「舞台には戻れない」時間の拘束が仕事を奪う
透析治療は週3回、1回につき5時間。通院は仕事にも大きな影響を及ぼしました。当時、出演予定だった蜷川幸雄さんの舞台も練習時間が取れず、降板を余儀なくされます。
「蜷川さんは『待っている』と言ってくれましたが、現実は残酷です。治療により、数か月単位に及ぶ舞台公演はもはや不可能と思い知りました。蜷川さんに『もう(舞台の仕事には)帰れない』と伝えるのは、本当につらかった。舞台などの長丁場はもちろん、宿泊が必要な地方ロケもムリ。事務所からしたら、通院により仕事を断念する僕は、もはや完全な不良債権ですよ。『人生が終わった…』と、どん底まで落ち込みました」
透析治療は通院せず、在宅で行う方法もあります。けれど、ひとり暮らしのグレート義太夫さんにはサポートできる人が身近にいません。万が一のことを考え、許可がおりないそうです。

「透析を受けている間は病院のベッドで寝ているだけ。健康状態は先が見えず、不安が募る日々でした。でも、現実を受け入れるしかありません。ネガティブでいても何も変わらない。『今の自分にできることを…』と、考えていくうちに、少しずつ執筆や作曲の仕事が増えていきました。週15時間の透析中の時間にネタを考えています。どんな状況でも、できることはあると考えるようになりました」