「女性管理職として、今のポジションを失いたくない」。がん発覚後、阿久津友紀さんが会社に報告できるまでには、2か月の月日を要しました。積み上げたキャリアへの執着と、周囲に負担をかける罪悪感。しかし、勇気を出して打ち明けたとき、上司から返ってきたのは予想外の言葉でした。ひとりで抱え込む限界を知り、「人に頼る」ことで見えてきた新しいキャリアの形を綴ります。

「立場を失うかも」会社への報告をためらわせた「管理職」のプライド

── 乳がん患者を長年取材してきた阿久津さんに、両側乳がんが発覚したのは2019年のこと。病気のことを会社に伝えるまで、2か月かかったそうですね。

 

阿久津さん:がんを打ち明けることで、自分のキャリアに影響が出るのが怖かったんです。これまでの取材でがん患者さんのケースをたくさん見てきたはずなのに、いざ自分のことになると「会社がどう受け止めるのか」「どういう形でサポートしてくれるのか」と想像ができなくて。

 

阿久津友紀
入院中、多くの患者さんとの出会いも

── 取材を通して乳がんの情報や事例を知っているからこそ冷静に受け止め、自身の今後を考えていけそうですが、報告をためらわせたものは何だったのでしょう。

 

阿久津さん:ひとつは、女性管理職としての私自身の思い込みです。当時は周囲に女性管理職がほぼいない環境でした。「積み上げてきたポジションを病気によって失ってしまうのでは」という不安が、自分の中にありました。

 

もうひとつは、支える側の苦労を身をもって知ったからです。以前、同じ部署の後輩ががんになった際、私がシフト調整や業務のフォローを担っていたことがありました。本人が一番大変なのは当然なのですが、周囲が仕事をカバーする負担も決して小さくありません。だからこそ「自分が離脱したら、この負担を誰に託すのか」と考えてしまったんです。

 

さらに、告知された時点では、治療方針がまったくわかりません。詳しい結果が出るまで、手術が先か抗がん剤が先かも判断できない。ある程度、治療の道筋が見えてから伝えたほうが職場を混乱させずに済むのではないか、という思いもありました。