「ほんまに寝ぇや」父らしい応援と心配
去年5月に個人事務所を設立、起業準備に追われた日々を、初めてのことだらけだったと振り返ります。
「『会社とは』という、そもそものところから、本にマーカーを引いて勉強を始めました。自分で起業してみて、税金の支払いや年金の手続きなど、今まで会社にしてもらっていたことを自分でするようになって。改めて会社に守ってもらっていたことがわかりました。
父に言うと心配すると思ったので、逐一報告はしていなかったんです。新たな道を歩むと決めてから報告したら、『えぇっ!』とびっくりしてはいたんですが、『元気でいてくれたらそれでええわ』って」
父・昭浩さんは不器用ながらも応援する気持ちを示してくれていたと話します。
「父からは2週間に1回ほどの間隔で電話が来ました。多くは聞かないんですけど、『ほんまに寝ぇや』みたいな感じで、忙しくしている私を気遣ってくれていました。
ブランドの立ち上げはとにかく初めてことばかりで。扱うフルーツの品種選びから始まり、商標やデザインなど、考えることが多岐に渡って。フリーキャスターのお仕事と並行して、デザイナーさんやエンジニアさんとの打ち合わせに娘の子育てと、毎日バタバタでした」
永島さんは、生産者が深い愛情を伝えていく姿のように、果物の裏にあるストーリーを届けたいと話します。
「農家さんの思いや物語を聞けば聞くほど奥深さを感じていて。この一粒に込められた思いを多くの方にお届けしたいという思いで取り組んでいます。魅力を言葉にするのは難しいのですが、ここは伝え手としてしっかり伝えたいところですね。
ワインのように、『何年のは美味しかった』という会話がフルーツでも生まれたら嬉しいです。フルーツから、日常の何気ない会話が生まれるきっかけになれたらいいなと思いますし、好きなフルーツや、品種があると毎年の楽しみが生まれます。
私自身、小さい頃から食べ親しんできたフルーツを見て、『もうそろそろ、この時期だな』と季節を感じることが楽しみになっています。フルーツを通じて日本の四季の移り変わりも感じられますし、開けた瞬間の香りや味の違いを含めて、またここで食べてみたいと思えるような存在になれたら。フルーツが好きな方はもちろん、今まで食べたことがない品種との出会いの入口になっていきたいですね」
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「ほんまに寝ぇや」。その短い言葉に込められた祈りのような愛情が、今の彼女の挑戦を支える一番の肥料になっているのかもしれません。
あなたの周りにも、多くを語らずとも、あなたの「足音」をじっと見守ってくれている人がいませんか。今夜はそんな誰かの顔を思い出しながら、一粒のフルーツを分け合ってみる。そんな不器用で温かい時間が、明日への力に変わるはずです。
取材・文:内橋明日香 写真:永島優美