中して指導させてもらっています。

 

コーチ業をしてなかったほうが時間の余裕はあったかもしれませんが、選手と関わることによって、今のレスリングの状況や選手の悩みを聞いて、自分にできることは何かなと考えることもできます。家の中だけではなく、外でいろいろ話す機会や世界があることは、自分にとってプラスだと捉えています。

五輪金メダリストが描く次の夢

── 指導者として、これからどのような未来を描いていますか。

 

土性さん:私がこれまでのキャリアで得たものを、今度は次の世代に繋げていきたいですね。それぞれの夢を叶える伴走者となり、最終的にはオリンピックチャンピオンを育てたいと思っています。

 

── 女性アスリートを取り巻く環境についても、強い思いがあるそうですね。

 

土性さん:結婚や出産といったライフイベントに直面しても、肩身の狭い思いをせずにキャリアを諦めないですむ環境をつくっていきたいです。子どもが熱を出したときに「行っておいで」と快く送り出せるような、優しさと制度が共存するスポーツ界を目指したい。それが私を育ててくれたレスリング界への恩返しだと思っています。

 

取材・文:石井宏美 写真:土性沙羅