当事者が気になるのは「親への偏見」

── ご両親ともにすんなり受け入れてくれたんですね。

 

たっちゃん:そうですね。ただ、LGBTQ当事者のほとんどがそうだと思うんですが、自分の親にカミングアウトするのも不安だけど、それ以上にカミングアウト後に親が周囲からどうみられるかを考えてしまうんです。「『アイツ、まだ結婚しないの?』と親戚に言われたときに、親はどう対応するんだろう。偏見の目で見られないかな」と考えてしまって…。そこがつらかったですね。

 

実家は、愛知県の知多半島の田舎町で、まだ閉鎖的な雰囲気もあります。母は社交的なタイプなんですが、親戚ともなると、なかには価値観が違う人もいますよね。

 

── カミングアウト後、ご両親は親せきにどう対応されたのでしょうか。

 

たっちゃん:以前、母に「親戚から『アイツはまだ結婚しないのか』と言われたらなんて答えているの?」と聞いたら、「ただ単に、相手と出会っていないだけ。彼が好きなことをして生きているからそれでいい」とだけ伝えている、と言っていてホッとしました。

「同性婚がしたいというよりも」望むことは

── 今おふたりは日本で生活していますが、LGBTQ当事者として生活しやすい点、または不便に感じる点はありますか。

 

ニコぷさん:日本は海外に比べて、LGBTQに対する直接的な暴力は少ないと感じます。中南米やアフリカなどでは、LGBTQに対する暴力やヘイトクライムが深刻だというニュースも目にします。私たちは東京に住んでいますが、外で手をつないでいたりしても、暴力を受けるような危機感を感じたことはありません。ただいっぽうで、同性婚などの制度面では海外より少し遅れていると感じています。

 

── イタリアも西欧諸国の中でもまだ同性婚が認められていない数少ない国のひとつだそうですね。

 

ニコぷさん:そうですね。そこにはキリスト教の歴史的な問題もありますし、政治的な問題もあります。ただ、LGBTQに対してどう思うかは当然ながら人によりますし、土地柄にもよります。私の地元はリゾート地で田舎ではないので、ある程度寛容なほうだったのかもしれません。

 

── おふたりは同性婚について話し合いをすることはありますか?

 

たっちゃん:話し合いはしますね。ただ私自身は、「同性婚がしたい」というより「同性婚が認められる国であること」が重要だと思っています。みんなが同じ権利を平等に持てる社会になれば、偏見も生まなくなるんじゃないかな、と。

 

私たちは、たとえば急病で入院しても家族として付き添いができなかったり、どちらかが亡くなってしまったときに資産の引き継ぎができなかったり、結婚できないことで制度上不利な点があります。日常生活でも、「もし結婚できていればスムーズにすんだのにな」と思うことは多々あります。

 

20年前にアメリカに行ったときに感じた、同性婚が認められている国だからこそ、平等に生きられるマインドのベースができている状態が理想ですね。制度以前に、私たちも人として普通に生きているだけなんだ、ということを理解してもらえる社会になってほしいです。

 

取材・文:市岡ひかり 写真:たっチューバーチャンネル