「働けるのになぜ?」SNSの厳しい声と、月1回の涙 

── 現在はSNSでも日常生活の動作や障害と向き合ってきた過程を包み隠さず伝えています。反響が広がる一方で、厳しい声も届くようになったそうですね。

 

むろいさん:私は確かに軽度の障害かもしれませんが、子どものころから創意工夫をしながら日常生活を送っていて、障害年金の受給は認められています。それでも「働けるのに、なぜ障害者の割引サービスを使うのか」「障害年金を受け取るのはおかしいのでは」と言われることが。受け取り方は人それぞれで、難しさを感じています。

 

でも、人に言えずに抱えてきたつらい経験を動画で話すと共感してくださる人がいて。「一人じゃない」と思えるようにもなりました。

 

また、発信を始めたことで、同じ障害を持つお子さんの親御さんから「動画を見て、子どもが靴下を履けるようになりました」と声をいただくこともあって。それが何よりの励みになっています。

 

── 前向きな姿だけでなく、悩んでいるリアルな様子もそのまま出されていますね。

 

むろいさん:昔は「常に前向きでいなきゃ」と思い込んでいて、それが苦しかったんです。だから今は、どん底にいる自分もありのままに出そうと決めています。

 

今も月に一回くらい、ふと「指があったら」と落ち込む日が来るんです。そういう日は、まずちゃんと落ち込みます。一生指が生えてくることはないし、悩みがゼロになることはない。でも、「悩むことも自分の一部だ」と思えるようになりました。無理に前向きになるのをやめて、自分のペースで歩んでいけばいい。今はそう思っています。

 

 

「障害者として前向きでいなきゃ」という呪縛を捨て、ありのままの自分をさらけ出す。それは、彼女がSNSという「居場所」で見つけた、自分らしく生きるための大切な一歩でした。

 

「悩みがゼロになることはないけれど、悩むことも自分の一部」。

 

私たちは、自分の中にある「弱さ」や「悩み」を、無理に消し去ろうとして苦しくなってはいないでしょうか。完璧ではない自分を認め、立ち止まる自分を許すこと。彼女が辿り着いたその境地は、日々を懸命に生きるすべての人への、優しいエールのように響きます。

 

取材・文:西尾英子 写真:むろいのぞみ