「孫だと思えばほめられた」指導員の変化

── 脳科学では、ほめられると脳が「報酬」だと感じ、脳が活性化してドーパミンが放出。達成感やモチベーションが上がる効果があり、「またほめられたい」と行動変容が起こると言われています。でも、こちらの教習所も12年前までは、多くの教習所と同じく、厳しく指導するスタイルだったそうですね。簡単に方針転換できるものですか?

 

米澤さん:指導員は観察眼に長けています。だから、ちょっとしたミスや不注意に気がつき、厳しく指導できました。逆を言えば、運転技術を少しも見逃さないから、いくらでもほめるポイントを発見できる下地があるわけです。ただ、従来の方針では、ほめることを言葉にしなかっただけなんです。

 

方針転換の課題は、気質的にほめるのが苦手なタイプの指導員。でも、年配のある指導員が「自分の子どもや孫と思って接したら、簡単にほめられるようになった」と、報告してきたんです。その視点を共有し、ほめる指導に向き合っていったら、教習生の運転もうまくなっていく実感を得て、皆、ほめるスタイルになじんでいきましたね。実際、卒業1年後の事故率を見ても、ほめる指導前の1.76%から0.31%へと減っています。

 

ほめちぎる教習所 伊勢
外国人の教習生が増えたことに対応すべく外国人指導員も増やしている

── ほめるスタイルへの方針転換は、人口減少などにより教習生の数が伸び悩むなど、時代背景があったそうですね。大きなきっかけは何だったのでしょうか。

 

米澤さん:厳しい指導を続けていた当時、弊社の社長が「ほめる効果」に関するニュースを見たことです。そこで、一般社団法人「日本ほめる達人協会」と「ほめ達検定」の存在を知って、検定を受けに行くことに。「ほめることは相手のやる気を高め、人間関係も円滑にさせる。これは教習所で活かせる」と思ったそうで、新たな方針が定まったんです。

 

── 今では指導員全員がほめ達検定3級を取得する徹底ぶり。さらに指導員同士でほめるマニュアル作りもしたそうですね。そのスタイルが評判を呼び、教習生の数はこの11年間で160%増えたとか。

 

米澤さん:最近の若い世代は以前と違って、免許取得にそもそも積極的な方が少なくなったように感じます。「就職したら普通免許の資格が必要だから」「親から取得を勧められたから」といった理由での入所が多く、モチベーションが低い。加えて、厳しく怒られていては、人は集まりませんよね。