「やりたいことをやれ」自己破産した息子への愛
── お子さんたちとは、どのような距離感で接してきましたか?
志茂田さん:息子が2人いますが、怒ったことはほとんどありません。妻が「怒る役」を担ってくれていたこともありますが、僕は後悔しないように、やりたいことをやればいいとだけ思っていました。それは今も変わりません。人の道を踏み外してはだめですよ。でも、好きなように生きて、自分の選択に自分で責任を取ることが大事だと思っています。
── 次男は、一度事業に失敗して自己破産を経験されています。
志茂田さん:妻は大変心配しましたが、僕は「自分で挑戦して失敗したのだから、自分で責任をとれ」とだけ言いました。その後、彼は自力で立ち直り、今は市議会議員として自分の人生を歩んでいます。それでいいんです。
── 現在は、息子さんたちも介護に関わってくれているそうですね。
志茂田さん:同居はしていませんが、息子たち夫婦も在宅介護に理解があって、よく気にかけてくれています。彼らにはそれぞれの人生があるので、無理はさせたくないのですが、その優しさは本当にありがたいです。長年「やりたいようにやれ」と言い続けてきた父親を、それぞれが自分の足でしっかり立ちながら支えてくれている。これ以上の幸せはありません。
…
10年の別居、重なる不義理。それでも「2人で1つ」と笑い合い、要介護5の今、互いの命を支え合う志茂田さん夫妻。私たちは「夫婦とはこうあるべき」という理想に縛られ、正しさで相手を裁いてしまうことはないでしょうか。志茂田さんの「妻の手のひらから落ちないように必死だった」という言葉。それは、身勝手に生きた過去さえも包み込む、究極の信頼の形かもしれません。
誰かに支えられ、誰かを支える人生。あなたは今、隣にいる大切な人とどんな絆を築いていますか?あなたにとって「家族」とは、どんな形をしていますか。
取材・文:大夏えい 写真:志茂田景樹