仕事とがんの両立。「困りごとは声に出すこと」から始まる
── 復帰後、ご自身の仕事への向き合い方は変わりましたか。
阿久津さん:治療入院で1か月休んだことで、自分がどれだけ多くの人に助けられてきたのかがよくわかりました。私は人に仕事を任せるのがすごく苦手で、「全部自分でやったほうが早い」と思っていたんです。でも、手放さざるを得ない状況を経験したことで、「得意な人に任せたほうが物事は早く進むこともある」ことを理解できました。
── 仕事とがんの両立に悩む人たちに、伝えたいことはありますか。
阿久津さん:「困っている」と口に出してみると、周りから「何に困っているの?」と聞いてもらえます。それに答えるなかで、自分の頭の中も整理されていきます。ひとりで抱え込まずに、職場や相談窓口などでまず声を上げることが、最初の一歩だと思います。
知ってほしいのは「あなたはひとりじゃないよ」ということです。必ずその人らしい解決策があります。ただ、そのための制度や情報といった「助け船」があっても、その存在を知らなければたどり着けません。発信を通じて、その助けにつながれる人をひとりでも増やしたい。それが今、私が発信を続ける一番の理由です。
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「自分の経験が、誰かの力になれば」。そう願って人生をさらけ出すことの重みを、阿久津さんは身をもって知りました。私たちは日々、誰かの事情を「わかったつもり」でいないでしょうか。皆さんは、自分が困難に直面して初めて気づいた「人の優しさ」や、今だからこそ誰かに伝えたい「あのときの感謝」はありますか?
取材・文:西尾英子 写真:阿久津友紀