「右手、見せて見せて」。幼い好奇の目にさらされ、面接では「客が驚く」と40社連続で拒絶される──。生まれつき右手の指がない「右手五指欠損」のむろいのぞみさん。「かわいい手だね」と慈しむ両親に育てられ、高い自己肯定感を持っていた彼女を待っていたのは、社会の「腫れ物」扱いという冷たい壁でした。絶望の淵で彼女を救ったのは、母の言葉と「推し」への情熱。みずからの行動で偏見の風向きを変えていった、彼女なりの歩み方に迫ります。 

右手の愛称は「ぐーちゃん」コンプレックス知らずに育った少女時代

むろいのぞみ
幼稚園のころのむろいさん、明るい子どもだった

── 生まれつき右手の指がない「先天性四肢障害」を持つ、むろいのぞみさん。改めて、ご自身の障害について教えていただけますか。

 

むろいさん:「先天性四肢障害」は生まれたときから手足に何らかの異常がある障害で、私の場合、右手の指がすべて欠損した「右手五指欠損」になります。母のお腹の中にいたとき、へその緒が右手に巻きついて指の形成の妨げになってしまい、指の発達が止まってしまったのが原因だそうです。

 

ただ、私自身は生まれたときからこの手だったので、不便だという認識はなくて。料理なら、左手で包丁を持って右手で食材を押さえたり、ハサミなどの道具も左手用を使います。お風呂で髪を洗うときなどは、道具を使わずに両手でできます。

 

── むろいさんが生まれたとき、ご家族は右手のことをどのように受け止めたのでしょうか。

 

むろいさん:驚きや不安はあったでしょうが、母は福祉の仕事をしていて障害への理解があり、私を隠すことなくいろいろな場所へ連れて行ってくれました。両親は私の右手に「ぐーちゃん」という愛称をつけて、「かわいい手だね」と褒め続けてくれました。だから私自身も、「私は特別なものを持ってるんだ」と誇らしい気持ちすらありました。

 

── ご両親のポジティブな姿勢が、むろいさんの自己肯定感を支えていたのですね。

 

むろいさん:そうですね。基本は放任で「まずは自分でやってみて、できなかったら手伝う」というスタンス。そのおかげで不便だとは感じても、コンプレックスに感じることは、幼少期はなかったんです。