「自分にやさしくする」と「自分を甘やかす」は違う

── いっけんうまく回っているように見える家庭でも、家族同士のすれ違いを見て見ぬ振りをしていることは少なくないかもしれません。

 

西崎さん:そう思います。それと、自分の問題と向き合うことを避けている人も多いです。私、自省も込めて、受講生の皆さんに言うんです。「自分にやさしくすることと、自分を甘やかすことを混同しないで」って。人生がうまくいかなかったときって、私は自分を甘やかしていました。「仕方ない」「私なりに頑張った」と言い訳して、「楽しい」と「ラク」の意味をはき違えてしまっていたんです。

 

西崎彩智
人生のどん底を経験したことも、多くの女性たちを励ます糧になっているという

一時的にラクだとしても、理想と現実との差は広がっていく。だから、「私はこんな暮らしがしたい」と自分なりのゴールを決めて、毎日やれることをやる。それが「自分を大切にできた」につながると思うんです。

 

たとえば、疲れたからとソファーでゴロゴロして夜更かしするんじゃなく、洗い物を3分で終わらせてさっさと寝る。そっちのほうが、翌朝の自分にとって「やさしい」じゃないですか。ただ、「片づけゴールの正解」は私ではなく、みなさんが家族と決めるべきもの。「お皿は何枚あればいいですか?」なんて聞かれるけど、そんなの私は知らない。自分自身で向き合わないと。

 

── 失敗を経験された西崎さんだからこその言葉ですね。

 

西崎さん:甘やかしたくなる気持ちはわかるんです。起業当初はお金の工面も綱渡りで、逃げ出したくなったこともありますから。怒られて頭を下げたり、悪戦苦闘したからこそ、毎日が充実して人生楽しいと心から思えました。

 

来年還暦を迎えますが、子どもが巣立って「空の巣症候群」になるのか、これからは自由だと思って羽ばたくのかは、その人の考え方次第、なんですよね。紆余曲折を経験したからこそ伝えられることを、私なりに伝えていきたいと思っています。

 

 

「家族のために」と必死に働く日々の中で、いつの間にか家族との心の距離を広げてはいませんか? 部屋の乱れは、あなたが家族と向き合う余裕を失っているサインかもしれません。今日、子どもと交わしたのは「対話」でしたか? それとも「業務連絡」でしたか。もし後者でも、自分を責める必要はありません。今夜は洗い物を3分で終わらせてさっさと寝る。そんな「自分へのやさしさ」から、明日を整える対話は始まります。

 

取材・文:たかなしまき 写真:西崎彩智