虐待で人間関係に苦しみ「ネカフェを転々として」
── 最近の若者で象徴的なケースがあったら教えてもらえませんか。
川口さん:実際に多く見られるケースをもとに、いくつかの事例を組み合わせたものとしてお伝えできればと思います。例えば、Mさんは親から虐待を受けて児童養護施設に預けられます。18歳で施設を出たときは、施設側が用意してくれた家に住み、紹介してもらった仕事で正社員として働き始めたんですけど、過去の虐待の影響から上司にきつく言われる度にPTSDの発作が起きるようになり、人間関係に苦しんで仕事を半年で仕事をやめてしまったんです。
退職後、新たに仕事を探し始めたものの、正社員の場合、「保証人をつけてください」と言われることが一般的。Mさんにはそのあてがありません。虐待加害者の家族は頼れず、児童養護施設を頼るのも、紹介してもらった仕事を辞めた負い目から足が進みませんでした。
結局、派遣やパートなどの非正規職として働くことになるなか、不安定な仕事で収入も安定しないため、家賃が払えず滞納が続き退去することに。新たな家探しをしても、そこでも保証人をたてられない問題が出て、寮付き派遣に行ったり、ネットカフェで過ごしながら日雇いの仕事に行くようになりました。ギリギリの生活で精神的にも追い詰められうつ状態になり、ついに働きにいけなくなり、ネットカフェ代も払えなくなりました。
ネットカフェで過ごす最後の晩、とりあえずネット検索で相談できる場所はないかと調べました。行政に相談すると親に場所がバレるのではないかといった懸念や、施設に入ることになると集団生活にいい思い出がなかったので、民間のHomedoorに相談することにしました。

── 貧困の連鎖や、そうした負のスパイラルをどこかで断ち切らないといけない。
川口さん:若年困窮者が再出発を果たすには、メンタルケアやキャリア支援を受けながら、安心して暮らせる生活の土台が欠かせません。そんな心と生活の両面を支える場として、長期滞在型のシェルター施設「アンドベース」を2023年に開設し、運営を始めました。2018年に始めた短期滞在型のシェルター施設をパワーアップさせたものです。 Homedoorのシェルター施設に宿泊された方は2024年度だけで334人1万2000泊余り。何かしらお役に立てているかと思います。
アンドベースはコロナ禍で廃業したホテルを5億円で買い取り、全24部屋の個室スペースを完備。生育格差に苦しむ若者を中心に、困窮状態に陥った多様な層を受け入れています。